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嵐・二宮&深キョンは現場でたわむれ、高橋由美子はノイローゼ気味に…『南くんの恋人』歴代カップルの“違い”は…〈『南くんが恋人!?』が放送中〉

文春オンライン / 2024年9月3日 11時0分

嵐・二宮&深キョンは現場でたわむれ、高橋由美子はノイローゼ気味に…『南くんの恋人』歴代カップルの“違い”は…〈『南くんが恋人!?』が放送中〉

『南くんの恋人』“初代ちえみ”の石田ひかり ©時事通信社

〈 「挿入されないというだけの理由で…」『南くんの恋人』の作者が「プラトニックな恋?」と聞かれることに“うんざりしていた”理由〈5回目のドラマ化〉 〉から続く

 5度目の実写ドラマ化となる、内田春菊氏原作の『南くんの恋人』。現在放送中の『南くんが恋人!?』(テレビ朝日系)は“男女逆転”版で、主人公のちよみを飯沼愛が、突然小さくなってしまう南くんを八木勇征が演じている。じつに34年にわたる、ドラマ版『南くんの恋人』の歴史とは。(全3回の2回目/ #1 、 #3 を読む)

◇ ◇ ◇

初めてドラマ化されたのは1990年

 現在放送中のドラマ『南くんが恋人!?』のスタートに際し、あるベテラン女優が自らのインスタグラムで“初代ちよみ”を名乗り、《わたしの時は、来る日も来る日も日活の撮影所で/「ブルーバック」相手に、ひとりで芝居をしてました(中略)時を越えて必要とされる「南くんの恋人」/(今回は、南くんが、ですね!)/令和の皆さんにも届きますように》とのメッセージを投稿していた。

 この投稿は、『南くんの恋人』が1990年に初めてテレビドラマ化(斎藤博脚本、原隆仁監督)されたときにヒロインのちよみを演じた石田ひかり(放送当時17歳)のものだ。投稿には当時の脚本の画像も添えられていた。石田にとってもこれが初の主演作品となる。相手役の南くん(フルネームは南隆志。ただし、原作の南くんには下の名前はついていない)は工藤正貴が演じた。その後、武田真治、二宮和也、中川大志らによって演じられる南くんだが、工藤が扮した彼はメガネをかけ、歴代でもっとも原作のイメージに寄せている。

 このときの南くんはさらにニキビ面の冴えないキャラとされ、ちよみとも幼なじみの友達からなかなか恋人になりきれない中途半端な関係だった。そんな男子が主人公になりえたのは、連続ドラマではなく、制約の比較的少ないTBSの「ドラマチック22」という単発ドラマ枠だったからなのかもしれない。石田ひかりが劇中で水着姿を披露しているのも、いかにもバブル前後のアイドルドラマらしい。

 石田が書いていたブルーバックとは、ちよみが小さくなってからのシーンを撮る際、あとから別撮りした映像に合成するために使われた背景の青い幕を指す(いわゆるクロマキー撮影)。このため、彼女は撮影中はほとんど共演相手と会わず、一人だけで演技をしていたわけである。

高橋由美子はグリーンバックの一人芝居でノイローゼ気味に…

 このあと1994年にテレビ朝日でのドラマ化で“2代目ちよみ”を演じた高橋由美子(当時20歳)も、この撮影には泣かされた。彼女の場合はブルーではなくグリーンバックだったようだが、のちにこんなふうに述懐している。

《スタッフと私だけの現場で、毎日緑色の布をバックに一人芝居だから煮詰まってノイローゼ気味になっちゃった。この前、当時のスタッフさんたちと会った時に「怖かった」と言われましたね、現場全員が沈鬱だったし(笑)。樋口真嗣さんが特殊効果で参加して以降は段々と雰囲気も良くなっていったんですが、最後に武田さん[引用者注:南くん役の武田真治(当時22歳)]と一緒にお芝居する時は「やっと会えた、真ちゃん!」って泣いちゃいましたよ》(『週刊文春』2017年5月25日号)

 ここに出てくる樋口真嗣は、のちに映画「平成ガメラシリーズ」の特技監督や『シン・ゴジラ』の監督としてその名を知られることになる。『南くんの恋人』でも当時から日本でトップレベルの特撮技術が駆使されており、いま見てもさほどチープな感じはしない。

不倫や三角関係のドラマが主流の中で

 企画した高橋浩太郎は原作を単行本が出てまもなくして読み、親しくしていたプロデューサーに提案したものの、物理的に無理との理由で実現できなかったらしい。それが自らプロデューサーになって、そのころ主流だった不倫や三角関係などの恋愛ものに対し、《ひとつくらいはどんな障害も乗り越えて一人の恋人を愛し続ける、そんな純粋なラブストーリーものがあってもいいのでは》と考えると、すぐにこの作品が思い浮かんだという(『ガロ』1994年2月号)。

 脚本には岡田惠和(よしかず)が起用された。のちに『ビーチボーイズ』『ちゅらさん』など多くのドラマをヒットさせる岡田だが、このときはまだデビューして4年足らずで、連続ドラマで全話を担当するのはこれが初めてだった。余談ながら、岡田の脚本家デビュー作となる『香港から来た女』は、奇しくも前出のTBSの「ドラマチック22」枠で『南くんの恋人』の前週に放送されていた。

家族や恋敵ら「人間関係」を物語の軸に脚色

 岡田の作品には『白鳥麗子でございます!』や『イグアナの娘』など初期からマンガを脚色したものも多く、その原作の大半は連続ドラマ的なストーリー性のあまりない作品だった。『南くんの恋人』にしても、終盤に大きな展開があるとはいえ、全体的には連作の短編という性格が強い。のちにこうした原作の脚色術を、岡田は《こういった原作の場合に要求されるのは「大胆さ」。そして、ストーリーというよりは、キャラクターや、設定そのものへの愛でしょうか。つまり、その原作がつくられた基本的な精神を理解した上で、あとは思いきりよく、アレンジする。いろんな人物や出来事を加えていく》と著書で説明している(『ドラマを書く』ダイヤモンド社、1999年)

 実際、岡田が脚色した『南くんの恋人』では、原作ではほとんど描かれない南くんとちよみの家族が重要な要素として登場し、青春恋愛ドラマであると同時に、ホームドラマともいえる内容となっていた。二人は前作の単発ドラマ版と同じく幼なじみであり、武田真治演じる南くんは、早くに母を亡くしたちよみを男手一つで育てながらもダンディな彼女の父(草刈正雄)に憧れている。一方で、自分の父(高田純次)には反発する生意気盛りでもあったが、ちよみと生活をともにするうちにだんだん成長していく。演じる武田はそんな役柄にふさわしく、共演の俳優たちと間の取り方などについて毎回真剣に話し合うなど、熱心に取り組んでいたという(『女性自身』1994年3月29日号)。

 原作ではまた、大人びた雰囲気で南くんを惑わす野村さんという女子生徒が印象深い。最初のドラマ化では彼女を、原作に近いちょっと不良っぽいイメージで白島靖代が演じていたが、このときは高飛車なお嬢様キャラに変わり、当時「電脳アイドル」と注目されていた千葉麗子が演じた。

 家族や恋敵といった人間関係はすでにドラマ1作目でも物語の軸となっていたが、2回目のドラマ化ではそこをさらに詳しく描くことで物語が広がった。このことは、岡田が30年ぶりに手がける今回の『南くんが恋人!?』を含め、その後のドラマ化でも踏襲されていく。

“純愛ブーム”の中で作られた、深キョン&ニノの2004年版

 なお、原作ではちよみが小さくなった原因は一切描かれないが(ここから、主人公が朝起きると虫になっていたというカフカの小説『変身』と重ね合わせる向きもあったようだ)、岡田は交通事故に遭った衝撃で小さくなるものとして描き、これが物語でのちのち重要な意味を持つことになった。

 1994年のドラマ『南くんの恋人』は好評で、これ以降、現在までほぼ10年おきに連続ドラマ化されてきた。3回目のドラマ化(連ドラとしては2作目)となる『南くんの恋人』は2004年、前作と同じくテレビ朝日の高橋浩太郎プロデューサーが企画し、脚本を中園ミホが担当した。中園はこのときすでに『やまとなでしこ』などのドラマをヒットさせており、その後、本作と同じテレ朝の木曜夜9時台で『Doctor-X 外科医・大門未知子』という人気シリーズを手がけることになる。さらに監督陣には、後年、脚本家としてドラマ『アンフェア』(のちに自ら監督して映画化)でヒットを飛ばした佐藤嗣麻子が参加していた。

 企画した高橋は、《かつて純愛がブームになりましたが、今また同じブームが来ている。ならば、僕らの中では10年前に完結したこの作品をもう一度やったら面白いかなと》と再ドラマ化の意図を語っている(『日経エンタテインメント!』2004年8月号)。ちょうどこの2004年には、ベストセラーとなっていた片山恭一の青春恋愛小説『世界の中心で、愛をさけぶ』が映画化に続き、『南くんの恋人』と同じ7月期にTBSでドラマ化されていた。ネット掲示板発の純愛ストーリー『電車男』が話題となり、書籍化されたのもやはりこの年である。

 このときのドラマでは、南くん(南進)を嵐の二宮和也(当時21歳)、ちよみを深田恭子(同21歳)が演じた。両者とも若手俳優として演技力が評価されつつあったころである。深田は同じく2004年に映画『下妻物語』でロリータファッションを愛する少女を好演し、以後、現実にはありえないようなキャラクターを次々と演じることになる。

 その深田は『南くんの恋人』の収録中、撮影の合間には《スタジオでモニターに大きく二宮くんの手が映ってたりすると、その上に恭子が乗ってジャンプしたり、二宮くんにふ~って吹かれたら、あ~~って飛ばされてみたり…》とよく主演の二人で遊んでいたという(『ザテレビジョン』2004年6月25日号)。前回のドラマ化で、一人芝居が多くてノイローゼ気味になったという高橋由美子とはずいぶん違う。

 前作では南くんとちよみはとくに部活などはしていなかったが、このとき、彼は長距離走、ちよみは書道に打ち込んでいる設定が新たに盛り込まれ、青春ドラマの色合いがより濃くなった。そのラストも #3 で後述するように、前作が原作にほぼ沿ったものだったのに対し、このときはまったく別のものになっていた。

〈 「ひどすぎる!」と抗議も…『南くんの恋人』“衝撃のラスト”はこれまでどう描かれてきたのか?〈5度目のドラマ化〉 〉へ続く

(近藤 正高)

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