「もともと感情が出やすいタイプ。実は去年も一度『辞める』と…」巨人・阿部慎之助監督(45)の“記者会見拒否”を球団がハラハラしながら見守る理由
文春オンライン / 2024年9月2日 11時0分
阿部慎之助監督 ©時事通信社
昨年まで2年連続でBクラスに沈んでいるプロ野球・巨人の、覇権奪回に向けたペナントレースがいよいよ佳境に突入する。
就任1年目にして優勝争いに絡んでいる阿部慎之助監督(45)だが、チーム内には懸念の声も出ている。さる球団関係者は「決して我慢強い人ではありません。これから1勝の重みが増してくる中で、思わず出てしまう選手への本音が命取りにならなければいいのですが……」と求心力低下の危うさに言及する。
8月23日の中日戦(東京ドーム)、阿部監督は中大の後輩のドラフト1位ルーキー西舘勇陽投手をプロ初先発に起用したが、2-8と大敗を喫した。下位チームへのふがいない内容での取りこぼしに、試合後はチームに奮起を促すかのように記者会見を拒んだ。就任後113試合目にして初めての事態だった。
鉄拳制裁も罰走も無しの状況に「やりづらさを感じながら」
前出の球団関係者はこう証言する。
「阿部監督は感情に任せて会見拒否したわけではないんです。セ・リーグのペナント争いは広島、阪神との三つどもえが最後まで続く気配が漂っています。最終盤に来るであろう正念場を見据え、ここらで一度チームを引き締めるという狙いがあったようです」
阿部監督は就任以来、メディアに積極的に対応してきた。記者の向こう側にいるファンを意識するとともに、選手に自らの方針を伝えるツールとしても取材の場を重宝してきたからだ。
「鉄拳制裁などは既に御法度になっています。監督が2軍監督時代に、(プロアマ交流戦で)早大に負けたときに課した罰走も、不適切な指導と非難されました。阿部監督は時代の変化にやりづらさを感じながらも、新たな価値観に適応していく必要に迫られ、選手起用とともにマスコミ戦略を重要視してきました」(同前)
今の選手にはしかし、メディアを通じての叱咤激励さえ通じないことがある。
「みんな、ヒーローになりたくねえのかな」「チキンなだけ」
7月16日の阪神戦(東京ドーム)は2-1で競り勝ったのだが、阿部監督は打線のふがいなさに怒りが収まらなかった。特に開幕から期待を裏切られてきたプロ2年目の門脇誠は2度の満塁チャンスで凡退したうえ、その後もバントに失敗して結局見逃し三振に。
それを見た阿部監督はこうぶちまけた。
「みんな、ヒーローになりたくねえのかな。チャンスなのに悲壮感しか伝わってこない。よーし、みたいなのがない。打てなかったらどうしよう、みたいな。チキン(臆病者)なだけなんだろうけど、何が何でも、みたいなのは見えない」
門脇はもちろん、チキン呼ばわりされた選手たちはたまらない。
「ただでさえ巨人の選手は、阿部監督に底知れない厳しさを感じています。叱られて反発するような選手はほとんどおらず、顔色をうかがうばかり。そんな状況でああいう言い方をしても、萎縮を招くだけで逆効果でしかありません」(同前)
中日などでコーチを務めた中村武志氏(現韓国プロ野球起亜コーチ)もこう指摘する。
「今は褒められることで伸びる選手ばかりで、頭ごなしの指導はできなくなっています。アマチュア時代からYouTubeなどでの情報収集にたけていて、早くからプロ選手の技術論にも触れています。『こういう練習をしたら、どう?』とか、提案するような言い方をしないといけません」
中村氏は中日での若手時代、星野仙一監督(故人)の厳しい指導を受けてリーグ屈指の捕手に成長を遂げた。しかし今はそんなストーリーはパワハラとしか捉えられない。阿部監督も他の指導者たちと同様に、気風が様変わりした球界で選手の心を操縦する方法に苦心しているようだ。
そんな中で迎えた8月11日の中日戦(バンテリンドーム)で“事件”は起きた。
シーズン途中の入団ながら救世主的な活躍で、得点力不足のチームの起爆剤になっていたエリエ・ヘルナンデス外野手が守備中に左手首骨折の重症を負い、今季復帰絶望となったのだ。
チームはペナント争いのヤマ場を前にキーマンを失う形となり、阿部監督は「俺の心も折れそう」と骨折にからめてコメントしたが、その表情からはショックがありありと見て取れた。
「監督は最終的にシーズンを1位で終えるためにチームマネジメントに細心の注意を払ってきました。6月下旬に坂本勇人に故障や体調不良以外では17年ぶりの2軍調整を命じたのも、勝負どころで1軍に上げることを見据えてのこと。全ては最後に笑うための我慢だったので、ヘルナンデスの離脱は痛いなんて言うものではありません」(前出の球団関係者)
「まさか去年のように辞めるとは言わないよな、と心配している人も」
ヘルナンデスの離脱を境に、阿部監督の発言には焦りがにじむようになった。
「阿部監督はもともと感情が出やすいタイプです。ヘッドコーチだった去年、球団に辞意を伝えていたこともありました。コーチを束ねる立場として成績不振に対する責任や、年長のデーブ(大久保博元・元打撃コーチ)との相性が悪かったことが理由です。
結果的には監督就任要請で慰留ということになりましたが、今年優勝を逃した場合、まさか去年のように辞めるとは言わないよな、と心配している人もいるくらいです。選手にはいろいろと言いたいことを我慢してきただけに、シーズン最終盤に不規則な発言が出てきやしないかとチームはピリピリしているんです」(同前)
阿部監督は2軍監督時代にパワハラ体質を指摘され、当時の原辰徳監督から「おまえさんは思ったことを、一度飲み込め」と諭された逸話は有名だ。
昨年、その原から監督の座を引きついだ会見の場では、原監督から指導者生活が「永遠の修行」だと教わったことも明かし、これらの言葉を胸に刻んできた。
精神修行の成果は出るだろうか。
(「文春オンライン」編集部)
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