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「頭と顔を蹴りつづけ、動かなくなった」“最強のヤクザ”がロシア人をボコボコにして殺害…安藤組大幹部・花形敬が起こした事件の顛末

文春オンライン / 2024年9月8日 17時0分

「頭と顔を蹴りつづけ、動かなくなった」“最強のヤクザ”がロシア人をボコボコにして殺害…安藤組大幹部・花形敬が起こした事件の顛末

写真はイメージ ©アフロ

〈 「あの女いいな」「ホテルで太腿を広げさせておけ!」“最強のヤクザ”が女性を強制ナンパ…安藤組大幹部・花形敬の恐ろしすぎる素顔 〉から続く

 昭和のヤクザ史に名を刻んだ“カリスマヤクザ”安藤昇。「安藤組」を立ち上げて昭和の裏社会と表社会を自由に行き来し、数々の伝説を残した。安藤組解散後は俳優に転身し、映画スターとして活躍。

 そんな安藤昇の一生を記した作家・大下英治氏の著書『 安藤昇 侠気と弾丸の全生涯 』(宝島SUGOI文庫)より一部を抜粋し、安藤組大幹部で「大江戸の鬼」と呼ばれ、最強の喧嘩師とも言われたヤクザ・花形敬の破天荒な人柄を紹介する。(全2回の2回目/ 1回目 から続く)

◆◆◆

のちに安藤の舎弟となる、佐藤昭二

 昭和27年(195二年)5月7日、花形敬と佐藤昭二は、肩を並べて渋谷の栄通りに抜ける路地を歩いていた。2人とも『くるみ』で一杯飲んだあとであった。

 佐藤は、岩手県で旅館を経営している家の息子であった。国士舘専門部の柔道部で、四段をとった強者であった。国士舘では、全校で1、2位を争う腕力であった。渋谷に来ては酒を飲み、国士舘の寮に帰っていた。

 花形や石井の先輩で、渋谷で花形や石井を見ると、「おい、敬」「石井」と呼び捨てにしていた。佐藤も、のちに安藤の舎弟になるが、このときは、国士舘から日大に移っていた。

 2人は、宇田川町のサロン『新世界』の前を、肩で風を切るようにして通りかかった。

 2人の眼に、白系ロシア人のジミーの姿が入った。

ジミーは、相手がヤクザであろうと喧嘩をふっかけた

 ジミーの本名は、ワジマス・グラブリ・アウスカス。日本で生まれ、日本の小中学校に通い、戦争中は、白人として収容所に入れられた。ロシア人との混血とはいえ、まったく日本しか知らなかった。終戦と同時に釈放され、暴れまくっていた。ジミーは、日本人の女房を持ち、渋谷でキャッチバーをやらせていた。不良外人で、酒癖が悪く、相手がヤクザであろうと、喧嘩をふっかける。宇田川町のキャッチバーに、片っ端から顔を出し、誰にでも喧嘩を売っていた。当時30歳であった。

 ジミーは、『新世界』の経営者を足で蹴りつけていた。

 佐藤が、舌打ちした。

「ジミーの野郎、また暴れやがって!」

 が、花形は、ジミーを見るのは初めてであった。これまで、同じようにキャッチバーで暴れまくる花形と顔を合わせないのが不思議であった。

「人斬りジミーと知ってのことか」

 佐藤は、ジミーを制した。

「やめねえかい」

 ジミーは、佐藤に巻き舌の江戸弁で食ってかかった。

「うるせえ!小僧!」

 佐藤が、得意の柔道の技である小内刈りで、ジミーを投げ倒した。

 ジミーは、もんどり打って倒れた。

 花形が、すかさずジミーの顔面に右拳を叩き込んだ。ジミーの鼻から、どっと血が吹き出した。

 が、ジミーは、吹き出す鼻血を拭きもせず、起き上がった。

「よくも、やりやがったな。おれを、人斬りジミーと知ってのことか」

 ジミーは、花形めがけて殴りかかった。

 花形は、右に軽くよけた。

 佐藤が、ジミーの襟首を掴み、一本背負いで地面に叩きつけた。ジミーは、長い舌を出し、のびてしまった。

 花形と佐藤は、見向きもしないで、歩き始めた。ジミーは、血まみれの顔でうめいた。

「よくも、人を舐めやがって……」

天井裏から日本刀を…

 ジミーは、急いで自宅に帰った。

 自宅には、妻がいた。彼女は、通称お蝶と呼ばれる渋谷で顔の売れた女ヤクザである。

 夫からやられたいきさつを聞くと、お蝶は、夫以上に悔しがった。

「あんた、渋谷でのされて、このまま黙っていては、名折れになるわよ」

 ジミーは、妻に煽られ、2階の天井裏から日本刀を取り出した。刃渡り42センチのものであった。

 ジミーは、泥だらけの服を革ジャンパーに着替えた。喧嘩支度で、家を出た。日本刀は、レインコートに巻いていた。

 お蝶も、夫のあとに従った。

 2人は、花形と佐藤の立ち寄りそうなキャッチバーを、一軒一軒探しまわった。が、花形も佐藤も、ついに見つからなかった。

 そのうち、ジミーは、顔見知りの喫茶店のマスターになだめられた。

「おい、みっともねえことは、やめろよ」

 2人は、社交喫茶店組合の事務所で出されたビールを飲み始めた。真夜中の1時過ぎ、その事務所の前を、花形と佐藤が通りかかった。ジミーは、2人を眼にするや、殺気立った。

花形が、ジミーの姿を見つける

「てめえら、よくもぬけぬけと……」

 ジミーは、レインコートに巻いた日本刀を取り出すと、叫んだ。

「待ちやがれ!」

 花形が、ジミーの姿を見つけた。

「なんだ、てめえ、まだこのあたりをうろうろしていたのか」

「なに……」

 ジミーは、日本刀を振りかざし、花形に斬りかかった。

 佐藤が、とっさにジミーの両腕を押さえにかかった。

吹っ飛び、血みどろに

 お蝶が、ハンドバッグを探っている。花形は、てっきり彼女が拳銃を取り出すにちがいないと判断した。

 花形の右拳が、彼女の顔面に炸裂した。彼女は、2メートルも吹っ飛んだ。彼女の顔は、血みどろになった。

 いっぽう、ジミーは、佐藤に両腕を押さえられながら、何度も斬りかかった。佐藤は、かわしそこなうと、斬り殺される。白刃を避けながら、出足払いでジミーを路上に叩きつけた。

 ジミーは、なお日本刀を持ったまま、起き上がろうとした。佐藤は、ジミーにおおいかぶさった。

 花形が、日本刀を持つジミーの右手を、右足で踏んづけた。

 ジミーは、血走った眼で、花形を睨みあげ、唾を吐いた。

 花形は、右足でジミーの右手を踏みにじる。

 さらに、左足で、ジミーの頭を蹴った。

 ジミーは、歯を剥き出した。

「てめえ、このままじゃおかねえからな」

 花形は、わめくジミーの頭と顔を蹴りつづけた。ジミーの頭と顔は、血みどろになった。

 花形の靴も、血に染まった。さすがのジミーも、動かなくなった。

 人だかりがしてきた。花形と佐藤は、走り去った。

 ジミーは、花形に蹴られた傷がもとで破傷風にかかり、12日後に死んだ。花形は、裁判で正当防衛を主張したが認められなかった。花形は、余罪の追及も受け、懲役判決を受け、宇都宮刑務所に服役した。佐藤は執行猶予となった。

(大下 英治/Webオリジナル(外部転載))

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