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「経営者や記者から軒並み評判がよかったのに…」“おねだり&パワハラ知事”以前の斎藤元彦氏を知るジャーナリストが見た“豹変”の呆れるきっかけ

文春オンライン / 2024年9月3日 6時0分

「経営者や記者から軒並み評判がよかったのに…」“おねだり&パワハラ知事”以前の斎藤元彦氏を知るジャーナリストが見た“豹変”の呆れるきっかけ

百条委員会に出席した斎藤元彦知事 ©時事通信

 兵庫県の斎藤元彦知事はなぜ辞めないのだろう? 最大の謎である。いや、辞めれば済むという話ではないのだが、例えばどういう気持ちになれば次の発言ができるのか。
 
『兵庫県の斎藤元彦知事、パワハラ体質問われ「過去取り戻せない」「もっといい知事に」…百条委員会の証人尋問』(読売新聞オンライン8月30日)

 3月に斎藤知事をめぐる疑惑が浮上して以降、すでに2人の職員が死亡している(自死とみられる)。
 
 そのうちの1人が、この春まで兵庫県で西播磨県民局長を務めていた男性職員のX氏だ(※以下「X氏」)。X氏は斎藤知事を告発した文書を報道機関などに送付したら寄ってたかって追い詰められ、処分された。「寄ってたかって」の部分は重要なので後半に詳しく書く。
 
 X氏の告発には2023年11月23日に開催された阪神タイガースとオリックス・バファローズのリーグ優勝を記念したパレードもあった。文書には、兵庫県は「必要経費を補うため、信用金庫への県補助金を増額し、それを募金としてキックバックさせた」旨の告発もあった。

 パレードを担当した課長は不正行為と難しい調整に精神がもたず、うつ病を発症したと記されていたが、4月に亡くなっていたことが7月末に公表された。

2人の職員が死亡...斎藤知事が言い放った“衝撃発言”

 こうして2人の職員が亡くなっているのだが、百条委員会で斎藤知事は自身の振る舞いを問われて「過去は取り戻せない」「もっといい知事に」と平然と言ったのである。ゾッとする。

 県議会の調査委員会が県職員に行ったアンケートの中間報告には「カニの持ち帰り」などのおねだり例やパワハラ疑惑も報告されていた。インパクトが強いエピソードの数々なのでそこに目が向けられるのもわかる。

 しかし今回最も論じられなければいけないのは「公益通報つぶし」ではないか?

 X氏が告発文書を一部の報道機関や県議に送付すると、県はX氏が文書作成者だと断定し、X氏の公用PCを押収した。その2日後、斎藤知事は定例会見で「業務時間中に『嘘八百』を含め、文書を作って流す行為は公務員として失格だ」と述べた。

 県はX氏を停職3カ月の懲戒処分にした。X氏は7月7日に急死。「死をもって抗議する」という文言を遺していた。

なぜ斎藤知事は責任を取らないのだろうか

 こうした公益通報つぶしが明らかになっているのに、なぜ斎藤知事は責任を取らないのだろう。そう思った私は7月に大阪へある人の話を聞きに行った。元神戸新聞の記者で現在はノンフィクションライターの松本創氏である。
 
 松本氏は維新政治を深く取材しており、著書には『誰が「橋下徹」をつくったか――大阪都構想とメディアの迷走』(140B/2016年度日本ジャーナリスト会議賞受賞)など多数。最新刊は編著で『大阪・関西万博 「失敗」の本質』(ちくま新書)がある。
 
 実は、松本氏は斎藤元彦氏を以前から取材していたという。ではどんな人物だったのか。
 
「知事になる前から取材していましたが、ああいうキャラクターの片鱗も見せなかった。首長、議員、経営者、記者......軒並み評判がよかった。彼の人物像は兵庫県知事就任の前と後で、明らかな断絶があります 」

斎藤知事が「ああなってしまった」ワケ

 なんと、今の姿は想像できないという。ではなぜああなってしまったのか。どう考えますか?
 
「彼の人生の目標は知事になること自体ではなかったか? というのが現時点での仮説です。だから自分は最大限に尊重されるべきだし、何でも言い分が通ると思っているのではないかと」
 
 斎藤氏の「元彦」という名前は祖父が付けた。金井元彦・元兵庫県知事から取ったという。知事のイスに座ること自体が目標となった人物は目的を達成した瞬間に豹変したという見立てである。

 松本氏は「彼は知事になって何をやりたいのかわからなかった」とも述べた。そして今回の問題の本質について次のように語った。
 
「あと、やはり斎藤氏個人の資質の問題と、それに乗じた4人組(牛タン倶楽部)のように兵庫県庁の組織的問題の両面があるということには留意しておきたい」
 
 多くの報道がどうしても斎藤氏個人のエピソードに終始してる感があるが、兵庫県庁の上層部のありようにも問題があったという。

X氏が告発した“牛タン倶楽部”とはなにか?

 問題の核心に入ってきた。ここでおさらいしよう。4人組(牛タン倶楽部)とは何か。松本氏に話を聞いた際に私の手元には 「週刊文春」(7月25日号) があったのだが「この記事には兵庫問題が詳しく書かれている」というので引用する。
 
《そもそもX氏が告発したのは斎藤知事だけではない。片山副知事、県職員の総務部長、産業労働部長、若者・Z世代応援等調整担当理事の四人への言及がある》(7月25日号)
 
 ではこの4人はどこで知り合ったのか。

 2013~16年に当時総務官僚だった斎藤知事が宮城県に出向していたころ、東日本大震災の復興関連で、兵庫県も職員を派遣することが多かった。するとこの4人組と斎藤知事は仲良くなり、
 
《いつも仙台でつるんでいた。兵庫県庁では知事以下五人を『牛タン倶楽部』と陰で呼んでいます。》(県職員・7月25日号)
 
 2021年に知事となった斎藤氏は「牛タン倶楽部」のメンバーを側近として重用した。
 
《県庁職員とのコミュニケーションを拒み、四人組への依存を深めていくばかり。敵対的と見なされた者は次々と排除された。最近は斎藤に意見できる職員は誰もいなくなっていた》(県OB・7月25日号) 

X氏の告発を「寄ってたかって」追い詰めた人々の正体

 いかがだろうか。こうした状況下でX氏が告発したのだ。しかし、知事が勢い任せに「嘘八百」と口にしてしまったことで、県はあの文書を「嘘八百」と結論づけるための内部調査しかできなくなったという。
 
 県はX氏のパソコンを押収し、私的な文章も見つけた。この文章は4人組によって県議や県職員に漏れたという。告発文書をめぐり、百条委員会の設置が求められると、今度は維新会派の県議たちの間にもX氏の私的な文章が流出したようで、
 
《維新の岸口実県議と増山誠県議が、百条委員会の場でX氏のPCに入っていた全てのファイルを公開するよう強く主張し始めた》(自民県議・7月25日号)

 こうして知事、4人組、強硬な2人の維新県議に「寄ってたかって」追い詰められたX氏。公益通報とは何か、そして兵庫県政の実態をあらためて問うべきではないか。
 
 斎藤氏が知事に当選した2021年の選挙では自民と維新が斎藤氏に相乗りした。出馬前は大阪府の財政課長で松井一郎・吉村洋文両知事の維新府政を3年間支えた。それゆえ「製造責任者」として維新に注目が集まるのだが維新関連ではこんな記事も出始めている。
 
『維新批判票? 初の現職市長落選 党幹部「完敗」に衝撃 大阪・箕面』(毎日新聞8月27日)
 
 2010年の結党以来、維新公認の現職首長が落選するのは初めてだった。その要因に「大阪・関西万博」と「自民派閥の政治資金パーティー裏金問題を受けた政治資金規正法の改正を巡り、日本維新が『政策活動費』の領収書の10年後公開で自民と合意したこと」、そして「斎藤知事」問題が言われている。
 
 兵庫県のパワハラ知事問題は維新問題であることがわかる。これで慌てて維新が斎藤批判に動き出したら、それもまた維新っぽい展開なのだが。

(プチ鹿島)

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