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会社も宗教も人と組織でできている

文春オンライン / 2024年9月12日 6時0分

会社も宗教も人と組織でできている

『宗教を学べば経営がわかる』

「面白い」「すごく共感する」。経営者をはじめ、さまざまな人が絶賛している『 宗教を学べば経営がわかる 』。中東情勢やアメリカ大統領選について、共著者の池上彰さんと入山章栄さんが本の刊行を記念して特別対談を行った。*この対談は、文化放送「浜松町Innovation Culture Cafe」(9月2日放送分)を再構成したものです。

◆◆◆

入山 「浜松町Innovation Culture Cafe」、今週はビッグなゲストにご来店いただきました。ジャーナリストの池上彰さんです。よろしくお願いします。まさか池上さんに来ていただけるとは思わなかったんです。テレビは毎日のように出られていますけど、ラジオはいかがですか。

池上 私はラジオ大好きですから。文化放送がいまの浜松町に引っ越す前、新宿区(四谷)にあった頃にもお邪魔していました。実は私、NHKの採用試験を受験したところ、当時大学の就職課から「文化放送が一般募集しているけど受けないか」と言われて受けたんです。4次試験まで通って、5人に絞られた5次試験で最後に社長との面接で、社長と喧嘩をしまして。

入山 すごい話ですね。

池上 社長との面接は儀式的なもので、5人とも入れるつもりだったのに、私1人だけこうなっちゃったもんだから、他の取締役は喧嘩を必死になって止めてくれたわけです。面接が終わってから人事の人に「明日、合否を連絡します」と言われたんですが、何日経っても連絡が来ない。問い合わせをしても「もうちょっとお待ちください」って言われて、最終的に私だけ落ちたという。文化放送が受かっていれば文化放送に入るつもりでした。

入山 いやあ、そうですか。池上さん、ラジオは結構好きなんですね。

池上 受験勉強の頃から、落合恵子さんや、土居まさるさんの番組をずっと聴いてました。ニッポン放送の「オールナイトニッポン」や、TBSラジオの「パックインミュージック」もありましたけど、やっぱり文化放送が好きでしたからね。

いい会社は宗教っぽい

入山 そんな池上さんに文化放送に来ていただいた理由のひとつが、私と池上さんの共著という形で『宗教を学べば経営がわかる』という対談本を出したからです。池上さんがいっぱい本を出されているなかで、これはどういう位置づけになりますか?

池上 私は宗教についていろいろ書いたり解説したりしていますが、この本は入山さんという経営学者とコラボすることによっていわゆる化学反応が起きて、宗教を経営的な観点で見ることができました。本当に新しい発見ばかりでしたね。宗教をそういう観点で見ることができるのか。経営学的に合理的な運営をしているから、今も長く宗教団体は続いているんだな、ということの発見でしたね。

入山 嬉しいです。この本は、池上さんと5、6回お話しさせていただいて、それを書籍化したものなんです。私は宗教に関して素人なので一生懸命勉強して、必死に池上さんと議論をさせていただいたんですけど、横で聞いている編集者の皆さんは「めちゃくちゃ対談が面白かった」って言ってくださって。やっぱり今までにない切り口だったんでしょうね。

池上 入山さんが本当に真面目なんです。大学の先生なのに、毎回私に「宿題を出してください」って言われて。「じゃあ、少なくともこの本を読んできてください」という形で宿題を出しました。そうすると入山先生がちゃんと読んだ上でいろんなことを聞いてくださるというのが、立派だなと思いました。

入山 逆に池上さんの熱心な先生ぶりもありがたくて。「本を3、4冊みつくろってくださいませんか」ってお願いすると、ギリギリ3、4日くらい前に「これも読んどいた方がいい」って追加してくださって。おかげで本当に私も勉強になりました。もともと私は経営学者として「いい会社は宗教っぽいところがある」という認識を持っていました。なので、宗教について学びたくて池上さんと対談させていただく機会がいただけたので書籍化までしたわけです。実際にこの本を私のまわりの経営者の方々に読んでもらっていて、元財務次官の人も読んでいるらしいんですけど、みんな「めちゃめちゃ面白い」「すごく共感する」って言うんですよね。人を動かすときって、最後はやっぱり心をつかまなきゃいけないから、宗教的な力みたいなものは結構大事なんだというふうにおっしゃっていて。経営者から共感を得ている本だと思っているんです。

池上 入山先生が「腹落ちっていうのが大事だ」とよくおっしゃいますけど、言われてみると、宗教って本当に信じるっていうのは、言わば腹落ちしたってことなんだろうなと思いましたよね。

ホンダもトヨタもアメリカ進出に失敗した過去が…

入山 ちなみに池上さんはこの本の対談のなかで、たとえばこのあたりが特に面白かったというところがありますか?

池上 たとえば、トヨタはカトリックでホンダはプロテスタントだという比較や、「どんなビジネスも最初はカルト」と言われると、確かにそうかもしれないなって思い当たるところばっかりでしたよね。一方で、「なぜイスラム教はティール組織が作れるのか」という視点で見るのは、まったく初めてだと思いましたね。

入山 経営学は人と組織の学問で、会社も宗教も人と組織でできていますから、実は結構なぞらえられるところが多くて。池上さんと対談を始めた最初の頃、池上さんが「ホンダはプロテスタントっぽいよね」というふうにおっしゃって、じゃあ「トヨタはカトリックですね」という話になった。それから、宗教をテーマに対談していきました。

池上 トヨタって本当に長い歴史があって、いろんなことをやっています。それに対して、ホンダはオートバイというか、二輪にモーターつけただけみたいなところから始まって。四輪の自動車を作ろうとしたら、当時の通産省(現在の経済産業省)から「やめろ」って圧力かかっているんですよね。「日本には自動車会社がいっぱいあるのに、なんで今さら、もう一つ四輪の自動車会社を作らなきゃいけないんだ。トヨタも日産もいすゞもマツダもあるだろう、なんでオートバイの会社が自動車を作るんだ」って圧力を受けた。それでホンダが猛烈に怒って、じゃあ目にものを見せてやるという当時の通産省に対する反骨精神から、四輪の自動車をつくってみせたんです。

入山 ホンダってその辺がすごく面白いですよね。フロンティア精神や、面白い気概のある会社ですよね。オートバイを売ろうとアメリカへ行ったら、最初全然売れなかった。なぜかというと、当時のアメリカって大型バイクなんですよね。だから、ホンダも「アメリカ人は大型バイクしか乗らないだろう」ということで、ハーレーダビッドソンみたいな大型バイクを売りに行ったんですね。だけど、ホンダはもともと小さなスーパーカブをつくっている会社だから、大型バイクの技術がなくて、すぐに壊れたらしいんですよ。バイクの耐久性が全然ないし、売れないし困ったなと思っているときに、近所で小さなバイクに乗ってピザを宅配しているのを見て、「小さなバイクのほうが売れるんじゃないか」と思ってスーパーカブを発売したら、大ヒットして。

池上 それを言ったら、トヨタだって、今からだと信じられないエピソードもあるんですよ。アメリカへの輸出を考えて、1970年代初めにアメリカのフリーウェイを走らせてみたら、時速100キロを超えると車体からカタカタと音が出た。途中で路肩に車を止めて、「これはダメだ。まだアメリカへの輸出は無理だ」と言ったという。


文化放送「浜松町 Innovation Culture Cafe」の音声はこちらからお聴きいただけます。
https://podcastqr.joqr.co.jp/programs/hamacafe

〈 「知れば知るほど複雑になる」中東情勢をビジネスで読み解く 〉へ続く

(池上 彰,入山 章栄/文春新書)

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