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ベンチャーにも宗教にも重要な「PMF」って何だ?

文春オンライン / 2024年9月13日 6時0分

ベンチャーにも宗教にも重要な「PMF」って何だ?

『宗教を学べば経営がわかる』

「面白い」「すごく共感する」。経営者をはじめ、さまざまな人が絶賛している『 宗教を学べば経営がわかる 』。中東情勢やアメリカ大統領選について、共著者の池上彰さんと入山章栄さんが本の刊行を記念して特別対談を行った。*この対談は、文化放送「浜松町Innovation Culture Cafe」(9月9日放送分)を再構成したものです。

◆◆◆

入山 「浜松町イノベーションカルチャーカフェ」、先週に引き続き今週もお客様にジャーナリストの池上彰さんをお招きしています。今回、池上さんにお越しいただいたのは、私と共著で『宗教を学べば経営がわかる』という本を文春新書から出させていただきまして。対談のときの印象とか何か覚えていらっしゃることはありますか?

池上 私は宗教というのはこんなものだというふうに理解したり、解説したりしてきましたけれど、この対談は本当に発見ばかりでしたよね。どうして宗教団体でもすぐに消えてしまったところもあれば、長い寿命を保っているところもあるのか。経営学の視点から見ると、その理由がわかります。経営学は人と組織を分析する学問ですし、宗教団体も結局は人間の組織だから共通するところがあるんだなと思いました。ひょっとすると、この『宗教を学べば経営がわかる』は、宗教団体をまさに経営している人たちが読むと自分のところの組織の強みと弱みがわかるかもしれませんね。

「現世救済型」創価学会は高度経済成長期に…

入山 まさにこの対談で私が池上さんからすごく勉強させていただいたのが、「創価学会というのは現世救済型である」ということです。伝統的な宗教は来世救済型で「亡くなった後、あの世に行ってからどうなるか」というタイプが多いんですが、創価学会は「現世のうちにご利益がありますよ」というタイプです。創価学会はちょうど高度経済成長期、つまり人が豊かになる時代にフィットしたから伸びたということを勉強させていただいて、なるほどなぁと思ったんです。これ、ベンチャーの世界で「プロダクトマーケットフィット」、PMFって言うんです。今、ベンチャー企業の経営者に会うと、みんな「PMF」って話すんですが、簡単に言うと、自分の会社の製品がその時代の市場、お客さんのマーケットにちゃんとフィットしてるかっていうことです。当たり前ですが、やっぱりここがよくないと物が売れません。そういう意味でいくと、まさに創価学会っていうのは高度経済成長期にPMFがバッチリだったんだなっていう。

池上 確かに間違いないそうですよね。逆に、経済が成長して安定期に入ったら組織が伸び悩むということが起きていますからね。

入山 やっぱりそうですか。創価学会もちょっと今時代に合わない部分が出てきている。

池上 今は、新たに入ってくるって人が少ないんですね。創価学会に入ってくるという人は、親が創価学会員だったからという形で、なかなか新しい市場を開拓できてませんね。

世界的に宗教離れが進んでいる理由とは

入山 『宗教を学べば経営がわかる』の対談でも議論させていただきましたが、今、世界で若者から宗教離れがだんだん進んできています。たとえばピュー・リサーチ・センターが2023年に行った調査によれば、アメリカ人の28%が無宗教だったと。「信仰している宗教は何ですか」と尋ねると、「自分は無神論者です」とか「特に興味がありません」という方が1972年は5%で、2007年には16%、それが今や28%にまでなってきているそうです。世界的に宗教離れが進んできているという理解でよろしいですか。

池上 まったくその通りですね。特にヨーロッパで宗教離れがかなり進んでいて、カトリックの信者がどんどん減ってきているがゆえに、ローマ教皇がついにアルゼンチンから出るということになったわけですよね。たとえばヨーロッパの場合、ドイツにしても北欧諸国にしても、実は教会税って税金がありまして。これは、政教分離であるにもかかわらず、キリスト教の教会に入っている信者には、国が代理で教会の維持費用を徴収するんですよ。代理徴収をして、その集めたお金を教会に渡すという形になっています。大学でいえば、大学が学生自治会の会費を代理徴収して、学生自治会に運営費として渡すのと同じ構図なんです。そうすると、教会に入っていると税金が取られてしまうから、そこから離脱する人が増えてきているんです。結果的に教会にお金が入ってこないということになり、ヨーロッパ、イギリスもそうですけど、もともと教会だったところが、今マーケットになっているところもありますね。

入山 だんだんお金に困ってきているんですね。

池上 そうなんです。アメリカの場合も昔はみんな本当にそれぞれ育ったところで生涯を過ごすってことになると、教会に行くのが当たり前でした。でも時代が進んでいくと、たとえばニューヨークやロサンゼルスに新たに入ってきた若い人たちってわざわざ教会に行かないんですよね。結果的に教会に通うという習慣がなくなってくる、信仰心が薄らいでいくという構造になっていると思います。

入山 なるほど。

池上 日本の場合も、田舎にいると神社の氏子、お寺の檀家でも、東京に出て働くようになると、氏子も檀家もなく、全く無縁ですよね。それと同じことがアメリカでも起きているんだということです。

入山 まさにプロダクトマーケットフィットが揺らぐというか、ずれてきちゃってるわけですね。そうすると、これからの時代にあった宗教みたいなものが必要になってくるっていうことなんですかね?

池上 そうだと思いますね。だから、たとえば統一教会は大きな社会問題になりましたけど、従来の日本の場合は家が単位で神社の氏子やお寺の檀家でしたが、そうではなく、1人ずつをターゲットにしていくというビジネスモデルの方が伸びてきたのかなってことがあるんですよね。

入山 なるほど。面白いですね。


文化放送「浜松町 Innovation Culture Cafe」の音声はこちらからお聴きいただけます。
https://podcastqr.joqr.co.jp/programs/hamacafe

〈 ビル・ゲイツ、カーネギー…アメリカの超エリートはなぜむちゃくちゃ働くのか? 〉へ続く

(池上 彰,入山 章栄/文春新書)

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