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ビル・ゲイツ、カーネギー…アメリカの超エリートはなぜむちゃくちゃ働くのか?

文春オンライン / 2024年9月13日 6時0分

ビル・ゲイツ、カーネギー…アメリカの超エリートはなぜむちゃくちゃ働くのか?

『宗教を学べば経営がわかる』

〈 ベンチャーにも宗教にも重要な「PMF」って何だ? 〉から続く

「面白い」「すごく共感する」。経営者をはじめ、さまざまな人が絶賛している『 宗教を学べば経営がわかる 』。中東情勢やアメリカ大統領選について、共著者の池上彰さんと入山章栄さんが本の刊行を記念して特別対談を行った。*この対談は、文化放送「浜松町Innovation Culture Cafe」(9月9日放送分)を再構成したものです。

◆◆◆

入山 今日はこの池上さんをお迎えしまして、ここから「アメリカ大統領選と宗教」というテーマでお話ししていこうと思います。池上さんはアメリカ大統領選のときは毎回現地で取材されています。この『宗教を学べば経営がわかる』の第6章で、アメリカというのは徹底的なキリスト教のプロテスタント、特にカルヴァン派と呼ばれる人たちの思想が蔓延している国なんだということを本当に私も勉強させてもらいまして。「なんでアメリカのエリートってあんなにむちゃくちゃ頑張るんだ?」とか「なんで、あんなにやたらお金稼いで誰も文句言わないんだ?」とか。「やたら稼いでいるくせに最後はなんで寄付するんだ?」とか今までさっぱりわかっていなかったんですけど、池上さんと対談させてもらって勉強して、カルヴァン派の思想がよくわかりました。本当にアメリカって宗教まみれの国なんですね。

池上 そうなんですよね。たとえばビル・ゲイツが、別れた奥さんと一緒に財団を作って、そこに自分たちの莫大なお金を寄付したりしているんですよね。聖書の中の言葉として、「金持ちが天国に入るのは、ラクダを針の穴に通すよりも難しい」って書いてあるわけですよ。ということは、「金持ちのままだと天国に行けないんだ、だから稼いできたけど、最後の最後は金を全部持たない。寄付してしまえば天国に行けるんだ」って思いがあるということですよね。カーネギーだってそうでしょ。名だたる経営者で成功した人はみなさん寄付していますよね。

大統領選で福音派が力を持つようになったのは…

入山 これからアメリカ大統領選と宗教についてお伺いしたいんですが、まず前提として私の理解はアメリカというのは85%ぐらいがキリスト教徒で、そのうちの半分以上の60%、70%ぐらいがいわゆるプロテスタント、残りがいわゆるカトリック。そして今の大統領選挙でいくと、共和党の副大統領候補に選ばれたJ・D・ヴァンスは、私が調べたところだとプロテスタントですね。ドナルド・トランプは一応プロテスタントで、キリスト教の中でも福音派の支持をだいぶ得ている。そういう構図だということをよろしいでしょうか。

池上 はい、福音というのは、「良い知らせ」という意味です。さらに新約聖書は4つの福音書と手紙などから成り立っているわけで、聖書に書かれていることを全て真実だと考えている人たちのことを「福音派」あるいは「エヴァンジェリカル」って言っているんですね。

入山 私、実は最近勉強したんですけど、この福音派は、カーター大統領やレーガン大統領の時代に政治力を持つようになったと。カーター大統領は民主党で、南部のジョージア州出身で、そのあたりは福音派が多いわけですよね。ところが、カーターは、妊娠中絶を認めるなど、かなりリベラルな施策を取り、それが福音派の怒りを買っちゃって、その次の大統領選で福音派が共和党のレーガン支持に回った。そこからかなり福音派と共和党の関係性が強くなっていったというのが、私の理解ですが、よろしいですか。

池上 その通りですね。つまり、そこから福音派は自分たちで政治を動かすことができるということを自覚して、大統領を選ぶ上で大きな力を持つようになったということだと思いますね。日本にも一生懸命選挙運動をする宗教団体がありますから、同じ構造がアメリカで起きているってことですね。

反トランプの福音派も

入山 なるほど。一方の民主党のカマラ・ハリスですね。バイデン大統領が大統領選から降りたので、カマラ・ハリスが大統領候補になったわけですけど、彼女はインド系であり、ジャマイカの血もひいているので、結婚する前にプロテスタントになっていたけど、旦那さんはユダヤ系なんですよね。

池上 ユダヤ系ですね。アメリカは、ユダヤ人とカトリックやプロテスタントが結婚するってことは結構普通にありますからね。

入山 そして民主党の副大統領候補に選ばれたティム・ワルツという気の良さそうなおじちゃんは、私が調べたところ、プロテスタントのルター派だと。共和党はプロテスタントのトランプ、そして、民主党はプロテスタントになったんだけれども、旦那さんはユダヤ人というカマラ・ハリスという構造ですね。

池上 そうですね。この場合はどちらもプロテスタントなので、実はそこでの対立というのはあまり起きていません。ただ、福音派をどちらが取るのか、あるいは妊娠中絶を認めるか認めないかということを争点にしているんですね。

入山 ということは、福音派が民主党のカマラ・ハリスに入れる可能性もちょっとあるんですか。

池上 それはないでしょうね。妊娠中絶に関する連邦最高裁判所の判決をひっくり返すことにしたのは、トランプの功績だというのがあるわけです。そもそも「人工妊娠中絶はアメリカの憲法に権利として認められている」という判決を、トランプが最高裁に入れた保守の裁判官が増えたことによって、「そんなものはアメリカの憲法では保障されていない。それぞれの州が勝手に決めればいいだろう」ということになったわけですね。そうして、共和党の勢力が強いところでは次々に人工妊娠中絶を禁止していったんです。

入山 まさに南部の州ですよね。ジョージアとかルイジアナとかあのへんは福音派の人が多いから、法律をバンバン通しちゃったんですよね。

池上 だから、福音派にしてみれば、「トランプが最高裁判所の裁判官に保守派を入れた結果、自分たちの主張が通ったんだ」という思いがあるわけですから、やっぱりほとんどがトランプを支持する。ただし、トランプにいろいろ女性問題があったりすると、福音派って敬虔な人たちばかりですから「本当にクリスチャンとしてどうなの?」みたいに思う人はいるんです。反トランプの福音派も少しはいるんですけど、大体はみんなトランプを支持するという形になってますね。

入山 なるほど。


文化放送「浜松町 Innovation Culture Cafe」の音声はこちらからお聴きいただけます。
https://podcastqr.joqr.co.jp/programs/hamacafe

〈 トランプvsハリス アメリカ大統領選の雰囲気を一気に変える「オクトーバー・サプライズ」とは? 〉へ続く

(池上 彰,入山 章栄/文春新書)

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