1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

米メタ社が「日本をなめている」のは、単に日本にEUなみの強力な法律がないからだ

文春オンライン / 2024年9月10日 6時0分

米メタ社が「日本をなめている」のは、単に日本にEUなみの強力な法律がないからだ

グーグル本社 ©AFP=時事

「俺や堀江(貴文)さんや著名人が利用された詐欺広告なんてすぐに判別できるでしょ? なめてんの?」「日本なめんなよマジで」(前澤友作氏)

「ずっとなめられている。規制しないとだまされてしまう人が出る」(堀江貴文氏)

 SNSに多数掲載されている、著名人になりすまして悪質な投資を呼びかける「詐欺広告」。この問題に対する米メタ社(フェイスブックやインスタグラムを運営)の対応に、前澤友作氏や堀江貴文氏は怒りをぶつけた。

巨額の制裁金を科すような法律が日本にはない

〈メタは日本をなめているのだろうか。筆者は必ずしもそうは思わない。単に、営利企業に対してコストのかかる作業を行わせるだけの法制度が、日本に存在しないだけである〉

 こう語るのは、プラットフォーム(PF)問題を長年取材してきた読売新聞編集委員の若江雅子氏だ。

〈メタは現在、コンテンツモデレーション〔違法情報やポリシー違反の情報を削除したり、利用者のアカウントを停止したりする管理〕の99%以上をAIに委ねていると説明している〉

〈AIによる自動審査の精度は十分ではないため、最終的にその国の言語や文化、社会状況を把握する人間が目を通さなければ、対応漏れや過剰な削除は当然に起きるだろう。人間を雇えばコストは膨らむ。それでも、そのコストをかけなかった場合、巨額の制裁金を科されるなど、より大きなコストの発生が予想され、それが得られる利益を上回ると判断すれば、企業は対応するはずだ〉

 SNS型の投資詐欺被害はここ数年、急増している。警察庁によると、2023年の被害は2271件、約278億円にのぼり、被害者の4割はメタが運営するフェイスブックかインスタグラム上の広告を見たのがきっかけで事件に巻き込まれている。

 こうした状況を受けて、今年3月、総務省の有識者検討会で、PF会社へのヒアリングが行なわれたが、〈質問をのらりくらりとかわすメタ幹部に、検討会の委員らはいらだちを隠せなかった〉という。

メタ社は「営利企業として合理的に振舞っている」だけ

〈メタが、日本では公表しない言語ごとの対応人数をEUでは開示するのは、EUにデジタルサービス法(DSA=Digital Services Act)という強力な法律が存在するからだ。オンライン上の情報空間の安全とユーザー保護を目的に、PF事業者らに偽・誤情報や違法なヘイトスピーチなどのコンテンツについての一定の対応を義務付けるものだ。そして違反した場合は最大で全世界前年売上の6%の制裁金が科せられる。メタの2023年の世界総売上は1349億ドル。仮に6%の制裁金が科されるとすれば、今のレートだと日本円にして1兆2000億円になる〉

〈日本では現在、冒頭の総務省の検討会でDSAに相当する法制度整備について議論している途中で、偽・誤情報や偽広告のモデレーションをPFに求めるための制度は現時点では存在しない。(略)したがって、対応コストが非対応コストを上回ることが明らかな状況下で、対応しないというメタの選択は企業としてはある意味合理的なのである〉

 つまり、若江氏によれば、メタ社は「日本をなめている」のではなく、「営利企業として合理的に振舞っている」だけなのだ。

問題の元凶は「国外」よりも「国内」にある

 その上で若江氏は、問題の真の所在について、こう指摘する。

〈PFの台頭で日本の利用者に不利益が生じているのにいつまでも手当てされない、ということは今回に限ったことではない。ただ、それらは日本政府の規制に対する慎重な姿勢に起因するのではないかというのが、PF問題を取材してきた筆者の問題意識である。さらに、規制の強化に強く反対しているのが日本の事業者であることも珍しくなく、結果として本来なら競争相手のはずの海外PF事業者を守っているのではないか、と思うこともしばしばである〉

 問題の元凶は「国外」よりも「国内」にある――我々がまず認識すべきなのは、このことだろう。

 この他、「サードパーティ・クッキー問題」「個人情報の定義」「海外PF企業への制裁のあり方」「EUの対PF戦略」について論じた、若江雅子氏の「 日本はGAFAに甘すぎる 」は、「文藝春秋」2024年10月号(9月10日発売)、および「 文藝春秋 電子版 」(9月9日公開)に掲載されている。

(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2024年10月号)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください