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レコード店に置いてもらえず、ファンには「どこで買えるんですか?」と…アニソン不遇の時代から始まった、歌手・森口博子と『ガンダム』の“縁”

文春オンライン / 2024年9月28日 11時0分

レコード店に置いてもらえず、ファンには「どこで買えるんですか?」と…アニソン不遇の時代から始まった、歌手・森口博子と『ガンダム』の“縁”

森口博子さん ©深野未季/文藝春秋

 8月7日に発売されたアルバム「ANISON COVERS 2」のジャケットで34年ぶりにビキニ姿を披露したことでも話題となっている歌手の森口博子さん。アルバムは、オリコン週間アルバムランキング8位、Billboard JAPANトップアルバムセールス週間ランキング5位を獲得とヒット中だ。

 そんな森口さんの不遇だったデビュー当時、そして自身の音楽人生と切っても切れないガンダムとの関わりについて聞いた。(全3回の1回目/ 続きを読む )

◆◆◆

「声が良かった」という理由でスカウト

――森口さんとアニメの関わりは1985年、17歳のときのデビュー曲「水の星へ愛をこめて」からですね。アニメ「機動戦士Zガンダム」の後期オープニング曲でした。どういった経緯でこの曲を歌うことになったんですか。

森口博子さん(以下、森口) もともと4歳から歌手を目指して、いろいろなオーディションを受けていたんですが、ずっと落ち続けていたんです。Zガンダムの主題歌はキングレコードのディレクターの大場龍夫さんが歌う人をオーディションで探していたんですが、なかなかいなくて。そんな時、NHK「勝ち抜き歌謡天国」の全国大会で準優勝をいただいたことがきっかけで「声が良かった」という理由でスカウトしていただきました。

――「水の星へ愛をこめて」の作詞家である売野雅勇さんが雑誌のインタビューで「大場さんは森口さんを大切にしていた」と話されていました。

森口 売野さんが? 嬉しいですね。大場さんは私を身内のようにかわいがってくださって、ご自宅に下宿させていただいていたんです。だから家族みたいな感じで。奥様も毎日私の喉のことを気にしてくださってました。「水の星へ愛をこめて」のレコーディングの際も大場さんに「この曲は君が大人になっても何十年って経っても歌える歌だから、言葉を大切に語尾を丁寧に、上手に歌おうと思わなくていいからね」とアドバイスをいただきました。「言葉を大切にする」という教えは今の私の歌のベースになっています。売野さんが書かれた美しくて普遍的なデビュー曲が、大場さんのおっしゃった通り何十年と沢山の方々に愛されて、生涯の宝物です。

レコード店にもあまり置いてない…当時のアニソンの扱い

――「水の星へ~」は今やアニソン屈指の名曲として知られていますが、当時はアニソン自体がまだまだ扱いが地味な時代で、曲の紹介なども他のアイドルがカラーの中、森口さんは白黒のページと差がありました。

森口 当時のアニソンって今ほどフィーチャーされるものではなかったので。レコード店にもあまり置いてないんです。プレスが少ないんですよ。私のレコードが置いてないからファンのみんなから「どこに行ったら買えるんですか?」って言われました。

 歌は4歳の頃からの夢で、やっとデビューできて、しかもアニメの主題歌で「毎週みんなに聴いてもらえるんだ」と期待していたらこの扱いという。事務所も私の売り出しには力を入れていなくて「ガンダムの主題歌で声が良いってスカウトしてくださった方もいるのに、なんで売ってくれないんだろう」って子供ながらに思ってました。

仕事がなく学校に行くのが辛かった

――堀越学園出身ですが、芸能コースなのに毎日学校に通っていたことが恥ずかしかったそうですね。

森口 本当は学生だから通うのが正解なんですけど、芸能コースにいると「仕事に行きたいのに何で出席しているんだろう」と寂しさや孤独を感じてました。同級生には井森(美幸)とか、荻野目(洋子)ちゃんとか武田久美子ちゃんがいたんですけど、彼女たちはほとんど学校に来ていなかったですし。

 仕事がなく学校に行くのが辛くて、忙しいふりをして偽の早退書を出し授業をさぼったりもしました。でも行くところがないから下宿先の近くの教会でマリア像をずっと見て時間を潰したり。辛かったですよ。

 高校卒業間近に事務所から「あの子は売れないから、福岡に帰した方がいい」とリストラ宣言を受けました。その時も「売れないんじゃなくて、売ってないんじゃないですか?」ってこの時も子供ながらに思っていました。

バラドルとして活躍しながらも「絶対歌につなげるんだ」

――森口さんはリストラ宣告を転機にバラエティー番組に進出し、結果バラドルとして人気を博します。

森口 事務所の上層部はリストラしたがっていたんですが、有り難いことに私を信じてくれた現場のマネージャーさんたちが「いきなり歌じゃなく違う世界でやるという方法もあるから」って言ってくれて。それでバラエティーをやりながら「この先には歌があるんだ、絶対歌につなげるんだ」って気持ちでやっていました。そのためには絶対手を抜かないって決めて始めました。

 歌は私の生命線です。バラドルで忙しかった時も社長室にノックして「歌の仕事を増やしていただけないんだったら、事務所を辞めるつもりでいます」と言いに行ったことがあります。

――バラエティーで活躍した時に再びガンダムの曲とめぐりあいます。1991年に映画「機動戦士ガンダムF91」のエンディングテーマ「ETERNAL WIND ~ほほえみは光る風の中~」がオリコン最高9位とヒットし、その年の紅白歌合戦にも出場します。

森口 デビュー曲はガンダムの主題歌で、その後にリストラ宣告に遭いながら、バラエティー番組の先には歌があると信じてやってきて。そこで再びガンダムの主題歌を歌わせていただき、原点に帰って来れたという喜びがありました。この曲で初めてオリコンウィークリートップ10入りをして、紅白歌合戦に出場できましたし、アイドル時代には経験できなかった全国ツアーにつながって。やっと歌手としてスタートラインに立てたって思いました。

ガンダムファン以外の大勢の人達にも届いた

――「ETERNAL WIND ~ほほえみは光る風の中~」も元々は「ガンダムF91」のエンディングテーマではなかったんですよね。

森口 元々はカップリングの「君を見つめて -The time I’m seeing you-」が使われる予定だったんです。ただレコーディングの時から「ETERNAL WIND ~ほほえみは光る風の中~」については「えっ、この感動的な壮大なバラードがカップリング曲?」という空気がみんなにあって。カップリングだと出番が少ないからもったいないなって思ってました。

 そうしたら富野由悠季監督が発売直前に「メインとカップリング曲を入れ替えよう」とおっしゃって、「ETERNAL WIND ~ほほえみは光る風の中~」がメイン曲になりました。しかも劇中歌として流れて、エンディングでも流れる。同じ曲が1つの作品で2回も流れるってなかなかないですよね。

 ガンダムという作品のファンの方々にプラスして、バラエティへの露出で私を知ってくれたガンダムファン以外の大勢の人達にも届けることができました。「それまでバラドルと思っていたけど、森口さんの歌を聞いて涙が出ました」「心が震えました」という言葉をたくさんいただいたことは忘れられないです。

作曲家に送ったメッセージに返事が来て号泣

――「水の星へ愛をこめて」は2018年、NHK BSプレミアムで放送された番組『発表!全ガンダム大投票』のガンダムソングス部門で1位を獲得。「ETERNAL WIND ~ほほえみは光る風の中~」も3位に入りました。

 その後、作曲したニール・セダカさんにメッセージを送ったそうですね。

森口 八神純子さんのラジオに出演させていただいた時に、デビュー曲が1位になったという話をしたら、八神さんが「ニール・セダカさんは知っているの?」って。「英語が話せないし、書けないので、伝えられてないです」って言ったら、「私が訳すよ!」って言ってくださって。それで思いのたけをSNSを通じてお送りしたら「未だに沢山の人に愛されていることをとても嬉しく思います。これからも努力を忘れずに、良い音楽を届けてください」とお返事が来ました。嬉しくて号泣しました。純子さんにも感謝です!

30年以上の想いが報われた

――『発表!全ガンダム大投票』での好結果もあり、2019年にはガンダムの主題歌をカバーしたアルバム「GUNDAM SONG COVERS」が発売されます。

森口 カバーアルバムは立て続けに3枚リリースさせていただき全てオリコンウィークリー3位以内にランクインした時には、驚きと感動でいっぱいでした。まさに“夢に締め切りはない”と思いました。その際、やっと私のCDコーナーができたんです。竹内まりやさん、高橋真梨子さんの隣に森口博子のスペースができて、それも全国のいろんなCDショップで。「水の星へ愛をこめて」の時にはレコードすら置いてもらえなかったので感無量でした。30年以上の想いが報われました。

――「GUNDAM SONG COVERS」は2019年の日本レコード大賞企画賞にも輝きました。その際には堀越で同級生だった井森さんもメッセージをくれたそうですね。

森口 井森は「ずっと歌を諦めないで、アルバムも売れて、レコード大賞企画賞を取ったときには誇らしかったよ」って。荻野目ちゃんも「おめでとう! すごい快挙だよォ」って。ヒデちゃん(中山秀征)も「森口さんは僕たちができなかったことを叶えてくれた」って言ってくれて、なんか泣けちゃって。お互いを認め合える仲間って本当に心強いですよね。

――森口さんがバラエティーに出ながら、ずっと歌手であることを貫いたからこその結果ですね。

森口 それも出会いあってこそですね。こんな長く続けられる秘訣はと聞かれたら、健康もそうですし、自分の情熱もそうですけど、やっぱり誰と出会って嬉し涙を流して、悔し涙を流して戦えたかってことに尽きると思います。

 自分の音楽を信じてくれているスタッフの方々もそうですし、そして諦めずにずっと待っててくれたファンの皆さんもそうです! 紅白に初めて出た時も「正座しながら泣きながら見ました」っていうファンの方が結構いるんです。だから出会いに恵まれている。森口博子は持っていると、声を大にして言えますね。

〈 ガンダムの生みの親・富野由悠季は「大人になることはなんの問題もない」と言ってくれた…森口博子が語る、アニソンへの“熱いリスペクト” 〉へ続く

(徳重 龍徳)

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