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自民党平井氏の“税優遇リスト”に「四国新聞社主の母」の名が…それでも報じない四国新聞社の“驚きの言い分”とは

文春オンライン / 2024年9月10日 6時0分

自民党平井氏の“税優遇リスト”に「四国新聞社主の母」の名が…それでも報じない四国新聞社の“驚きの言い分”とは

平井卓也広報本部長 ©時事通信社

 政治家の世襲がよく議題になる。政治は私物ではないからだ。では政治家の一族が地元メディアを経営していたらどうだろう? 新聞でその政治家を絶賛していたら? 

 一族にとって都合の良いニュースは大々的に、都合の悪いニュースは報じないという「報道」をしていたら? 北朝鮮じゃあるまいしと笑うかもしれないが、これから書くことは日本の話である。

 先日、自民党広報本部長の平井卓也氏が総裁選のポスターとウェブ動画「THE MATCH(ザ・マッチ)」を発表した。平井氏は香川1区(比例四国ブロック)選出の衆院議員だ。父と祖父は参議院議員で、どちらも地元紙「四国新聞」の社長を務めていた。

 現在の四国新聞の社主は平井氏の母であり、社長は弟である。一族はテレビ局の西日本放送を経営し、平井卓也氏は29歳から41歳まで社長を務めていた。香川県では政治家一族が地元の新聞とテレビを持っている。

 そうなると政治報道はむしろ公平さに気を配ると思うのだが、四国新聞は平井推しを隠さない。忘れられないのは平井氏が初代デジタル大臣に就任した翌日の四国新聞である(2020年)。

 一面にデカデカと「初代デジタル相 平井卓也氏に聞く」とぶち上げ、平井氏が笑顔でインタビューに答えている。「国民目線で改革」「透明、公正、迅速に」という見出し。まるで国民の祝日のような紙面づくり。

 就任1カ月を報じる紙面では「政策推進 急ピッチ」とまたも絶賛で、隣りのページには平井氏の大臣就任を祝う地元企業の広告をずらりと並べていた。驚いた。これは本当に「新聞」なのか? 一族の私物化ではないか?

 驚愕の紙面はさらに続く。平井氏が大臣就任後に「初めて帰郷」したことを伝える紙面だ。「祖父、父の墓前で意気込み」との見出しで、社会面にこれでもかと大きく載せていた。

 既視感があるなと思ったら、金正恩、金正日、金日成ファミリーのエピソードを伝える「地元報道」だ。四国新聞、負けていない。

 ところが平井氏はデジタル大臣を1年で退任してしまう。四国新聞しか読んでいない人は不思議に思っただろう。実はその1年のあいだ四国新聞以外ではデジタル庁と平井氏の不祥事が大きく報道されていたのだ。少し挙げてみよう。

『「徹底的に干す」「脅しておいて」平井大臣、幹部に指示』(朝日新聞デジタル2021年6月11日)

【新音声入手】親密企業の参入を指示 平井卓也デジタル相に官製談合防止法違反の疑い(「週刊文春」2021年6月24日号)

『デジタル庁次官級を接待で処分 3回12万円、平井氏も同席』(高知新聞2021年9月24日)

出るわ出るわ、醜聞と疑惑のヒットパレード

 出るわ出るわ、醜聞と疑惑のヒットパレード。この影響もあったのか平井大臣は1年で退任。すると四国新聞は退任インタビューを載せ「既得権益との闘い続く」と、まるで悪と闘い続けたヒーローのように伝えていた。最後まで褒めちぎっていたのだ、身内を。

 四国新聞の特徴は平井氏を絶賛するだけではない。平井氏の選挙区でのライバル・小川淳也氏に対しては厳しく、あの手この手でネガティブに報じるのも特徴。

 しかも本人には取材をしないで書く。選挙が近づくほどこの手の記事は多くなる。政治家一族が地元でメディアを経営する危うさの博覧会なのである。

 小川淳也氏に密着したドキュメンタリー映画『香川1区』の大島新監督は高松市の中心部で商店を営む経営者から「この街で商売をやっている以上、四国新聞は敵に回せない」という証言を得たという(「文藝春秋」2021年11月号)。先述した、平井氏の大臣就任を祝う地元企業の広告紙面の意味も考えてしまう。

 さらに『香川1区』には衝撃的なスクープがあった。平井議員が代表を務める「自民党香川県第一選挙区支部」による政治資金パーティーの案内の内容だ。

 香川県内の企業で経理を担当する女性は、この開催案内に付けられた「チケットご購入依頼の件」とする文書を読んで驚いた。1枚2万円のパーティー券を10枚、20万円という金額を記した上で、その下に「ご出席依頼人数3名」と案内されていたのだ。

 神戸学院大学の上脇博之教授は、KSB瀬戸内海放送にて「これはもう限りなく弱い立場の会社にパーティー券を強制的に買わせている可能性があるなと。さらに、10人分パーティー券を買わせておいて3人しか参加を認めないということは、7人分は寄付なんですね。ところが、寄付とパーティー収入を分けてどうも書いてないんですね。となると、これは悪質だろうと」と発言。

 上脇教授はこの映画をきっかけに刑事告発した。まさに現在の自民党の裏金問題につながる話である(高松地検が再捜査を行っている)。さらに平井氏を巡っては、本人が1000万円を党支部に寄付し、税優遇を受けたことを報じられた。

平井氏だけではなかったカネの問題

 しかし! カネの問題は平井議員だけではなかった。8月17日、毎日新聞が一面トップでスクープを放った。

『平井氏親族も税優遇疑い 自民支部に4000万円寄付』

《自民党の平井卓也広報本部長の親族3人が2020~21年、計4000万円を平井氏が代表を務める党支部に寄付し、所得税の一部を控除される税優遇を受けた疑いがあることが判明した。》

 租税特別措置法では、個人が政党などに寄付した場合、寄付額の約3割が税額控除されるか、課税対象の所得総額から寄付分が差し引かれる。しかし、税制に詳しい専門家は「そもそも政治家の一族の節税のために作られた制度ではない」と述べている。

 実はここで書かれている平井氏の親族には「四国新聞社主の母親」も入っている。公平性が求められるマスコミが、息子が所属する政党に寄付をして税優遇まで受けていたことになる。

 四国新聞は地元や身内に関わる記事なので詳しく調べて報じるのか注目した。しかしやはりというべきか2週間以上たっても報道しない。何事も無かったように。なので私は文春オンライン編集部から質問状を送付した。

〈(1) 毎日新聞は8月17日朝刊1面で、平井卓也衆院議員の親族が自民党支部に4000万円を寄付し、税優遇を受けている疑いがあることを報じました。香川1区選出の平井衆院議員のこうした報道は、県民からの関心も高いかと存じますが、貴社は本日まで報道されていません。貴社は、この問題についてどのように捉えられているかご教示ください。


(2) 貴社の社長や社主は平井卓也議員と血縁関係にあるということで、報道機関が担う「権力の監視」が果たされているか不安におもう声や、中立性を心配する声もあります。こうした状況で、どのように報道機関としての役割や中立性を担保されているかご教示ください。〉

 四国新聞の回答は次のとおりである。

 

〈(1)毎日新聞が独自取材で選管に文書開示請求をしたうえで、記事を掲載していることは承知していますが、現時点では毎日新聞以外の新聞社、通信社、地元の放送局は報道に至っていないと認識しております。個別の案件に対するお答えは差し控えたいとは存じますが、今回の事案に限らず、報ずべき事実が確認できたときは記事を掲載したいと考えています。

 

(2) 経営陣が記事や論説の内容に介入することはなく、編集権は経営から独立しています。ご質問のご指摘は当たらないと考えています。〉

 つまり、毎日新聞が勝手に調べただけだからオーナーのこととはいえウチはやらないもんね、という態度が見える。

四国新聞からの回答に新聞業界関係者は...

 この回答を何人かの新聞業界の人に見てもらうと、「今回の件はオーナー家と編集局が対立してしまわないかと思って見てましたが、その心配はなさそうですね(苦笑)。現場でも自浄作用は働きそうもありませんね」という感想が印象的だった。

 そう、私が不思議なのは現場の記者たちだ。地元紙オーナー一族から政治家が出た例は四国新聞以外にもある。しかし編集は独立し尊重されるのが当たり前。ところが四国新聞の紙面からはオーナーへの忖度しか感じない。

 記者たちはなぜジャーナリズムの世界に飛び込んだのか? 安定を求めて新聞社に入っただけなのか。それでは地元の読者に失礼だ。それとも、経営陣の締め付けがそれほど強いのだろうか。四国新聞はどこかに置いてきたメディアの自覚を社員総出でもう一度探してみたらどうか。

 なお、昨年は日付も間違えるという「報道」もしている。誰にでもミスはあるが間違えすぎだ。地元紙としてしっかりして欲しい。

(プチ鹿島)

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