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〈寝付きやすく、眠り続ける効果も優秀〉新タイプの出現で睡眠薬の常識がガラッと変わった!《睡眠専門医が解説》

文春オンライン / 2024年9月17日 6時0分

〈寝付きやすく、眠り続ける効果も優秀〉新タイプの出現で睡眠薬の常識がガラッと変わった!《睡眠専門医が解説》

松井医師 ©文藝春秋

画期的な新薬が、睡眠薬の常識をアップデートしている——。睡眠薬治療の新常識を、国立精神・神経医療研究センター病院睡眠障害センター長の松井健太郎氏が解説する。

◆◆◆

不眠症にもタイプがある

 不眠症には、主に3つの種類があります。

(1) 入眠困難 床に入ってから寝付くまでの時間が30分を超えることが続く。

(2) 睡眠維持困難 夜中に目が覚めると、再び寝付くまで30分以上かかる。夜中にトイレに起きると、もう眠れないという人も当てはまります。何度か目が覚めてもすぐに寝られるなら、大丈夫。

(3) 早朝覚醒 起きるつもりの時刻より30分以上早く目が覚めてしまう場合を指します。

 入眠困難と睡眠維持困難にはそれぞれ適した薬があるのですが、早朝覚醒にはあまり適当な薬がありません。早朝に目が覚めないように長時間効果のある薬を使うと、昼間まで効き目が残ってしまうのです。

 では、不眠症と診断されたら、どんな睡眠薬を処方されるのでしょうか。睡眠薬には成分の違いがあるほか、効果を発揮する早さや長さによって、超短時間型、短時間型、中間型、長時間型という違いがあります。副作用の大小や現れ方も違います。処方された薬の特徴を患者の立場から知っておくことは、とても大切です。

 受診したのが睡眠外来でない場合、医師が不眠症のエキスパートであるとは限りません。優れた薬が新たに登場しているにもかかわらず、以前から処方している古い薬を「使い慣れているから」という理由で出し続けている場合もありえます。

 その薬が本当に自分に適しているのか、医師に尋ねても全く構いません。特に、初診でいきなり複数の睡眠薬や、抗うつ薬等も合わせて処方されたら、必ず説明を求めてください。私は初診で2種類以上の睡眠薬を処方することはありません。

睡眠薬の常識を変えた薬

 現在、医療機関で処方される睡眠薬の種類は、大きく分けて4つあります。身体に元々備わっている働きを促すのが「作動薬」、反対に働きを抑えたりブロックしたりするのが「拮抗薬」や「阻害薬」です。

 まずは、新しいタイプの画期的な薬から紹介しましょう。

(1) オレキシン受容体拮抗薬

 現在、最もお勧めできる薬です。オレキシンは覚醒状態を維持する神経伝達物質で、1990年代末に脳の中の食欲を司る部分で発見されましたが、その後、睡眠に深く関わる物質だと判明しました。昼間に突然寝てしまうナルコレプシーという病気の典型例では、オレキシンがまったく働いていません。満腹になると眠くなる理由の一つも、オレキシンの活動が鈍るため、と言われています。

 このオレキシンと受容体が結びつくのをブロックして、脳を覚醒状態から睡眠状態にするのが、オレキシン受容体拮抗薬です。寝付きやすくする作用と眠り続ける効果の両方に優れています。このタイプの薬の出現で、睡眠薬治療の常識がガラッと変わりました。

 この薬の特長は、副作用が少ないことです。転倒したり、せん妄(意識の混乱)などの副作用がほぼなく、飲むのをやめても、身体が落ち着かない、イライラする、動悸、頭痛、めまいといった離脱症状が出ないので、依存性も非常に低い。

 後で紹介する従来の「GABAA受容体作動薬」を長期間飲み続けて急にやめると、「反跳性不眠」といって、前よりも酷い不眠になる場合があります。超短時間で効くタイプの薬だと、次の日に一睡もできないことさえあります。オレキシン受容体拮抗薬だと、そうした離脱症状が出ません。

 安全性が高いので、メインの睡眠薬になっていくと思われます。ただし、従来の薬に比べると少ないのですが、翌日の眠気や頭痛、まれに悪夢を見る、脱力する、といった副作用がまったくないわけではありません。

 現在、2種類が使われています。スボレキサント(製品名・ベルソムラ。以下、カッコ内は製品名)は2014年に、世界初のオレキシン受容体拮抗薬として日本で発売されました。2020年に登場したレンボレキサント(デエビゴ)も、眠りに入る効果、眠りを維持する効果、ともに優秀です。安全性が高いので、専門外の医師でも処方しやすい薬と言えます。

本記事の全文(7,000字)は「文藝春秋 電子版」に掲載されています(松井健太郎「 睡眠薬は劇的に変わった 」)。

 

「文藝春秋 電子版」に掲載中の特集「睡眠は最高のアンチエイジング」シリーズには、下記の記事も掲載されています。

 

・ 7時間睡眠を取り戻す12のメソッド  柳沢正史(筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構機構長)

・ カラダは睡眠中に修復される  西多昌規(早稲田大学睡眠研究所所長)

・ 世界的睡眠研究者の熟睡法   上田泰己(東京大学大学院医学系研究科教授)

 

・ 睡眠薬は劇的に変わった  松井健太郎(国立精神・神経医療研究センター病院睡眠障害センター長)

 〈私の「不眠」解消法〉

・石原良純  父を亡くして急に眠れるようになった

・草笛光子  昼間に疲れておくこと、ウトウトは禁物

・由美かおる  お風呂のあとは何もしないで寝る

・伊藤俊幸  潜水艦の狭いベッドは妙に落ち着く
・畠山智之  選挙特番の重圧を乗り越えた2つの工夫
・中村親方  地方場所の必需品は高反発マットレスと…
・鈴木明子  不眠はフィギュアの演技に直結した

(松井 健太郎/文藝春秋 2024年9月号)

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