「AV作品4本に出演し約38万のギャラを…」“紀州のドン・ファン殺人公判”明かされた55歳年下妻・須藤早貴(28)の「AV出演の経緯」と「過去がバレた瞬間」
文春オンライン / 2024年9月13日 6時0分
初公判に出廷した須藤早貴被告=12日、和歌山地裁[イラスト・松元悠氏] ©時事通信
〈 《紀州のドン・ファン殺人公判》「バレずに殺せば正義 復讐代行」「覚醒剤 死亡」55歳年下妻・須藤早貴(28)が事件前後に検索していた“驚愕ワード”の数々 〉から続く
和歌山地裁で始まった「紀州のドン・ファン」こと野崎幸助氏(享年77)殺人事件の公判。9月12日の初公判では、殺人と覚醒剤取締法違反の罪に問われた55歳年下妻・須藤早貴被告(28)が、野崎氏と出会うまでの無軌道な生活にも焦点が当てられた。小誌の取材結果も交えながら、振り返っていきたい。
北海道札幌市で生まれた須藤は、地元の公立小中高を卒業。同級生らによれば、地味な印象だった須藤がガラリと印象を変えたのは、市内の美容専門学校に入学してからのことだったという。ブランド品で全身を固め、夜にサングラスをかけて闊歩する須藤の姿が目撃されるようになった。
当時、キャバクラで働いていた須藤は、店で知り合った男性から計約3000万円を騙し取っている。ドンファン殺人裁判が始まる前、須藤はこの男性に対する詐欺罪に問われ、懲役3年6カ月の実刑判決を受けた。
美容専門学校を卒業した須藤は2016年に上京。札幌時代から開設していた早貴のInstagramには、高級フレンチなどの食事、ライトアップされたナイトプール、ドバイをはじめ、海外旅行先の写真など、華やかな生活が次々とアップされていく。
初公判では、当時の“収入源”の実態が、こう明かされている。
「被告人は遅くとも平成28年(2016年)11月頃から、複数の高級デートクラブに登録し、活動していた。また、同年12月頃から、無店舗型性風俗特殊営業店派遣型、いわゆるデリバリーヘルスで接客していた」(検察の読み上げ内容)
「アダルトビデオに出演すればまとまった収入が得られる」
事情を知る風俗関係者は、かつて小誌にこう証言していた。
「須藤は、16年の冬頃から1年ほど都内のデートクラブに登録していた。源氏名は『愛音』。最上級クラスの分類で、男性会員が支払う紹介料は10万円だった。須藤は、客に外見や性格ではなくお金を求めた。典型的な“プロ愛人”でした。同時期に働き始めた高級デリヘルでは『ミキ』の源氏名で、客単価4万円を取っていた。店の取り分を引いても、1日6万円から8万円は稼いでいた計算になります」
だが、須藤はそれでもお金が足りなかったようだ。初公判で検察側はこう続ける。
「被告人は平成29年(2017年)3月31日、デリバリーヘルスで接客中、利用者に同店での収入が少ないと不満を漏らしたところ、利用者がアダルトビデオ関係者であったことから、アダルトビデオに出演すればまとまった収入が得られると言われた」
須藤は仕事内容や報酬について尋ね、後日、AVプロダクションの面接を受ける。そして4月12日付でAV女優としてのマネジメント契約に至ったのである。
AV撮影が行われたのは、同年の8月4日、8月22日、9月4日、9月10日。須藤は計4本のアダルトビデオに出演し、出演料は同年9月に20万6517円、10月に17万9580円が須藤の口座に振り込まれた。こうして計38万6097円を手にしたのだった。
一方で、須藤はこのAVプロダクションの系列のデリバリーヘルスでも働き始めていた。デリヘルの勤務期間は、同年5月1日から12月7日まで。辞めた時期は、知人を介して野崎氏と邂逅する時期と一致していた。
須藤は翌年2018年2月、野崎氏と「月100万円」の契約で“愛人婚”に至るが、入籍後も高額な手当をもらいながら東京で別居生活を続け、野崎氏が暮らす和歌山県田辺市の自宅には寄り付こうとしなかった。せっかちな野崎氏は業を煮やし、同年3月には離婚届を用意した。離婚の意思を知った須藤は、同年3月末からようやく田辺市で同居生活を始めたものの、野崎氏は周囲にこう愚痴を漏らしている。
「あの女はダメや。家のことを何もせん。やっぱり離婚や」
「AV出演の過去がバレてますます立場が悪くなると思ったのでは」
野崎氏は須藤を見限り、「ミス・ワールド・ジャパン」のファイナリストの一人に入れ上げ始めた。須藤の過去のAV出演歴が発覚したのは、そんな折、同年5月上旬のことだ。野崎氏の会社の元従業員が明かす。
「早貴が出演しているAV作品を、会社の若い社員がネットで見つけたんです。彼女はファッションモデルという触れ込みでしたから、経歴を欺いて社長(野崎氏)と結婚したことになります。AV出演の過去がバレて、ますます立場が悪くなると思ったのではないでしょうか」
事件を振り返る上で、この出来事が持つ意味は、決して小さくない。初公判では、須藤が55歳差の野崎氏と結婚したのち、友人らに「(夫である野崎氏の)自然死で遺産を得る」と話していたことが明かされた。だが、離婚が不可避な状況に追い込まれ、過去のAV出演も発覚した。思い描いていた身勝手な未来図は一変したのだ。
「早貴は『離婚するなら慰謝料をもらって東京に帰る、2億円くらい欲しい』と話していましたが、社長は『あの女には慰謝料30万円も払えば十分やろ』と言っていたので、それぞれの認識には大きな差があったことになります」(同前)
もとより、愛情ではなく金で野崎氏と婚姻関係を結んだ須藤。実は、野崎氏に離婚を切り出された前後から、「完全犯罪」「覚醒剤 死亡」など、のちの事件に繋がるような不穏なワードを何度も検索していたことが明らかになっている (#1) 。そして、AV出演歴が発覚して間もない5月24日、野崎氏は急性覚醒剤中毒死でこの世を去るのである。結婚からわずか105日後のことだった。
須藤の弁護人は、初公判の冒頭陳述で、裁判員席に向かってこう語りかけた。
「怪しいからやっているに違いない――、もしそう思って結論が決まってしまうなら、この裁判をやる意味はない。そもそも本当に事件なのか。本当に被告人が人を殺す量の覚醒剤を飲ませることができるのか。検察側がこの法廷で立証できたのか考えて欲しい」
検察側は、長い公判を通して、これが殺人事件であり、犯人が須藤であることを立証していくことになる。
(「週刊文春」編集部/週刊文春Webオリジナル)
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