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「そういう君に、私は懸けてるよ」“きょう七回忌”樹木希林の“最後の愛弟子”吉村界人(31)が受け取った“人生のメッセージ”「『地面師!』って叫ばれたことはありましたね(笑)」

文春オンライン / 2024年9月15日 11時0分

「そういう君に、私は懸けてるよ」“きょう七回忌”樹木希林の“最後の愛弟子”吉村界人(31)が受け取った“人生のメッセージ”「『地面師!』って叫ばれたことはありましたね(笑)」

吉村界人(31)(事務所ホームページより)

 2018年に亡くなった後も、多くの人々に愛され続ける女優の樹木希林。2018年の映画『モリのいる場所』で共演し樹木さんの“最後の愛弟子”とも言われるのが、俳優・吉村界人(31)だ。ネットフリックスドラマ『地面師たち』の演技も注目を集める吉村に、樹木さんの七回忌に寄せて、秘話を明かしてもらった。

◆◆◆

最初の印象は「品のいいご婦人」

――最初に樹木さんにお会いしたのは、映画『モリのいる場所』の撮影現場だったそうですね。樹木さんは熊谷守一の妻を、吉村さんは熊谷守一に密着するカメラマンの助手を演じました。

 撮影前、最初にご挨拶した時の印象は、「品のいいご婦人」。大御所俳優さんとご一緒する現場はほぼ初めてだったので、緊張しました。樹木さんが現場にいると、それだけで“そこにいる力”みたいなものを感じました。経験や年齢だけではない説得力というか……。とにかくすごくて、「どうなってるんだろう?」と思いました。

――年齢も離れているお二人。どんなきっかけで仲良くなったんですか?

 撮影の合間に樹木さんが、「あなたジュリー(沢田研二)に似てるね」と声を掛けてくださったんです。僕はジュリーさんの曲はあまり知らなくて、「そうなんだ」という感じでしたが、樹木さんは「ちょっと話そうよ、話そうよ」と。そこからですね。

――そうだったんですね。

 実は僕、その撮影の初日のテストで台本には書かれていないことにトライしたんですが、それで共演している俳優さんを怒らせてしまい、撮影が止まってしまったんです。スタッフも他の共演者の方も誰も何も言わない気まずい雰囲気の中、樹木さんだけが隅の方でケタケタ笑っていたんです。目があって、僕もそっちのほうへ歩いていって、「まずかったですよね」と言うと、「界人くん、トライはいいけど、あれはまずかったね」「あれは私も助けられません」って(笑)。

――そういう時は、声を掛けてくれるだけでもありがたいですね。

 はい。樹木さんは落ち込む僕を見て、「まあちょっとお菓子でも食べようよ」って誘ってくださって。「まあでも、いろんな俳優がいるわよね」というところから、いろいろなお話を聞かせていただきました。樹木さんが若い頃の話で、「松田優作さんの舞台を観に行った時、あんな汚い格好して売れるわけないと思ったけど売れたわね、人生何が起こるかわからないね」とか、最近会った若手俳優について、「姿勢がカッコ悪いのよ」とか歯に衣(きぬ)着せぬぶっちゃけ話を(笑)。

――そんな樹木さんを吉村さんはどう?

「変わった人だな~」みたいな感じで(笑)。

――樹木さんからお芝居についてのアドバイスはあったんですか?

 いや、樹木さんは一貫して「お芝居のうまい下手や、役作りっていうのが、私は全然分かんない」と仰っていました。「生きてきたものが出るだけの話だから」と。僕もそれを聞いて、樹木さんが年齢とキャリアを重ねて生きてきたものがお芝居に現れている、そのことにすごく憧れるな、と思いました。かといってそれを真似してやろうとは微塵も思っていないんですが。真似できるものでもないですしね。

――「生きてきたものが出るだけ」というのは、逆に難しいような。

 そうですね。「失敗してもとにかく人生は続いちゃうからね」みたいな感じだと思うんです、樹木さんが思ってることって。「うまくいこうが失敗しようが、結局人生は続いちゃうからあんまり頑張りすぎないで! でも、へこたれないで」みたいなメッセージを受け取った気がします。

「どういう子がタイプなの?」樹木希林と恋愛話になり...

――演技や芸能界の他にはどんなお話をしたんですか?

 恋愛の話を(笑)。本当に、大学生が居酒屋で話すような感じで、「あなた、好きな子がいるの?」とか「どういう子がタイプなの?」とか……。当時、樹木さんが一緒に仕事した女優さんがいて、「あの子が界人くんのことが好きって言ってたわよって、そう伝えてねって言われたから、あなたに今伝えたからね」と(笑)。僕はその女優さんに会ったことなかったし、今も会ったことないんですが、「ああいう子はどうなの?」と聞かれたり(笑)。樹木さんのお話もしてくれて、ご主人の内田裕也さんのことを「ああいうめちゃくちゃな人が好きなのよね」と言っていましたね。

――貴重な時間ですね。撮影自体は何日くらい?

 3日くらいだったと思います。その後、打ち上げ、舞台挨拶でもお会いしました。

――打ち上げではどんなお話を?

 打ち上げは帝国ホテルで、僕はその時初めて行ったんですが、ああいうところってめちゃくちゃ広いじゃないですか。料理にしたって大きい皿にちょっとご飯が乗ってて(笑)。打ち上げ会場もそんな感じに広くて、やっぱり主演の山崎努さんと樹木さんは大御所ですし、みんな近寄りがたく遠巻きに見ていて。みんなが、「あそこに行けるの吉村くんしかいないと思う!」と言うので、「はい!」って樹木さんの元に行って声を掛けて(笑)。樹木さんも快く、「ちょっと座って話そうよ」って。その時に、「ちょっと私、今度バラエティーに出なきゃいけないんだけど、あなた一緒に出なさいよ!」と言われ、後日『ぴったんこ・カンカン』に出させていただきました。

――番組内では樹木さんが吉村さんを「雰囲気がいいでしょ」と紹介していて、吉村さんのことをとてもかわいがっている感じが伝わってきました。

 いやー、なんででしょうね?(笑) 完成披露舞台挨拶の時にお会いしているのですが、僕の格好を見た樹木さんは開口一番、「あなた、スタイリストとかヘアメイクとかいるのね! なんかすごい偉そうだね~」と(笑)。「あ、すみません」って言うと、「いやいや、いいのよ、いいのよ」って笑っていました。もちろん、樹木さんは本当にそう思っているわけじゃなくて、僕をちょっと弄りたかっただけだと思うんです。その樹木さんのユーモアが心地いいんです。

――樹木さんが亡くなったのは、2018年9月15日でした。映画の公開4ヵ月後の訃報には驚きましたか?

 そうですね。驚きました。撮影は2017年頃だったと思うのですが、当時の樹木さんは本当に元気だったんです。初日が終わった後には、「今日、一人で高速乗ってきてさ、もう後ろからめちゃくちゃ煽られて大変だったのよ」と言って愛車のミニバンに乗って、「じゃあ、私また運転して帰るわ。またね」って。当時は東京と千葉の間くらいの場所で撮影をしていたんですが、樹木さんは毎日一人で高速を運転して現場に来ていたようです。本当に元気な人でした。

樹木さんは「そういう君に、私は懸けてるよ」と...

――樹木さんは吉村さんに、「君に懸けてるから、私は」ということも仰っていた。

 時間が経ってしまって、どんどん記憶が美化されたり、逆にそんなこと言ってたっけな?と思えてきたり……。正直に言うと、本当のところはうろ覚えなんです。でも、「そういう君に、私は懸けてるよ」、「そのままでいてね」みたいな言葉をいただきました。

――どういう風に受け取りましたか?

 うーん、当時は今よりももっと自分を客観視できていなかったですし、「そうなんだ、樹木さんはそう思ってくれてるのか」みたいな。樹木さんの言う、「そのまま」っていうのは結局どういうことなのかな?と、今も考えています。

樹木希林の“最後の愛弟子”とよばれて

――樹木さんが期待を寄せていたことから、“最後の愛弟子”とも言われています。

 いや、弟子っていうわけでもないしな~とは思うんですが(笑)、でも光栄だと思っています。あんまり恥ずかしいことできないな、とも。かといって別に僕は樹木さんの家族でもないし、友達っていうのもおこがましいから、何かを背負ってるつもりはないです。

――樹木さんと過ごす中で、触発されたことはありますか?

 この時代、言いたいことを言うのって、楽じゃないじゃないですか。でも、樹木さんを見ていたら、「自分で責任を持てるなら、言いたいことを言ってもいいのかな?」と思えてきました。今こういう時代って、冗談のつもりで言ったことが通じないとか、みんなと違う意見を言うとそっぽを向かれるとか、そういうこともあるじゃないですか。僕はそんな度胸もないし、人と違ったことをバンバン言いたいというわけではないけれど、今こういう時代だからこそ、樹木さんのような考え方の人がいてもいいんじゃないかなって。

――みんながみんな同じ方向を向くのではなく。

 責任を取れる範囲なら、「右向け、右」に従ってばかりじゃなく、左を見たり、上を見たり下を見たりしている方が面白いんじゃないかって思います。そういえば樹木さんに、「俳優をやっていきたいなら、不動産系を固めた方がいいわよ」って言われたんです。「自分がやりたいことをやって、言いたいこと言うためにも、お金で苦労しちゃいけない。だから不動産をまずは手に入れなさい」と。樹木さんは家に帰ると自分でお金の計算もするらしく、「それが結構楽しいんだよね」とも言っていました。

――なるほど。

 あとは、樹木さんは「一人でいなさい」みたいなことを言っていた気がしますね。全部満たされてる人が何をやっても、あんまり心って動かない。売れて評価されれば必然的に満たされていくけれど、表現者である以上、そこから自分で遠ざからないといけないと……。でも、こうやって亡くなった後に、僕が樹木さんの言葉を真剣に考えてるのって、何て言うのかな、恥ずかしくなるというか……。多分、樹木さんは恥ずかしがり屋だし、僕がこんなことを言っているのを見たら、「いや別に何も考えてないんだよね」って言われちゃう気がします。「うるさいわね~、そんな買いかぶらないでくれる?」って(笑)。でも、そういう樹木さんが愛くるしいな、と思います。

コンビニのレジで後ろから「地面師!」と叫ばれ...

――吉村さんは今話題のネットフリックスドラマ『地面師たち』に出演されて、ホスト役の演技が話題になっています。

 ありがとうございます。僕自身は街で、「あ、吉村さん……」と言われることもなく変わらない日常を送っているんですが、コンビニに行ってレジに並んでる時に、後ろの人から「地面師!」って叫ばれたことはありましたね(笑)。

――そうなんですね(笑)。注目が集まる中、今後の目標があったら教えてください。

 この時代でも、自分が、「こういう生き方いいよね」って思えるような俳優でいたいなと思います。僕と同じ93年生まれの俳優さんは活躍している方が多くて、「ゴールデンエイジ」とか言われてますけど、「売れてる人がたくさんいる世代がすごいのかな」なんて思ったりもします。みんなが欲しいもの、例えばお金とか地位とか、フォロワー数とか、そういうのは僕も欲しい。欲しいんですけど、同じぐらい「僕は僕で」っていうのを大事にやっていきたいと思います。俳優は続けていきたいけれど、自分らしくなくなったらちょっと難しいのかなと思うので。死ぬまで自分らしく、自分の言葉で生きたいと思っています。

(「週刊文春」編集部/週刊文春Webオリジナル)

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