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政策の本は0冊、バックは菅&竹中コンビ…「何を考えているかわからない」小泉進次郎(43)を時の人にした“下がり切ったハードル”と“華麗な切り返し”

文春オンライン / 2024年9月17日 6時0分

政策の本は0冊、バックは菅&竹中コンビ…「何を考えているかわからない」小泉進次郎(43)を時の人にした“下がり切ったハードル”と“華麗な切り返し”

小泉進次郎元環境大臣 ©時事通信社

 自民党の総裁選がスタート。今回は有力候補の一人といわれる小泉進次郎氏について考えてみたい。

 まず初当選から現在までの世論の評価を振り返ると面白い。まるで波のような動きなのだ。

 進次郎氏は福島の海の安全をアピールするためにサーフィン姿を披露したら「最近なんだか冴えなかった進次郎人気が再燃することとなった」と書かれたこともあった(「週刊現代」2023年9月23日号)。これなどは波と進次郎氏の象徴的な一件ではなかったか。

 評価が上下するように見えるのは世論にもいろいろあるからだ。新聞社等がやる世論調査とSNSなどのネットの反応では進次郎氏は別キャラになる。この状況は進次郎氏自身も作り出した。

 2010年代になるとツイッターで積極的に発言する政治家も増えたが、進次郎氏は使わない選択をしていた。せいぜいがゆるいブログのみ。熱心な支援者も獲得できる代わりにツッコミも容赦ないツイッターを避けていたように見えた(その後2020年10月に開設、初ツイートは21年4月)。

 では進次郎氏はそのあいだ何を相手にしていたのか。全国をまわり、ご当地の方言を入れたり名産物を褒めたりして喝采を浴びていた。演説の仕上げは自民党への叱咤だ。父親から受け継いだ伝統芸である。当時の選挙特番は進次郎氏に密着して「小泉人気」を率先して盛り上げていた。

 総理への登竜門といわれる自民党青年局の局長を務めていたのもこの頃。東北の復興支援活動にも力を入れてきた。進次郎氏はネット圏外で絶大な支持を集め、いつしか首相にしたいアンケートで上位になってゆく。

「ちょっとおかしいと思いますよ」進次郎氏が自民党に物申したと思えば...

 進次郎氏の立ち振る舞い方のからくり、巧妙さが露骨に見えた瞬間もあった。

 演説中の安倍晋三首相の呼びかけで自民議員が一斉に起立・拍手したという件があった(2016年)。あのとき進次郎氏はマスコミの前で「あれはない。ちょっとおかしいと思いますよ。自然じゃない」とコメントした。しかし驚いたのは次の言葉だった。

「僕もびっくりしてつい立っちゃった」。

 テレビカメラの前では「あれはおかしい」と自民党を批判してみせるが、自分も起立していたのだ。それをユーモアのように言ってみせる。うまい、ズルい。

 しかしネットのツッコミが届かない世界でうっとりしすぎたせいか、

《よく聞くと意味が通らない発言が目立つとツイッター上で話題になっている。》(2019年9月23日 東京新聞)という事態にもなった。

 きっかけは福島の汚染土の最終処分場について問われた際に「三十年後の自分は何歳か、発災直後から考えていた。健康でいられたら(県民との)その三十年後の約束を守れるかどうかの節目を見届けることができる政治家だと思う」と答えたこと。

「何を考え、どんな価値観を持っているかわからない」小泉進次郎の“怖いところ”

 これが「小泉ポエム」として面白がられる。そのあとツイッターでは進次郎氏が「言いそうなこと」の投稿が相次いだ。ネタ化することに気づいたのである。

 進次郎氏はその後もネタを投下する。環境相時代には政府が2030年度の温室効果ガス排出を46%(13年度比)削減する目標を定めたことを受けて、46%について「くっきりとした姿が浮かんできたわけではない。おぼろげながら浮かんできた」などと話した(TBS系「NEWS23」)。気候変動問題をめぐって「セクシー」と述べたときはすぐに迷言扱いとなった。

 しかし「進次郎構文」などとネットで遊ばれて笑いや批判を集めることはマイナスばかりではない。

 ハードルが低くなったゆえに見直されることもあるからだ。福島でのサーフィンもそうだし、先日の出馬記者会見で「知的レベルが低い」と侮辱的なことを記者に言われたときに笑顔で切り返したこともそう。「進次郎、やるじゃないか」の声が出る。この構造は今後もキーになるはずなので覚えておきたい。

 進次郎氏を見ていると、自分は“二枚目俳優”と思っているがネットでは妙に面白がられて“三枚目”扱い、しかしイジられ尽くした上でのバラエティー番組での振る舞いで「やっぱり男前だ」と人気が上がるタレントに似ている。政策への評価が揺れるというより言動へ注目のみでここまで来た。

 怖いこともある。実は進次郎氏が何を考え、どんな価値観を持っているか多くの国民は知らずにきた。政策をまとめた本も出版していない。首相候補と言われてきた割には異例すぎるのだ。どんな政治家かわからないのも当然だ。

 そして今回、総裁選に出馬。進次郎氏のバックにいるのは菅義偉前首相である。あらためて考えたいのは「菅-小泉」の周辺図。菅氏は2005年、小泉純一郎政権で竹中平蔵総務相のもとで副大臣に就任した。

《菅の近親者たちは必ずと言っていいほど、政治家として菅が飛躍した転機の一つとして、この総務副大臣経験を挙げる。簡単にいえば、郵政民営化は小泉が方向を決め、竹中が指示し、菅が仕上げた。》(「総理の影 菅義偉の正体」森功)

 小泉純一郎、竹中平蔵、菅義偉のつながり。その特徴はなんだろう?

《菅氏は首相就任後の所信表明演説で「自分でできることは、まず自分でやってみる」と「自助」の重要性を説いた。当時、問題視されたのが「企業優遇の規制緩和」「庶民は自己責任」に傾く新自由主義との共通点。その新自由主義を日本で広めた代表格が慶応大名誉教授の竹中平蔵氏。》(東京新聞9月13日)

 今回の総裁選で進次郎氏が政策として挙げ、早くも論議になっているのが「労働者に対する解雇規制の緩和」だ。進次郎氏は「整理解雇の4要件」の見直しに言及。

《厚労省幹部は「4要件を法律に書き込んだ上で、リスキリングなどの措置を併記するのだろうか。簡単にクビを切るような方向にいきかねない」とやや困惑気味だ。》(毎日新聞9月13日)

進次郎氏を「顔」にして裏金問題を忘れさせようとする「相殺選」なのだ

 進次郎政権になると菅&竹中的なものが再びやってくるのか? 見かけは進次郎だが中身は菅義偉という可能性。傀儡という見方を跳ね返し「進次郎なかなかやるじゃないか」の声が出ることはあるのか?

 最後に興味深い調査を見て終わろう。9月16日に発表された読売新聞による自民党の党員・党友への電話調査と、国会議員の支持動向調査だ。「高市・石破・小泉氏が競る、決選投票の公算大きく」となっている。

 進次郎氏は「選挙の顔」として期待を集め、議員支持ではトップに立っているが「若さと政治経験の乏しさを不安視する向きもあり」党員・党友の支持は高市、石破両氏に後れを取っているという。

 まったく皮肉ではないか。「世論」(党員)は進次郎氏を求めるだろうと議員人気は高いが、肝心の党員は不安視しているのだ。進次郎氏の評価は「波」のように揺れ動いていると冒頭に書いたがここでも!

 結局、総理総裁としては時期尚早なのかもしれないが、そんな状態の候補が有力なのは進次郎氏を「顔」にすれば裏金問題を国民は忘れる! という自民議員の切迫した事情があらためて見える。総裁選ではなく「相殺選」なのだ。もちろん、誰がなっても裏金のことを忘れることはないと思うが。

(プチ鹿島)

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