一途な人と浮気をしてしまう人は食の好みが違った!? 「辛いのも甘いのも選べない……！」

　「院内でダブル不倫なんて勘弁してほしいよ」

　医者と看護師のダブル不倫を目撃してしまった女性看護師はこうぼやく。美味しい手料理を作ってくれる同棲彼氏がいる自分には関係ない、と言いたげだが、その彼氏とは結婚の話をしてから帰宅時間も気持ちもすれ違い気味……。

　決して彼のことが嫌いになったわけではない。だけれども、さわやかイケメンの後輩にご飯に誘われた時、昨晩食べた蒸し鶏と揚げ鶏を思い出して彼女はOKをしてしまう。

「甘いのとサッパリと、両方あるってのが幸せなんだな!!」

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　『 にゃーの恩返し 』の主人公で、すれ違いがちな同棲カップルこと、シュウくんとアヤちゃん。2人は道端で弱っていた猫のミケを助けたことをきっかけに恋人同士となり同棲を始める。けれど、仕事や生活リズムの違いで一緒にご飯を食べることはおろか、顔を合わせてじっくり会話をする機会もない……。そこで活躍するのが飼い猫のミケなのである。

　ミケは2人が家を出るたびに人間に変身。冷蔵庫の残り物やスーパーのセール品を駆使して主菜・副菜とバランスの良い献立を組み、2人が戻ってくる前にごはんを完成させる。「トリナスポン酢とニンニクキュウリ」「豆ご飯と揚げ出し豆腐」といった疲れた体に沁みる美味しいご飯の数々を作ってきた。シュウくんとアヤちゃんはミケが作ったとはつゆ知らず、お互いに相手が作ったと勘違いしながら、ありがたくいただくのだ。

　どんなにすれ違っていても、美味しいご飯を共有することで相手のことを想い、感謝の気持ちが芽生える……。つまり、美味しいご飯で2人の仲を取り持つ。それがミケ流の恩返しなのだ。

些細ないことから感じる、深いすれ違い

　いつバレるのかとハラハラしつつも、食の尊さを実感する非常に温かな作品だが、 1巻 からずっと気になっていたことがある。それは同じご飯を食べているのに、2人とも感動するポイントやアレンジが絶妙に異なるという点だ。

　例えば、バランスの良い定食メニューを好むシュウくんに対して、晩酌が大好きなアヤちゃん。 1巻 ではシュウくんが「ニンニクキュウリ」のニンニクの濃さに戸惑うが、アヤちゃんはうまい！ と絶賛する。その他にも、シュウくんは完成している料理をそのまま堪能するけれど、アヤちゃんは料理にネギを散らすなどちょい足しをすることが多い。些細なことかもしれないけれど、同じものを楽しんでいるようで実は違うという、深いすれ違いを感じるのだ。

　 2巻 では「ロールキャベツとナポリタン」「サバ味噌とわかめとキュウリの甘酢和え」など、ミケのレシピがさらにパワーアップする一方で、そのすれ違いがより顕著になっていく。特に「海南鶏飯」では、ミケが蒸し鶏と揚げ鶏に加え、ジンジャーソース、スイートチリソース、ダークソイソースと本場さながらの一皿を振る舞うのだが……。

　色々な組み合わせが楽しめる中で一つの味わいを楽しめることに幸せを感じるアヤちゃん。この何気ない食べる喜びの違いが、2人の恋愛観のすれ違いに繋がっていくとは誰が想像しただろうか。

　美味しいだけじゃない、2人の献立から香り立つちょっぴり不穏なスパイスをぜひ堪能してみてほしい。

（ちゃんめい／文春コミック）