5日間の断食のリバウンドで64キロに…15歳でモデルになった藤井サチ(27)が明かす、摂食障害で治療した過去「『痩せている=美しい』と…」
文春オンライン / 2024年9月28日 11時0分
藤井サチさん
〈 「『分かってないな』とか『バカ』ってコメントが…」朝生出演の“社会派モデル“・藤井サチ(27)が明かす、政治的な発言に悩んだ過去 〉から続く
今年、ファッション誌『ViVi』の専属モデルを卒業し、タレント・コメンテーターなど、活躍の場を広げている藤井サチさん(27)。
駆け出しの頃に摂食障害になった経験やセレブな家庭環境についてなど、話を聞いた。(全2回の2回目/ 最初から読む )
◆◆◆
間取り「16LLDDKK」の豪邸が実家
――家の間取りが「16LLDDKK」という情報を見たのですが、これは本当ですか。
藤井サチさん(以降、藤井) 本当です。実家の間取りですね。
――豪邸ですよね。
藤井 応接間、リビング、ダイニング、図書室……あと何だっけ、あ、子どもたちのそれぞれの部屋に和室、書斎とか、そんな感じですね。自分としてはすごいって実感はないんですけど。
――部屋数が多いことで苦労された点は。
藤井 掃除も大変ですけど、電気代がすごかったです。それって家賃じゃん、という電気代になっていました。
――友だちの家に行ったときなどに、違いを感じることはなかった?
藤井 小中高は私の家に友だちが来ることの方が多かったこともありますし、お友だちの家に行っても、子どものときってフラットというか、「自分ちより狭いな/広いな」とかって思うこともなかったんですよね。
セレブだけど欲しいものは親を説得する「プレゼン」が必須
――いわゆるセレブなご家庭かと思うのですが、ではあまり自覚はなく?
藤井 それがまったくなかったんですよね。自分が恵まれた環境にあったと気づいたのは、それこそ20歳くらいで。事務所に入るとき、「どんな強みがあるの?」と聞かれていろいろ話したら、「いいとこの家の子なんだ」と言われて、「そうだったのかな?」と。
むしろ、プレゼンで勝ち取らないとお金ももらえなかったですし。
――プレゼンとは?
藤井 買ってほしいものがあると、それがなんで自分に必要なのか、親を説得するプレゼンが必要だったんです。
たとえば、任天堂Wiiがめちゃくちゃ流行っていた小学生のとき、「みんなが持ってるから欲しい」と言ったら買ってもらえなくて。それで、欲しい理由として、「好きな男の子がいて、その子と話す話題が欲しいからWiiが欲しい」と説明したら買ってくれたことがありました。
つまり、“自分軸”の明確な理由がなければ、どんなお願いも却下されてしまうんです。
――その他にプレゼンで勝ち取ったものは?
藤井 もう本当に全部ですよ。それこそ定期券を買うのもプレゼンです。
当時、家から電車で1時間半ぐらいかかる遠方の学校に通ってたんですけど、いろんな行き方があったので、「この線を使ってここで乗り換えれば◯◯線を使うより安くなるから、これで行きます」と、定期代の値段の根拠をプレゼンして、お金をもらっていました。
海外旅行はできたけれど「基本的には厳しく育てられてきた」
――プレゼン方式はご両親の教育方針だったのでしょうか。
藤井 主にお父さんですね。制服も、「なんでこの色のこれがいいの?」とか、「それならお姉ちゃんのおさがりをもらえるんじゃないか?」と言われて、そこを全部反論してやっと新しい制服を買ってもらうような感じでした。
――裕福な家庭ゆえに、あえてお金に関して厳しかった?
藤井 代々続く名家とか資産家というわけじゃなく、おじいちゃんおばあちゃんも田舎の人で、お父さんが一代で頑張って築いたキャリアだったので、父自身、“セレブ”とか“お金持ち”とか、そういう感覚はないんだと思うんです。
たしかに海外旅行はよく連れて行ってもらっていろんな経験はさせてもらいましたが、基本的には厳しく育てられてきたと思います。
――子ども側からするとなかなか大変ですよね。
藤井 「なんで毎回プレゼンしなきゃいけないの?」と、ずっと思ってました。それと、放任主義でもあって、何事に関しても「自分で責任がとれるなら自由にやりな」というスタンスだったので、それもプレッシャーでしたね。
――「放任主義」とは、具体的にはどんなものでしたか。
藤井 学校でスキー教室に行くときも全部自分で用意しなくちゃいけなくて、ものすごく大変だったのを覚えてます。自分で荷造りして、スキー道具は持ってないからレンタルの申請をしました。すごく大変でしたけど、おかげで今もパッキングは速いですね(笑)。
モデルを始めた15歳から「お小遣いなし、確定申告も自分で」
――サイゼリヤみたいなチェーン店に行くこととかありましたか。
藤井 ありました。中学生のとき、初めてデートで行ったのがサイゼでした。学生のときはめっちゃ行ってましたよ。
――お小遣いはあった?
藤井 15歳でモデルの仕事を始めてからはもらってないです。親から通帳をポンって渡されて、自分でやりくりしなさい、と。
当時はやりくりも下手くそだったので、「今月めっちゃ使っちゃったけど、来月のお給料でなんとかしなきゃ……」みたいな感じで、全然うまくできませんでした(笑)。
――では15歳から確定申告もご自分で?
藤井 やってました。今はほとんど税理士さんにお願いしちゃってますけど、それでも、Excelに領収書の金額とか打ち込んで管理してますね。
モデルは体力勝負「サチボディ」を整える日々
――モデルさんというとキラキラしたイメージがありますが、日々の経費精算だけでなく、体型・体調管理も大変ですよね。
藤井 それはやっぱり厳しいですよね。正直、肉体労働だと思います。朝は4時半とかに起きて、そこから夕方まで1日50回着替えたりとかするので、体力は本当に必要です。
あとは爪とか歯とか肌とか、本当に細かいところまで見えるから、常にコンディションを整えておくっていうのは基本中の基本。いつでも水着になれるように、みたいな感覚です。
――藤井さんの体作りは「サチボディ」と言われ、憧れの的になっています。
藤井 ただ、モデルを始めた直後は、「もっと痩せないといけないのかな?」と、いろんなことを考えすぎて極端なダイエットに走ってしまって。
――極端なダイエットとは、どんなものを?
藤井 5日間水だけとか、もう断食ですよね。そのときはリバウンドで12キロくらい太って、64キロくらいまでいってしまって。編集部から「このままだと撮影できなくなるかも」と言われてしまうほどでした。
で、焦ってまた断食して一瞬は痩せるんですけど、爆発して食べてすぐ太る……みたいな悪循環ですよね。
「痩せている=美しい」という刷り込みで摂食障害に
――暴食してしまったときは何を食べていた?
藤井 キットカットのファミリーパックを一気に2袋食べるとか、そういう感じです。
――そのとき、美味しいと感じている?
藤井 味とかじゃないんですよね。自分を痛めつける感覚で、自傷行為みたいなものだったと思います。私は拒食の方ではなく過食に走ったので生理が止まるといったことはなかったですが、結局、摂食障害の診断を受けて19歳頃まで治療をしていました。
――そもそも、痩せたいと思った理由は?
藤井 痩せないとモデルとして大成できないのではないかと、勝手に思い込んでいました。今思えば、まったく痩せる必要はなかったと思うんですけど。
――体重や体型に問題があったわけではなかった?
藤井 まったくなかったんですけど、雑誌や広告から「痩せている=美しい」というメッセージを受け取っていて、刷り込みをされていたんだと思います。
生きづらさは資本主義や政治が関係した“呪い”だった
――最近では「プラスサイズモデル」も登場し、社会の変化も大きいです。
藤井 10年くらい前までは「美」の基準が画一的で、そこから外れることはダメなことだと思っていましたが、今では、ヴィクトリア・シークレットのモデルも多様な人種や体型の方が登場していますよね。
「痩せなきゃ」という生きづらさは、私個人のせいというより、資本主義や政治が関係した“呪い”だったんだと、最近気付いたところです。
――モデルという仕事では、そういった“呪い”と距離を置くことは難しくないですか。
藤井 ルッキズム至上主義といえる面もあるので、苦しさを感じたことはあります。ただ、自分が使う言葉を変えることはできると思っていて。
たとえば、「このパンツは脚が長く見える」ではなく、「このパンツはより脚がきれいに見える」と言うようにしていて。つまり、「脚が長い=良いこと」という価値観を押しつけるのではなく、「そのままのあなたも素敵だけど、よりきれいになるよ」という、個人を尊重する発信をするようにしています。
――これまでの経験から、ダイエット相談もよくありますか。
藤井 「どうしたら痩せられますか?」とDMがよくきてたんですけど、そういうときは、「どうして痩せたいんですか?」って逆に質問していて。
たとえば痩せたい理由が「モテたい」じゃなくて、「どうしてもこのワンピースが着たい」みたいな、自分自身に目標の矢印が向いてるか、自分軸で考えているかが大事だと思うので、そこは発信するようにしています。
今の時代は弱みもどんどんさらけ出したほうがいい
――今年、約7年間務めた『ViVi』専属モデルを卒業されました。
藤井 両親に自分が表紙になった雑誌を見せたら、「嬉しいし素晴らしいけど、これがどう世の中の役に立つか考え続けてね」という反応だったんです。モデルを始めるときも、父から「社会に良い影響を与えられる人になってほしい」と、ぼそっと言われていました。
今の時代は自分が弱みだと思っていることをどんどんさらけ出したほうが、結局自分にとっても、周りの人にとっても良いことが多いと思っていて。私も、摂食障害になったからこそ自分の体と向き合えたし、食育インストラクターの資格も取ったので、結果オーライなんです。
写真=深野未季/文藝春秋
(小泉 なつみ)
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