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「帰宅したら、家の中が血だらけになってた」“うつ病の母”が度重なる自殺未遂の末に自死…上智卒の筋トレコスプレイヤー(27)が語る、“母親の死後”に抱いた複雑な思い

文春オンライン / 2024年10月5日 11時0分

「帰宅したら、家の中が血だらけになってた」“うつ病の母”が度重なる自殺未遂の末に自死…上智卒の筋トレコスプレイヤー(27)が語る、“母親の死後”に抱いた複雑な思い

コスプレイヤー、俳優として活動する桃戸ももさん ©文藝春秋/三宅史郎

〈 「私が大学1年のとき、母が自殺で亡くなった」「うつ病と更年期が重なって…」上智卒の筋トレコスプレイヤー(27)が明かす、“優しい母親”が自ら命を絶った経緯 〉から続く

 コスプレイヤー、俳優として活動し、トレーニーとしてベストボディ・ジャパン2019日本大会ベスト4の成績も残す桃戸もも(27)。

 うつ病だった母を亡くしている彼女に、ヤングケアラーだった日々、バイトの最中に知らされた母の死などについて、話を聞いた。(全2回の2回目/ 1回目 から続く)

◆◆◆

大学に入ってから、母親は5回以上自殺未遂をしていた

――お母さんは、リストカットをしたり、線路のそばに立っていたとのことですが、頻繁にそうした行動を?

桃戸もも(以下、桃戸) 自殺未遂は大学に入ってからで、5回以上あったんじゃないかな。リストカットのときは、家に帰ったら、そこらじゅう血だらけで「なんだ、これ」って驚いちゃって。そうしたら母が包丁で手首を切って、父が病院に連れて行ってたんですね。

 母はうつ病で病院に通っていたので、よく付き添っていたし、自分の会社と家が近いので母の様子を見にちょくちょく家に戻ってたんですよ。で、手首を切った状態の母を見つけて。

――桃戸さんも、お母さんの動向を注意していたのですか。

桃戸 様子を見るというか、母をひとりにできなかったんです。私や父がいないと、家出しちゃうし、死のうとするので。

――目の前で、なにかするということは。

桃戸 私の前ではなかったです。ひとりのときに死のうとするんです。

母は料理ができなくなってしまった

――家事もできなくなったと、おっしゃってましたが。

桃戸 ご飯を食べたり、お風呂に入ったり、自分のことはできるんですけど、料理とかはできなくて。だから、父が買ってきてましたね。私が作ってもよかったんですけど、それによって母が「私は必要ないんだ」って考えて自分を責めちゃうので、毎週何曜日にはこれにするって献立を決めて作ってもらうようにしてました。

 私たちが食べられなくて困るのではなくて、母が自分でなにかをできるんだって感じてもらわないといけなかったんですね。

――大学に通っていたわけですから、体力的にハードだったのでは。

桃戸 塾講師のバイトもしてました。塾だと、終わりが早いんで。だから、あの頃は朝起きて、大学に行って、15時から16時ぐらいに大学が終わるんで、そこから塾のバイト。塾で2限くらい教えたら、家に帰るっていうのが、1日の基本的なスケジュールでしたね。

警察から父に連絡が入り…母の死を知ったときの心境

――お母さんが亡くなられたのは、大学1年のいつごろですか。

桃戸 9月でした。塾でバイトしてる最中に、父から電話が来て知らされて。母は外出していて、身分証などを持った状態で亡くなっていたので、それを見た警察から父に連絡が入ったんです。それで父と一緒に、遺体の確認をしに警察署に行きました。

――5回以上自殺未遂していたとのことですが、そのうえで亡くなられると、ショックを受ける以前にどこか死を納得してしまうものなのでしょうか。

桃戸 そういう感覚でしたね。以前とは違う母の姿をずっと見てるほうが辛くて、ホッとしたじゃないですけど「ああ、そうなんだ」っていう。覚悟してたわけじゃないですけど、そんなに悲しいという感情でもなかったし、ひどく驚いたわけでもなかったかな。

 ほんと「ああ、そうなんだ」という、普通に事実を受け入れるテンションだったと思います。

――お父さんの様子は。

桃戸 父はすごい泣いてました。

母が亡くなってから、ストレスで太ってしまった理由

――その後、桃戸さんご自身はストレスで太ったそうですけど。

桃戸 母が亡くなってから太りましたね。1年生の後半から2年生の前半にかけて、1年で太ってきたっていう。父が悲しんでる姿が、ストレスになったんですよ。それで家にいるのが辛くなって、とにかく友だちと外食ばかりしていたんです。好きなものを好きなだけ食べてたら、当たり前ですけど太っちゃって。10kgぐらいオーバーしてたのかな。その頃は、運動もしてませんでしたし。

――その後、バイト先の先輩に筋トレを勧められたそうですね。

桃戸 そうです。塾講師を辞めて、新橋の飲み屋さんでバイトしてて。そこで先輩から「背が高いから、ベストボディ・ジャパンって大会に出てみたら」と言われて、筋トレを始めました。

 太っちゃってたからダイエットしたかったし、これといった趣味もなかったんで。「じゃあ、筋トレやってみるか」って。やってみたら、みるみるハマっちゃって、大会にも出てしまったという感じです。

――筋トレで体が絞れていったわけですけども、周囲から体重の増減を心配されたり、なにかあったのではないかと勘ぐられたりは。

桃戸 痩せ出したときは言われましたね。ただ、インスタとかでジムでトレーニングしてる写真を載せてたんで、心配もされずに。インスタを見てた子たちは「一体なにを目指してるんだ、こいつは?」って思ってたんじゃないですかね(笑)。

母の死後、情緒も不安定になってしまった

――体重増以外に、なにか生じたものはありましたか。

桃戸 自分の情緒も不安定になっていきましたね。なんか、そういうときってものすごく恋愛体質になりますよね。

――どっちかというと、依存するような。

桃戸 そう、そう。よく考えたら、ぜんぜん好きじゃなかったのに付き合ってたなとか。それに気づいて、相手に失礼なことしたなって凹んだりして。

――お母さんのことを周囲に相談しましたか。

桃戸 付き合ってた恋人には話したんですけど、「重い」って言われてフラれました(笑)。「しばらく考えたんだけど、やっぱり重いから自分には支えきれない」って。

 まず、フラれたことがショックで「悲しいな」と思ってたんですけど、あとになってよくよく考えてみたら、「あいつ、クソだな」って腹が立ってきて(笑)。本気でそう思っていても、ほかになにか言い方があるだろうと。でも「ああ、こういうことでフラれるんだな」と悟りましたけどね。

 亡くなってからは、友だちにも話しましたね。こういう話って、されたところで何も言えないというか、「そうなんだ」としか答えようがないというか。なので、小中高と一緒だった子とか、家族ぐるみで仲良かった子と、ほんとに仲の良い友だちには伝えました。

「自分も母のようになるかもしれない」と感じたワケ

――メンタルが弱っていると、「自分もお母さんのようになるのでは」という不安や恐怖を抱いたりしそうですけど。

桃戸 ありましたね。自分も気分が落ち込んじゃうし、思い詰めるので、そうなる可能性は全然あるなって。でも、私は友だちにすごい恵まれてたんで。落ち込んでも、みんながいることでズドーンとまではいかなかったんですよ。なので、変な考えを起こすことはなかったですね。最近は、「自分も母のように」って思うこともまったくないし。

 ただ、母に似てるところはあるなって。他人にすごい気を使ってしまうんですよね。人から嫌われたくないって意識が強くて。でも、負けず嫌いなところとかストイックなところもあって、そこは父譲りなんですけど。

――自己肯定感の低さみたいなものも。

桃戸 あんまり、褒められてこなかったところがあって。「完璧にできてないとダメなんじゃないか」っていうのが、ずっとあって。なにかで努力しても、それを自分でも認められなくて、「がんばったな」と思えなかったんですよね。

 だから、あんまり自分に自信がなくって。容姿とか褒められても、あまり刺さってこなかったというか。「なんで、私にそんなこと言うの」みたいな感じだったんですね。

筋トレを始めて自己肯定感が上がった

――筋トレを始めたことで、自己肯定感が上がったのでは。

桃戸 ジムで体を動かしてるときって、なんにも考えなくていいんで。そういう面でストレス発散になっていましたね。あと、食事にも気をつけるようになったので、痩せたり、体型が変わっていって。そうなると、やっぱり自分に自信がつきましたね。楽しくやれたし。

――いきなり筋肉がある人や身体が仕上がっている人はいませんから、ビフォーアフターのインパクトはありますしね。

桃戸 筋トレは効果が見えやすくて。絶対に過程が反映されるんですよ。それで大会とかで1位、2位、3位って勝ったりすると、それが自分が頑張ってきた成果としての数字になるんですよね。そういった過程の積み重ねで、自己肯定感が上がりましたね。

ヤングケアラーだった過去を話すようになった“きっかけ”

――最近、お母さんのことやヤングケアラーだったことを話すようになったのは、どういったきっかけで?

桃戸 歌舞伎町のトー横キッズの記事を読んだり、動画とかを見ると、他人事だと思えなくって。私も環境次第では、家を出てそのまま帰らないようになってただろうなと。すこしでも、ああいった環境に置かれた子たちを勇気づけられたらいいなと考えて話すことにしたんです。

 もちろん、私がその子たちの環境を100パーセントわかってあげることはできないですけど、そうなってしまいそうな子たちなら、微力ながら役に立てるんじゃないかって。

 いまはトー横キッズの子たちのTikTokが流れて来たりして、ファッション的に憧れる存在になっちゃってる部分もあって、そこは危険だなって。若い頃って、自分の周りの環境が世界のすべてだから、居場所がないと感じると、そっちに流れちゃう子がいるのは理解できるんですよ。流れる前に止めたいですよね。

「ヤングケアラー」は介護のイメージがまだ強い

――ヤングケアラーという言葉が取り上げられるようになりましたが、なにか思うところは。

桃戸 まず、声を上げられるようになったのはいいことですよね。ただ、ヤングケアラーって聞かされても、お風呂に入れてあげたりとか、排泄の手伝いをするとか、介護のイメージがまだ強いと思います。

 でも、そういった大変さだけじゃないんですよね。自分の思うことができなかったり、精神的に追い詰められてしまう点も問題だし、そこにもっと光が当たれば、誰かにヘルプを出しやすくなるんじゃないですかね。

――ご自身の経験を踏まえて、ヤングケアラーに掛けられる言葉ってなにかありますか。

桃戸 知識をつけることをあきらめないでほしい。いい学校に行く行かないではなく、なにかしら学ぶってことです。知識を持つことによって、人間関係をふくめて環境って変わっていくんですよね。学ぶ場ができて、そこで友人たちができて、彼らから助けてもらえる。実際、私がそうだったので。学ぶことをやめないでほしいなっていうのは、ありますね。

撮影=三宅史郎/文藝春秋

◆◆◆

【厚生労働省のサイトで紹介している主な悩み相談窓口】

▼いのちの電話 0570-783-556(午前10時~午後10時)、0120-783-556(午後4時~同9時、毎月10日は午前8時~翌日午前8時)
▼こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556(対応の曜日・時間は都道府県により異なる)
▼よりそいホットライン 0120-279-338(24時間対応) 岩手、宮城、福島各県からは0120-279-226(24時間対応)

(平田 裕介)

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