木村拓哉や中居正広の陰に隠れ…草彅剛(50)が鈴木おさむに告げた“本音”「オレの台本だけ、手を抜いてるんじゃないの?」
文春オンライン / 2024年10月8日 11時10分
草彅剛 ©時事通信社
〈 「おまえ最近、いろいろしゃべりすぎだぞ!」SMAP“公開謝罪番組”放送→解散後、鈴木おさむに中居正広が“放ったひと言” 〉から続く
2024年3月に放送作家を引退したのを機に、「小説SMAP」をうたった『 もう明日が待っている 』を刊行。SMAPの素顔を余すところなく描き出したのが鈴木おさむさんである。テレビの世界を離れて半年。いまこそ語れる「SMAP論」を、存分に披露していただこう。
今回は、あの「謝罪放送」のときにも決定的な役割を果たした草彅剛についてのすべてを明かす。(全2回の1回目/ 後編に続く )
◆ ◆ ◆
いつも変わらない安定感
木村拓哉さんとラジオ番組を始めたのが僕とSMAPが関わるきっかけでしたから、木村さんとはいろんな話をしてました。そのあと、ほかのメンバーでいちばんたくさんしゃべるようになったのが草彅剛さんです。
剛さんと深く話すようになったのは、放送作家として参画していた『SMAP×SMAP』の企画で、「古畑任三郎」のパロディで「古畑拓三郎」というコントをやったころからです。剛さんは昔もいまも、あのパブリックイメージのままの人。何事に対してもニュートラルで動じず、いつも変わらない安定感があります。
そんな穏やかさと優しい雰囲気に包まれているからでしょう、剛さんはSMAP初期のころ、木村拓哉・中居正広の二枚看板の陰に隠れた印象がありました。それでも1997年に主演したテレビドラマ『いいひと。』が大ヒットして、状況は変わります。剛さんのブレークによって、SMAPのなかに人気の差なんてなくなりました。全員が売れっ子で人気者、かわるがわるトップを張れるグループとなり、それが長く人気を保つ大きいポイントとなりました。
『いいひと。』で開花した剛さんの俳優としての才能は、いまやだれもが知るところですが、彼の芝居がガラッと変わり飛躍した瞬間を、幸いにも僕は目撃しています。1999年、つかこうへい作・演出の舞台「蒲田行進曲」で、ヤス役を務めたときのことです。
作品自体としてもその公演は、僕自身がこれまで観たなかで「我が人生ベスト舞台」と言いたくなるスゴみがありました。そのなかでも剛さんは、ふっ切れたような堂々たる芝居を見せていました。あれほど役に入り込んで演じる人を、ほかにあまり見たことがありません。
「蒲田行進曲」以降、剛さんは明らかに芝居が変わりました。つかこうへいさんの演出が、役者・草彅剛という存在を生み出したといえるでしょう。草彅剛の天性を見抜き、適切に伸ばした手腕はさすがのひとことで、演劇人・つかこうへいさんの偉大さもひしひしと感じました。
「オレの台本だけ、手を抜いてるんじゃないの?」
覚醒後の剛さんは、役者として独自の境地を開拓していきます。先日、テレビ番組で言っていましたが、あるときまでは台本を読み込み、事前に考えを尽くして役づくりをしていたそうですが、スタイルを変更したと。なんと自分のセリフ以外は目を通さないとも言っていました。天性の才能を発揮しまくっています。
役者としてすごい存在になってからも、番組で剛さん向けのコントの台本を書くことはたくさんありました。そういうときに剛さんに、冗談っぽく言われたことがあります。
「オレの台本だけ、手を抜いてるんじゃないの?」
と。たしかに剛さんに向けた台本は、冒険したものも多かった。それは彼の空気感で彼しか作れない世界観をつくれてしまうからこそ、番組に足りないスペースを見つけて、作家も演出も、彼で冒険的・実験的なことをしたくなるのです。
「深夜枠の番組を韓国で撮影したい」
草彅剛さんが役者としての評価をどんどん高めていくなか、さらに驚かされたのは、2001年からフジテレビ系の深夜番組で「チョナン・カン」を始めたことです。
あるとき『SMAP×SMAP』の打ち合わせをSMAPマネージャーの飯島三智さんとしていると、剛さんが駆け寄ってきて、深夜枠の番組を韓国で撮影したいと言ってきました。
そのころはメンバーが持ち回りで、深夜の放送枠で番組をやることになっていたのです。そこで韓国をテーマにした番組をやりたい、韓国に行ってスターになりたいというのです。
ほかのSMAPメンバーにはない草彅の“能力”とは
当時は、韓流ブームなどまだ起きていない時代です。僕はとっさに意図が呑み込めませんでした。が、剛さんなりの見通しとねらいがあったのでしょう。
現在の韓流の定着浸透ぶりを見ると、先見の明があったのだと思い知らされます。飯島さんも最初はびっくりしていましたが、すぐに「おもしろい」と話に乗りました。その判断力と柔軟性には舌を巻きます。
それで番組づくりにゴーが出たのですが、剛さんがすごかったのは、韓国の文化や言語への没頭ぶりです。
最初の放送から、いきなりの韓国ロケでした。徐々に言葉を学んでいくのではありきたりだろうから、なぜかすでに韓国語をペラペラ話せたほうがおもしろいとの演出上の意図から、剛さんはカタカナだけで書かれたカンペを読んで、韓国語のセリフを発音しました。
1回目をそのやり方で撮影したあと、そこからがすさまじかった。剛さんは1ヶ月後の2回目のロケまでに猛勉強して、日常会話ができる程度にまで韓国語をマスターしてしまいました。
その後も剛さんは韓国語の学習に没頭します。番組開始から3ヶ月経ったころ、『SMAP×SMAP』のメンバー全員によるエンドトーク中、剛さんはいきなり韓国語でしゃべり始めてしまいました。勉強のしすぎで、いま自分の話しているのが日本語なのか韓国語なのか、よくわからなくなってしまったのでした。
それほどまでの熱意で語学習得に打ち込んで、半年後には完全に韓国語をマスターしてしまった。まさにこれが彼の持ち味です。スイッチが入ったときの、対象へのエネルギーのかけ方が半端ないのです。
ここぞの突破力や、「化ける」能力は、メンバーのなかでいちばん大きいんじゃないでしょうか。
芝居にしても語学にしても、彼はそうして自分のものにしてきたのです。ここ数年は、ギターに熱中しているそうですね。そちらも何らかの成果に結びついていくのだと思います。
付け加えれば、いまに続く韓流ブームの起点は草彅剛にあり、ということは改めて強調しておきたいところですね。
〈 SMAP“公開謝罪番組”放送直前で…草彅剛に“あのひとこと”を言わせた罪悪感「いま、僕らはここに立てています」の真相 〉へ続く
(山内 宏泰)
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