「出っ歯は無理」「年収1千万ないと男として見れない」「30代の首のたるみが受け付けない…」“事故物件レベル”の底辺婚活者たちは結婚できるのか
文春オンライン / 2024年9月30日 17時0分
「仏滅結婚相談所」に相談に来る人々 『仏滅結婚』より
職を失い、彼女にもフラれた赤口誠はある日、「仏滅結婚相談所」の社長・仏滅清志郎と出会い入社することに。人を幸せにする崇高な仕事かと思いきや、その実態は嘘にまみれた“婚活難民”たちの引き取り場だった……!?
WEBサイト「 コミプレ 」で連載中のコミック『 仏滅結婚 』(ヒーローズ)は、浅田有皆さんによる異色のヒューマンコメディだ。他の結婚相談所では引き取り手のない「負け組」婚活者たちが次々に登場し、読者の心を容赦なく揺さぶってくる。
果たして人との出会いとは、結婚とは何なのか……。作者の浅田さんに作品について詳しく伺った。(全4回の1回目/ コミックを読む )
◆◆◆
婚活パーティーが“パンドラの箱”に思えた
――まずは結婚相談所をテーマに選んだ理由を教えてください。もともとどういったイメージや印象があったのでしょうか?
浅田有皆(以下、浅田) 原稿作業中にYouTubeをよく流しているのですが、その時たまたま見た「婚活系YouTuber」にハマってしまって(笑)。そのYouTuberは婚活パーティーに行っては「こんなすごいのがいた!」「とんでもないやつばっかだ!」みたいなことをレポートしているんですが、その集まりが個人的にとても怪しい“パンドラの箱”のように思えて。
結婚相談所を舞台に描いたら、そういう人たちの面白い出会いや人間模様が描けるのではないかと思って担当編集さんに相談しました。そしたらすぐOKが出ました(笑)。
――主人公の赤口が恋愛や出会いに対して抱いていた幻想が、仏滅結婚相談所での仕事を続けるにつれどんどん壊れていくところが面白かったです。浅田様にとっての恋愛や結婚のイメージはどのようなものですか。そのイメージはやはり作品の内容に反映されているのでしょうか。
浅田 恋愛は衝動的なもの、結婚は日々の生活と努力、そして忍耐力ですかね(笑)。作品には知らず知らず反映されているのかもしれません。結局、結婚しても相手と自分はどこまでいっても他人ですし、恋愛感情だけで日々の生活はできません。それでも「この人と一緒に人生を歩みたい」と思えたらそれは素敵なことですよね。男女ともに底辺だったりドクズだったとしても、そう思える相手となら一生を添い遂げられるのではないでしょうか。
――一般的な恋愛と婚活はやはり違うのでしょうか。婚活をする上で一番大切なことはなんだと思いますか?
浅田 もともと自然な形での出会いやナンパ、相談所、マッチングアプリと、どんな形でも出会いは同じだろうと思っています。とはいえ、一般的な出会いは最初に「感情」があるのに対して、相談所の場合はどうしても「条件」が先にきます。恋愛であれば気持ちで突っ走ることもできますが、婚活となるとその人の経歴や経済力といったスペックを無視することはできません。
そういうスペックを含めた“人間性”を見極めるのが婚活では大事なのではないでしょうか。ただ、仏滅結婚相談所に来る人たちは事故物件レベルの低スペックばかりなので、それを補う魅力がないと結婚は難しいですよね。
「負け組」相談者たちの着想はどこから?
――『仏滅結婚』には他の相談所からも爪弾きにされるような「負け組」の相談者がたくさん出てきます。キャラクター描写はどういったところから参考にされていますか。
浅田 自分はもともとパンクバンドをやっていたり今も漫画家という不安定な職業なので、結婚条件的にはいわゆる「3B(バーテンダー、美容師、バンドマン)」に近いと思ってます。出てくるキャラクターはそんな自分の周りにいる似たような3Bタイプだったり、昔まったく女性に不慣れで頓珍漢なことをしていた自分をモチーフにしていますね(笑)。
あとは破天荒な恋愛をしてきた知り合いの女性やスタッフ、編集さんの話だったり、基本的に実際の人間をベースにすることでリアルなキャラクターになるよう心がけています。
――浅田様が共感するキャラクターはいますか? どのようなところに共感するか教えてください。
浅田 各キャラクターに少しずつ自分の中の黒い部分を反映させているので、全部のキャラに共感していますし、全部のキャラは自分のことだと思ってます。なかでも今連載中(2024年9月時点)のシリーズに出てくるバンドマンの坂東(ばんどう)は、特に自分の過去が投影しやすいキャラクターですね。53歳スナックママとの婚活がどう着地するかは自分でもまだ予想がつかず、ワクワクしています。
――逆に浅田様が絶対に「この人とはお見合いもしたくない」と思うキャラクターはいますか。
浅田 “監禁男”こと冴島肥禿くんのシリーズに出てきた記憶喪失の佳代ですね(汗)。気づいたら記憶なくして借金漬けですよ。あれ、怖いです(笑)。肥禿の方がヤバいやつに見えるかもしれませんが、好きな人を“所有したい”“そばにおきたい”“誰にも会わせないで全部自分のものにしたい” という欲求は人間少なからずあると思うので、意外に共感できる部分があるのかなって思います。
人間の内にある「黒さ」を楽しんでほしい
――「仏滅」と「結婚」は、一見とても相性の悪い言葉に思えます。その2つを合わせたタイトルにした経緯や理由を教えてください。
浅田 相談所にやってくる客自体が縁起の悪い人たちなのですが(笑)、「仏滅」には“悪縁を断ち、新しいことを始める”という意味もあるそうで。相談所に来るいろんな人たちに、悪縁を断ち、新しい自分になってほしいという思いからタイトルをつけました。
あとは、キャッチーなタイトルだとドラマ化しやすいのでは? という下心もあります(笑)。今のところドラマ化のオファーはないので、このインタビューを読んでくれたプロデューサーの方はぜひ編集部までご連絡ください(笑)。
――『仏滅結婚』はどんな人に読まれてほしいでしょうか。また、これから読む読者に向けてメッセージがあればお願いします。
浅田 人間の内にある「黒さ」を楽しんでほしいですね。黒い感情やヤバい人たちしか出てこない漫画ですが、それが人間だと思っています。そんなキャラたちが恋愛でもがいて、それでも頑張って婚活するという人間のパワーを感じて楽しんでいただけたらと思います。
所々婚活の豆知識も盛り込んでいますし、自分が思う恋愛観や結婚観も織り交ぜているので、婚活で悩んでいる方の指南書にでもなれると嬉しいです。なるかなあ(苦笑)。
〈 「あいつどこ見てんだよ!」婚活パーティーで一人ぼっちに…彼女いない歴=人生の男を動かした、女性の“ある行動”とは 〉へ続く
(「文春オンライン」編集部)
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