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「配偶者のいない経営者女性は、コロナの感染率がひときわ高かった」データで紐解く新型コロナ“男女の感染率の違い”とは?

文春オンライン / 2024年10月3日 6時0分

「配偶者のいない経営者女性は、コロナの感染率がひときわ高かった」データで紐解く新型コロナ“男女の感染率の違い”とは?

©beauty_box/イメージマート

〈 「男性が働くのは当たり前」「女性が働くのは特別の理由がある」“暗黙のルール”で差別された女性たち…研究分野にも存在した“深刻なジェンダー・バイアス” 〉から続く

 日本の母子家庭の貧困率は、51.4%。実に、2人に1人が貧困である。多くの女性たちは、正規雇用で就職したあと、結婚・出産を機に退職し、専業主婦やパート主婦になるが、夫との離死別などにより簡単に最下層に転落してしまう。なぜ、そのような格差がうまれてしまうのか?

 ここでは、「階級・格差」研究の第一人者・橋本健二氏が、「女性の階級」の実態を綴った書籍『 女性の階級 』(PHP新書)より一部を抜粋して紹介する。(全2回の2回目/ 1回目 から続く)

◆◆◆

新型コロナ感染症が女性にもたらした変化

 新型コロナ感染症の蔓延が、女性たちに対して、男性たち以上に多くの損害を与えたことは、よく知られている。といっても、女性たちの方が感染しやすかったとか、症状が悪化しやすかったというのではない。多くのデータは、むしろ男性の方が感染しやすく、また重症化しやすかったことを示している。

 しかし、経済的な打撃は女性の方が大きかった。多くの商店や飲食店が休業を余儀なくされ、そこで働いていた多くの非正規雇用の女性たちが職を失った。また学校が休校したため、家に居続けることになった子どもたちの面倒をみるために、多くの女性たちは職を休んだり辞めたりせざるを得なかった。

 ここでは新型コロナ感染症の蔓延が女性たちにもたらした変化を、2022年3大都市圏調査のデータにもとづいて、階級別にみていくことにする。なお、この調査が行われたのは2022年の1月から2月にかけてであり、当時は感染が爆発的に拡大する直前の時期にあたっていた。2月の段階でみれば、新型コロナに感染した人の比率は、東京都が7.95%、愛知県が4.20%、大阪府が7.35%だった。このように、感染がピークに達する前の段階の調査結果であることには注意が必要である。

 調査では、新型コロナ感染症の感染経験を尋ねるため、図表6.1に示したような設問を設けた。選択肢は7つである。1は「感染したことはない」で、これを選択した人は「未感染」と分類する。ただし検査をしたことがない人が、まったく自覚症状がないままに回復して、自分は感染したことがないと考えているケースも、ここに含まれる可能性がある。

 2ー5は感染したことがわかっているというものであり、それぞれ症状の重さが異なるが、まとめて「感染」とみなすことにする。6は「発熱などの症状があったが、検査をしなかったので、感染したかどうかわからない」という、少々問題ありのケースで、「感染の疑い」とみなすことにする。

 7番目の選択肢として「その他」を設け、これを選んだ人には具体的な内容を記入してもらった。結果的にはこの選択肢を選んだ人はごく少数で、内容も「検査結果待ち」「まったくわからない」などという、無理もないものだったので、集計から除外してある。

 図表6.2は、性別・階級別に感染状況を示したものである。感染経験のある人の比率(感染率)は、全体では男性が4.13%、女性が2.72%で、男性の方が高かった。女性では専業主婦の感染率が1.74%と低くなっていることが、全体の感染率を引き下げているようだ。

感染が判明すると働けないため検査を避ける人も…

 階級別にみると、もっとも感染率が高いのは、男女とも資本家階級である。資本家階級といっても、その大部分は中小零細企業の経営者だから、自ら仕入れ先との交渉を行い、営業・接客等の最前線に立ち、多数の社員と日常的に接触している人々である。このため、感染しやすかったのだろう。

 資本家階級では女性の方が6.91%と男性より感染率が高くなっているが、詳しく集計すると、配偶者のいない女性資本家階級の感染率が13.1%と、ひときわ高かった。女手ひとつで経営と営業に奔走したことが原因と思われる。

 2番目に感染率が高いのは、男女とも正規労働者階級である。同じく正規雇用の新中間階級と比べると、男性で約1.5%、女性で約1.2%高くなっている。リモートワークが容易な新中間階級と異なり、現場に立って働くしかない人々だから、感染のリスクが高かったものと思われる。

 アンダークラスの感染率は、男性で4.82%、女性で2.91%と、正規労働者階級より低くなっている。ただし注意しておかなければならないのは、アンダークラスで「感染の疑い」の比率が、男性で2.50%、女性で2.03%と高くなっていることである。とくに男性では「感染」と合計すると7.32%となり、資本家階級を上回る。おそらくアンダークラスには、感染が判明すると出勤できなくなり収入源を絶たれてしまうため、検査を避けた人が多かったのだろう。このことが、感染拡大のひとつの原因になった可能性がある。

(橋本 健二/Webオリジナル(外部転載))

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