「サザンの陽のあたる部分だけじゃなく、それ以外のところ」デビューから46年、桑田佳祐が初めて明かした“やめそびれた歴史”
文春オンライン / 2024年9月28日 7時0分
『いわゆる「サザン」について』(小貫信昭 著)水鈴社
「サザン」に、あなたはどんなイメージをお持ちだろうか。1978年「勝手にシンドバッド」でデビューしてから46年。街中で、あるいはあなたの部屋で、その音楽は当たり前のように流れていた。だが、その歩みや喜怒哀楽を、あなたは知っていただろうか。
「サザンオールスターズにまつわる本のうち、その歴史を“物語”として読むことができるものって、実はこれまでなかったんです」
このたび『いわゆる「サザン」について』を上梓した、音楽評論家の小貫信昭さん。40年以上にわたりサザンオールスターズを取材し、現在でも年に4、5回、フロントマン・桑田佳祐にインタビューを行っているという。
本書はそんな小貫さんだからこそ書けた、本邦初かつ「サザン史」の決定版とも言うべき一冊だ。
「今回の執筆に際しても、改めて桑田さんにお話を聞くことができました。そういう意味でも、これ以上ないものになっているんじゃないかと思います」
「真夏の果実」の歌い出しはなぜ〈涙があふれる 悲しい季節は〉なのか。「マンピーのG★SPOT」は最初からエロな路線を狙っていたわけではなかった――誰もが知る楽曲の、知られざるエピソードも満載だ。
「個々の楽曲について、いまさら聞けないようなことも、一つひとつ聞くことができました。ときには食い下がりながら(笑)、具体的な質問を重ねていって」
本書では、サザンオールスターズが、ロックバンドとして、音楽人としてもがいてきた道筋も描かれる。
「執筆もたけなわの頃、桑田さんから『サザンの、よくよく取り上げられる陽のあたる部分だけじゃなく、それ以外のところも描いて欲しい』というメッセージをいただいたんです。とはいえ陰の部分を必要以上に探して書いたわけではありません。作品が出て勢いづくまでの、模索の期間というのは多分にある。そこでのエピソードはすごく重要だと思っていたので、しっかりと盛り込んでいます」
また、サザンオールスターズのバンド活動と、桑田佳祐をはじめメンバーのソロ活動が、ひと続きに語られるのも本書の特徴だ。
「サザンオールスターズの歴史は、連続線ではなく、非連続線。バンドを休み、ソロで個を突き詰めて、再びバンドに戻ってくる時期が何度かありました。特に90年代中頃の、桑田ソロ作『孤独の太陽』からサザンの『Young Love』へ至るあたりは、桑田さんのなかでも大きく振り子が揺れていて、結果、バンドの推進力につながった時期だと思いますね」
桑田佳祐の言葉が随所で挿入されている本書だが、なかには「これこそがサザンの“やめそびれた歴史”というか……」といったものもある。結成前夜から始まって、近年のコロナ禍での横浜アリーナ無観客ライブや、45周年を迎えての茅ヶ崎ライブの舞台裏までを追いかけたあとだと、この言葉も違った響きで、胸に残る。
最後に、本書の印象的なタイトルも、桑田佳祐からの提案だったとか。
「評論家である僕と彼らとの距離感を、絶妙に表現してくださったなと。『いわゆる』という言葉には、パブリックイメージの中の、みたいなニュアンスもありますが、そこに読者の方それぞれの『サザン』を重ね合わせていただき、でも読み終えたとき、また別の真実に辿り着く本だとしたら本望ですよね。彼らの凄さは、どの時代にも活動のピークが存在することで、それを証明する本にもなりました」
おぬきのぶあき/1957年東京都生まれ。1980年、『ミュージック・マガジン』を皮切りに音楽について文章を書きはじめ、音楽評論家として40年以上のキャリアを持ち、長年にわたりサザンオールスターズの魅力を言葉として紡ぎ続けてきた。著書に『Mr.Children 道標の歌』『槇原敬之 歌の履歴書』など。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2024年10月3日号)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
ヒロミ「見たかったねぇ」「水かかりたい」 サザンオールスターズ最後の夏フェスに5万人が熱狂
日刊スポーツ / 2024年9月24日 11時15分
-
サザン「ロッキン」出演3度目で全て大トリ 22年は桑田佳祐ソロ出演予定もコロナと台風で中止
日刊スポーツ / 2024年9月23日 20時18分
-
サザンオールスターズ「いったんこれで卒業」最後の夏フェス「ロッキン」異例の最長100分熱唱
日刊スポーツ / 2024年9月23日 20時0分
-
“夏フェス卒業”を発表した、サザンオールスターズのここ10年の軌跡…「国民的ロックバンド」でありながら、「日本ロック史における最大の革命児」桑田佳祐の唯一無二のバランス感覚
集英社オンライン / 2024年9月21日 13時0分
-
桑田佳祐と共演の仲野太賀に実父・中野英雄が感動「踊ってた…嬉しい」
クランクイン! / 2024年9月12日 18時0分
ランキング
-
1栄養豊富な「イワシ」 実は“食べ過ぎ”NG 恐ろしい“病気”に 管理栄養士が解説
オトナンサー / 2024年10月4日 8時10分
-
2ブックオフ「続々閉店?」報道の裏で進む大変化 「本を売るならブックオフ」は次第に過去のものに
東洋経済オンライン / 2024年10月3日 8時0分
-
3なぜガソスタで「給油出来ない」と断られる? “意外な理由”に「仕方ない」「納得だわ」「マジで困る」と議論勃発!? スタンド側から「めんどくさい」の声も
くるまのニュース / 2024年10月4日 12時30分
-
4ご希望に添えかねる結果となりました…世帯年収1,400万円・30代パワーカップルが、住宅ローン審査落ち。「そういえば」口を開いた夫に原因、〈銀行の総合的判断〉の正体【CFPの助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月4日 10時45分
-
5「怪しすぎるロシア軍機」を撃墜? ウクライナ軍に“なりすました”衝撃の姿が撮影される
乗りものニュース / 2024年10月4日 11時42分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください