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当時31歳の石原さとみは“ほぼすっぴん”で…6年前の『アンナチュラル』が“予言ドラマ”と言われるワケ〈映画『ラストマイル』が話題〉

文春オンライン / 2024年10月8日 11時0分

当時31歳の石原さとみは“ほぼすっぴん”で…6年前の『アンナチュラル』が“予言ドラマ”と言われるワケ〈映画『ラストマイル』が話題〉

『アンナチュラル』の演技が評価され、東京ドラマアウォード2018で個人賞・主演女優賞を受賞した石原さとみ ©時事通信社

 映画『ラストマイル』が公開35日間で観客動員数324万人、興行収入46.3億円を突破するロングヒットを続けている。ドラマ『アンナチュラル』(2018年)、『MIU404』(2020年/ともにTBS系)の出演陣が一堂に会するという豪華さも話題になっているが、なぜ3作品はこれほど支持を集めているのか。その背景をライターの田幸和歌子氏が読み解く。

『アンナチュラル』のキャストのハマり具合、“予言ドラマ”と言われたワケとは……?(全3回の1回目/ 続きを読む )

◆◆◆

野木亜紀子が描いた法医学ドラマ『アンナチュラル』

 ドラマ『アンナチュラル』、『MIU404』と世界観を共有した「シェアード・ユニバース作品」である映画『ラストマイル』がヒットしている。改めて驚かされるのは『アンナチュラル』と『MIU404』の人気の高さだが、振り返ると『アンナチュラル』は近年のドラマのあり方を大きく変えてしまった作品とも言えるだろう。

『アンナチュラル』は石原さとみ主演、UDIラボ=不自然死究明研究所(Unnatural Death Investigation Laboratory)を舞台とした法医学ミステリー。『アンナチュラル』が登場した2018年は「日本のドラマは医療モノや刑事モノばかり」と指摘されていた時期で、実際、『ドクターX~外科医・大門未知子~』や『相棒』シリーズなどの医療・刑事ドラマが視聴率上位をほぼ独占していた。

 そうした中、『重版出来!』や『逃げるは恥だが役に立つ』(ともに2016年/TBS系)で注目を集めていた脚本家・野木亜紀子が「法医学ドラマ」を描くことには多くの関心が集まった。

 それまで漫画・小説などの原作モノには定評があった野木だが、オリジナル脚本は、第22回フジテレビヤングシナリオ大賞受賞作の『さよならロビンソンクルーソー』(2010年/フジテレビ系)を除くと初めてのことだった。オリジナル作品で、それも「法医学」というテーマとの相性はどうなのか――しかし、これが大当たりだった。

『アンナチュラル』で用いられた、科学捜査で事件にアプローチする手法は、『科捜研の女』や『相棒』などでもおなじみの鉄板要素だ。それをベースとして、謎解きの面白さ、スリリングさを提供しつつも、中心に据えるのは「生」と「死」。性加害問題やジェンダー差別、労働問題、学校でのいじめなどの社会問題にも切り込みながら、その背景にある深い人間ドラマを描ききる姿勢は、視聴者を惹きつけて離さなかった。

石原さとみは“ほぼすっぴん”で撮影に挑んだ

 さらに、キャストのハマり具合も絶妙だった。野木は脚本を書くとき“あてがき”をすることが多く、主人公・三澄ミコトを演じた石原さとみもそうだった。

 ミコトは、石原が多く演じてきたフェミニンな役柄とは違っていた。さらには、それまで多くのドラマでも描かれてきた「強い女性」とも一線を画していた。

 仕事熱心で優秀だが、奇抜ではなく、恋もするし、お腹もすくし、ちゃんと傷つく。等身大で生きているミコトという女性の姿は日本のドラマにおいては新鮮だった。「のぎといういきもの」によると、石原はこのドラマ撮影時、コンシーラーでちょっと隠す程度のほぼすっぴんだったという。そうしたプロ根性もミコトに近いものがあるし、信頼できる人物像になっていた。

 そんなミコトと、明るい検査技師・東海林(市川実日子)のベタベタしないシスターフッド的な関係も魅力的だったし、物静かな役柄も多かった井浦新が態度も口も悪い執刀医・中堂系を演じたのも新鮮だった。

 医者一家の“落ちこぼれ”として育ったへっぽこ医大生・六郎(窪田正孝)の成長も、ラボ存続ばかりを考える頼りない存在にみえて、肝心なところでは“胸アツ”な決断をする神倉所長(松重豊)も、中堂の暴言にびくびくしながら、後に意外なふてぶてしさを発揮する「癒やし」「笑い」担当の坂本(飯尾和樹)も……。徐々に凸凹のピースがハマるように合致し、「チーム」になっていく過程もまた見応えがあった。

野木の強みを大きく引き出した「法医学」

 そもそもの出発点は、野木が「女主人公の法医学ドラマ。あとは好きにつくっていい」というお題をもらったことだったという。

〈「以前から一緒に仕事をしたかった『Nのために』チーム(塚原Dと新井P)とやらせてくれるという人参を鼻先にぶら下げられ、困難な道ではあるが走ってみるか、とトライしたのだった」(野木亜紀子のnote「のぎといういきもの≒野木亜紀子」~「アンナチュラル倉庫」)〉

「第96回ザテレビジョン ドラマアカデミー賞」の脚本賞受賞インタビューでも「法医学に詳しかったわけではありませんが、もともと理系ジャンルの方が好きなので身構えることはなかったし、以前から人の生き死にについては思うところがあったので」と語っているように、「法医学」は野木の強みを大きく引き出すものだった。

 ひたすら文献を読み、法医学の現状を調べるなどの地道な作業は、野木がかつてドキュメンタリー制作会社に勤め、取材やインタビューを手掛けていた経験の賜物だったろう。さらに圧倒的なのはその構成力だ。『アンナチュラル』では作品全体の大きなテーマとして連続殺人事件を追いつつ、各話で事件を縦軸に、横軸としてそれぞれの人物の背景やエピソードを描き、それらを貫く人間ドラマを描き切った。

『アンナチュラル』が“予言ドラマ”と言われたワケ

 社会、そしてそこに生きる個人を見つめながら、徹底的な取材を基に作られた『アンナチュラル』という物語は、“予言”のような形で現実とリンクすることとなる。

 第1話「名前のない毒」では、年老いた両親が息子の遺体の調査をUDIラボに依頼。死因の毒物は特定できず、調査が行き詰まる中、死亡した本人にサウジアラビアへの渡航歴が判明し、「MERSコロナウイルス」の感染が死因だったことがわかる展開が描かれた。

 COVID-19の感染拡大で世界中がパニックに陥ったのは、ドラマの放送から2年後のことだ。誰もが不安を抱え、ときに「犯人探し」で疑心暗鬼になり社会が分断されていく様は、ドラマを再現したかのようにも思えた。野木はインタビューでこう説明している。

〈「MERSコロナウイルスは終息宣言が出ておらず、いつまたパンデミックが起こるともわからないなかで書いたので、予言でもなんでもなく、実際にある問題を描いたにすぎないんですよ。韓国や中国にとっては、新型コロナウイルスはMERSやSARS(重症急性呼吸器症候群)で一度経験していることですが、日本ではどこか遠くのこととして見ていた人が多かったから、『予言』のようにとらえられたのだと思います」(『婦人画報』2022年2月号)〉

 そんな『アンナチュラル』の“予言”が現実となったのと同じ2020年、物語の続きが動き出す。『MIU404』の放送が始まったのだ。( #2に続く )

〈 綾野剛が“野生のバカ”になった理由は…『MIU404』星野源との“名バディ”が生まれるまで〈映画『ラストマイル』が話題〉 〉へ続く

(田幸 和歌子)

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