「高杉晋作を自分に重ね合わせているかもしれません」斎藤元彦前兵庫県知事が失職直前、読んだ司馬遼太郎の小説〈独占インタビュー〉
文春オンライン / 2024年10月1日 6時0分
「文藝春秋」の取材に答える斎藤元彦前兵庫県知事 ©文藝春秋
家族は「自分の人生なんだから」と
「私が今、こういう状況でも、家族は『自分の人生なんだから、斎藤元彦自身が判断して対応すればいい』と言ってくれています」
神妙な面持ちでこう語ったのは、斎藤元彦前兵庫県知事だ。
元西播磨県民局長が書いた告発文書をめぐる問題を受け、9月19日に兵庫県議会では全会一致で不信任決議が可決。これを受け、斎藤氏は議会解散を選択せず、9月30日付での失職を選んだ。その直前、斎藤氏は70分にわたり、「文藝春秋」の取材に応じた。
「しんどい時はある」と胸の内を明かした
元県民局長が「齋藤元彦兵庫県知事の違法行為等について」と題したA4判の文書をマスコミ、県議会関係者に送付したのは3月12日のこと。文書には、知事のパワハラや、県内各地で贈答品を受領する“おねだり”体質、公職選挙法違反の疑い等について列挙されていた。
事態が急転したのは7月7日。文書をめぐって前月から行われていた百条委員会に出席を予定していた元県民局長が、姫路市の生家で自死した。県政への風当たりが強まる中、同月末に片山安孝副知事は辞職。斎藤氏は、百条委にて文書の内容を一部認めたものの、片山氏や県議会など各方面からの再三にわたる辞職勧告を拒否し、会見でも続投の意欲を表明していた。
マスコミや議会から批判されても動じぬ姿勢で、ネット上では「鋼のメンタル」とも評された斎藤氏。ネイビーのスーツに同色のネクタイを締めて現れた同氏は、「しんどい時はある」と小誌に苦しい胸の内を明かした。
「特に、百条委員会の証人尋問はかなりハードな場面でしたし、不信任決議が全会一致で可決した時も、すごく辛かった。何とか自分の中で気持ちのバランスを保っている状況です」
『世に棲む日日』を電子書籍で再読した
そんな斎藤氏は出直し選への出馬を表明する約1週間前、ある歴史上の人物を主人公にした小説を読んでいたという。
「私は司馬遼太郎が大好きなのですが、なかでも吉田松陰と、その遺志を継ぎ、若くして倒幕を主導した高杉晋作を描いた『世に棲む日日』を何度か読んでいます。これは知事選の前に一度読んで、一昨日も電子書籍で再読しました」
『世に棲む日日』は1977年大河ドラマ「花神」の原作の一つとしても知られる。本書は前後編で分かれているが、特に斎藤氏は後編の主役である高杉晋作に惹かれると話す。
「高杉晋作が幕末期の長州藩で孤軍奮闘するのですが、その姿を、もしかすると今の自分に重ね合わせているのかもしれません」
そしてインタビューの後半、出直し選への決意をこう語るのであった。
「辞めることだけが責任の取り方ではありません。批判をしっかりと受け止めながら職務を続け、改革を進めていく。これこそが私なりの責任の取り方なのです。辞めろ、辞めろと言われるのが辛い時も正直ありましたけれども、そうした声には負けていられません」
10月10日発売の「文藝春秋」11月号では、斎藤氏のインタビューを8ページにわたり詳報。亡くなった県民局長との出会いや、職員とのコミュニケーション面での反省、県政への思い等について語っている。
「文藝春秋 電子版」では、10月1日から斎藤氏のインタビュー全文を先行公開している。
(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2024年11月号)
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