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「生きるか死ぬかを決めるのは視聴者次第…」SMAP香取慎吾を“凶悪ストーカー犯罪者”に仕立てた「TV番組の驚きのエンディング」

文春オンライン / 2024年10月6日 17時0分

「生きるか死ぬかを決めるのは視聴者次第…」SMAP香取慎吾を“凶悪ストーカー犯罪者”に仕立てた「TV番組の驚きのエンディング」

1999年、香取慎吾を凶悪立てこもり犯に仕立て上げた「驚きの番組」はどんなエンディングを迎えたのか? ©getty

〈 SMAPメンバーが女子高生2人を人質に立てこもり…香取慎吾を“凶悪ストーカー犯罪者”に仕立てた「ヤバすぎるTV番組」の正体 〉から続く

 フェイク・ドキュメンタリー史において、エポックメイキングな作品『放送禁止』(2003年~、フジテレビ)を手掛けた、クリエイターの長江俊和氏。実はその4年前にも見る人を驚かせた「伝説のフェイク・ドキュメンタリー番組」を手掛けている。

 当時、絶大な人気を誇ったSMAPの香取慎吾が“凶悪立てこもり犯”に仕立てた驚きの番組はどんな結末を迎えたのか…? ライターの戸部田誠(てれびのスキマ)氏の新刊『 フェイクドキュメンタリーの時代: テレビの愉快犯たち 』(小学館)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/ 最初 から読む)

◆◆◆

「なんでこうなっちゃったんですかねえ」

「緊急報道番組」のスタジオにはアナウンサーの他、急遽、コメンテーターとしてテリー伊藤や芸能リポーターの前田忠明、そして専門家として元警視庁捜査一課の男性が集まっている。

「なんでこうなっちゃったんですかねえ。先日仕事で一緒になったんですけど、まったくそんな素振りを見せなかった」と山荘にいるのが本当に香取なのかと疑問を呈するテリーに対し、前田は「間違いないと思いますよ。今日収録現場に姿をあらわさないんだから」と返す。

 さらに緊急報道番組では、翌日のワイドショーで放送する予定だったという「A子」に対する独占取材のVTRがあると言い、それを流すことに。

 そのVTRの冒頭には「人を好きになったらどんな手を使ってもものにするまで諦めないですね」という香取のラジオ番組での発言が抜き取って挿入され「香取慎吾を凶悪犯にした!? 本当の理由!」というテロップが躍る。

 発端はインターネット上の掲示板への書き込みだった。それはA子と香取の交際の様子を伝えるもの。翌月には、マンションの出口で2人をとらえた2ショット写真が掲載される。

 それにマスコミが追随し、「香取慎吾に新恋人!! 相手は女子高生」と報道。さらに、その後の続報で、2人は「交際」関係ではなく、香取が「ストーカー行為」をしていたという事実が発覚した。

 香取は一連の報道に対し沈黙を貫いたため、取材班は相手の女性A子に接触する。

 彼女は独占取材に応じ、その出会いからこれまでのことを語った。

「香取さんの誕生日に、私はプレゼントを用意していて渡そうとしたときに転んじゃったんですよ。そのときに香取さんが抱き起こしてくれて。そのプレゼントの中にケータイの番号を書いていてそれを見て電話をしてきてくれたんです」「彼は私と深い関係っていうのを考えていて。でもまだ高校生だし断ったんです」

 すると香取は待ち伏せをし「話がある」と強引に迫ったり、一方的にプレゼントを贈ったりしてきたという。そして彼女が香取からもらったというネックレスは、以前香取がしていたものと同じであることが、残された収録素材から証明された。

「この女子高生のインタビューからも慎吾くんがストーカー行為をしていた事実がハッキリしましたよね」

 VTR明け、前田忠明が語っていると、マスコミ各社に香取慎吾本人からFAXが届き、その文面が読み上げられる。 「世間をお騒がせして大変申し訳ありません。SMAPの香取慎吾を捨て、僕は一人の女性を愛して生きていきます。日頃お世話になっている皆様、ファンの皆様には、大変ご迷惑をおかけしますが、これも一人の男として決めたことです。わがままを許してください。香取慎吾」

 それに対し「わがままというより犯罪ですよ!」と前田が激昂している。 そうこうしているうちに、人質のうちの1人が自力で脱出。ナイフで刺されケガをしているという。脱出した女性の話では香取は錯乱しており、いつ危害を加えられてもおかしくない状況とのこと。これを受け、狙撃隊が現場に到着した。

香取慎吾を“凶悪ストーカー犯罪者”に仕立て上げたTV番組の顛末

 専門家も「もし女子高生に危害を加えたなら強硬手段もやむを得ないでしょう」と語る。番組では、視聴者へ「強硬手段をとるべき」か「引き続き様子を見守るべき」かで電話によるアンケートを実施するのだ。

 反響は凄まじかった。何しろ、ゴールデンタイムで超人気番組『SMAP×SMAP』の特別編だ。もちろん、番組中には何度も「これはフィクションです」というテロップを出していたが、局には「香取くんがあんなことするわけない!」だとか「香取くんが死ぬなら私も死ぬ!」といった電話が殺到した。

「山荘の部分は事前に収録したもので、それをスタジオと生中継風に掛け合いをしてもらうんです。だから、スタジオにいる司会者には『くれぐれもアドリブを言わないでください』ってお願いして(笑)。スタジオのコメンテーター役で出てもらったテリー伊藤さんに『あれ、VTRだったんだ。生だと思ってたよ、スゴイね!』って言われたときは嬉しかったですね。ディレクターの大先輩ですから」(長江)

 立てこもった香取慎吾に対して次の行動を問うアンケートにも、想定を超える数の票が集まった。どちらが選ばれてもいいようにVTRはふたつ用意していたという。

 視聴者の投票は「強硬手段をとるべき」が上回った。

 強行突入し、鳴り響く銃声。

 撃たれた香取がタンカに乗せられ運ばれていく。

 すると、突然、香取が立ち上がり画面に向かって語りかける。

「あなたはこの一連の報道をどう見ていましたか? 人の生死がかかわった状況であるにもかかわらず、ひょっとしたら興奮して楽しんでご覧になった方もいるんじゃないでしょうか。

 そう、特に『強硬手段をとるべき』に投票したあなた。あなたが知っていることがすべて真実とは限らない。いまからお見せする本当の真実。それを見終わった後、あなたはどう感じるのでしょう?」

 この後、香取側から見た事件の概要がドラマとして放送される。そうして実際にはまったく逆の“真実”が明かされていくのだ。

 再び「報道番組」に切り替わる。

「SMAPの香取慎吾容疑者が死亡しました」

「ショッキングな情報が入ってきました。たったいま、SMAPの香取慎吾容疑者の死亡が確認されました。繰り返します。SMAPの香取慎吾容疑者が死亡しました」と伝えられる中、番組は、香取のこんな言葉で締められる。

「時に誤解があったとしても人と人とは、わかりあえる。僕はそう信じている」

 フェイクドキュメンタリーは「もともと境界が揺らいでいるフィクションとドキュメントの本質を逆手に取って形にする表現」だと長江は言う。

「高度なメディア社会になったいまの世の中における視聴者のリアリティって、きっとニュース映像なんですよ。そのものズバリ、殺人の現場を見せるよりも、レポーターが殺人事件のあったマンションの前でしゃべっている方が現実感がある。そういうニュース番組の文法を応用するということが、まず考えた方法論です」(長江/『Quick Japan』Vol.57(太田出版)より)

 まさにこの方法論を使ったのが「香取慎吾2000年1月31日」だろう。そして、それを踏まえ「ドキュメンタリーの要素(実際の人物や事実、正しいデータ等)を物語の要所要所に盛り込むことで、作品を“フィクションなんだけれども、あり得るかもしれない怖い話”にみえるように工夫する。そういう真実と虚構の境界線の曖昧さを使って、どれだけ遊べるか、という実験」(『Quick Japan』Vol.57(太田出版)より)が『放送禁止』シリーズなのだ。

(戸部田 誠/Webオリジナル(外部転載))

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