エリート家庭のお嬢様→少年院にも入る筋金入りのワル→“日本初の女ヤクザ”になった西村まこ(58)の壮絶人生「学校のテストは100点以外なら竹の棒で体罰」
文春オンライン / 2024年10月20日 11時0分
国内で初めて「女ヤクザ」と認定された、西村まこさん。エリート家庭に生まれた彼女はなぜアウトローの道に…? ©細田忠/文藝春秋
父親は愛知県庁に勤める公務員、親戚の中には東京大学出身の裁判官も――。そんなエリート家庭で生まれながら不良の道に進み、ついには“日本最初の女ヤクザ”になってしまった西村まこさん。今では更生を果たし、地域住民からの信頼も厚いNPO法人「五仁會」(主な活動内容は暴力団および非行少年の更生支援など)の広報として活躍する彼女だが、そこに至るまでにどんな人生があったのか? インタビュー初回では、「彼女が育った家庭環境」について聞いた。(全6回の1回目/ 続き を読む)
◆◆◆
「体罰も当たり前…」西村まこが不良になった理由
――いわゆる“教育虐待”に当たるような厳しいご家庭で育ったと聞きました。
西村まこ(以下、西村) うちのお父さん、怖かったですよ。学校のテストは100点取るのが当たり前で、点数が悪いと竹の棒でビシビシ叩かれるんです。食事のマナーにも厳しくて、少しでもお箸の持ち方が変だったり、物を食べているときに音を鳴らすと、やっぱりビシッと叩かれました。
うちのお父さんは、小さい頃に両親を事故で亡くして、結構な苦労人だったんです。親戚の家をたらい回しにされる中でも必死に勉強し、働きながら夜間大学を卒業して、県庁の職員になりました。すごく努力して身を立てた経験があるからこそ、子どもたちにも勉強してほしかったんでしょうね。スパルタ教育がイヤでイヤで仕方なかったですが、年齢を重ねてお父さんのすごさがわかりました。
――お父様は公務員だったんですね。
西村 そうそう。愛知県庁でわりと偉かったみたいですよ。おじいちゃんは勲章をもらっているし、実はエリートの家なんです。
――まこさんだって、ヤクザの世界のエリートじゃないですか!
西村 あはは、こんなになったのは私だけです(笑)。
――そんなお堅い家庭の娘さんがなぜ不良に……?
西村 中学2年生のときのクラス替えで、ちょっと不良っぽい子と仲良くなったのが始まりでした。親が選んだ地味な服を着ている私にとって、その子が流行りのオシャレな服を着て髪を巻いているのは衝撃的で、どうしても真似したくなった。振り返ってみると、ファッションが不良の入り口でしたね。その子の家に遊びに行ったら、親も理解がある感じの親で、子どもと仲良く談笑しているわけです。「うちとはぜんぜん違う!」と何もかもが新鮮でした。
――ファッションが入り口となって、行動も不良化していったわけですね。
西村 性格が極端なんですよね。ファッションだけで満足できず、普段の行動から不良になろうと、家出にタバコ、車の盗難と、どんどんワルの道に進んでいきました。当時は、「補導されるくらいがかっこいい」と思っていました。地元で毎日ケンカ三昧でしたね。われながら強かったんですよ。危なくなるとそのへんの鉄パイプとかモノ使うから結局負けない。メリケンサックも使いましたね。あの頃、通販でよく売ってたから(笑)。
街の不良がなぜヤクザに?
――どのように街の不良から、本職のヤクザになったんですか?
西村 ケンカの強さが評判になって、「入れ墨女」とかあだ名つけられたり、デートクラブを立ち上げて稼いでいたりしたら、向こうからスカウトされました。最初は稲川会に声をかけられたんですが、あまりついていきたいと思える相手ではなかったので断りました。その後、「この人なら」と思える親分に出会って、住吉会の系列である杉野組に入りました。
――普通の不良は、「ハタチくらいでワルは卒業」みたいに考えるものですが、まこさんはそうじゃなかったんですね。
西村 どうせやるからには一番になりたい性分なので、私はワルを極めたかった。まぁ、さすがにスカウトされるとは思っていなかったけど、もともとヤクザの世界に興味はあったので、声をかけられたときは嬉しかったですね。
ほかの受刑者たちは「みんな優しくて楽しかった」
――少年院も含めると、人生で塀の中に何年くらいいたんですか?
西村 シャブやら傷害やらで中等少年院に1年3か月、特別少年院に1年、刑務所に2年半。合わせて約5年ですね。5年と聞くと長いですが、出たり入ったりなのでそう長くは感じませんでした。
――刑務所の中の人間関係は弱肉強食で大変そうなイメージがあります。
西村 いじめられる側の人は大変だと思います。でも私の場合は「女ヤクザが来る」ってあらかじめ噂になっていたらしくて、周りが勝手に怯えてくれたのか、あまりイヤな思いはしませんでした。むしろ受刑者の中では年齢が若いほうだったから、みんな優しくて楽しかったですね。年をとった人は食が細いから、お菓子とかを私にくれるんですよ。正直、私はそんなに食べ物への執着がないので、「もらっても……」という感じでしたが(笑)。
あの頃の女子刑務所は、ゆるかったです。先生(刑務官)が見ていないときは正座を崩して楽に座っていたし、塀の中で辛かった思い出は特にありません。雑居房はワイワイ楽しかったのに独居房はひとりでつまらなかったくらいですかね。
〈 「200万くらい儲かったかな」“三重県の売春島”に借金のある女性を売ったことも…日本初の女ヤクザが明かす「暴力団のビジネスモデル」 〉へ続く
(原田イチボ@HEW)
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