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同級生にイジメられ、無視されたことも…「大声で叫ぶのをやめられない」トゥレット症の20代女性が語る、病気を理解されずに苦しんだ学生時代

文春オンライン / 2024年10月20日 11時0分

同級生にイジメられ、無視されたことも…「大声で叫ぶのをやめられない」トゥレット症の20代女性が語る、病気を理解されずに苦しんだ学生時代

インフルエンサーとして活動する「トゥレット症候群」のへちさん ©三宅史郎/文藝春秋

 自分の意思とは関係なく、声を発したり、身体を動かしたりしてしまうトゥレット症候群であるへちさん。

 インフルエンサーとして活動する彼女に、幼い頃の症状、中学で経験した周囲の無理解、マウスピースを用いたアメリカでの治療などについて、話を聞いた。(全2回の1回目/ 2回目に続く )

◆◆◆

悩まされた合併症の強迫性障害

――トゥレット症候群とは、どういった疾患になるのでしょうか。

へちさん(以下、へち) 先天性の病気になりまして、自分の意図なしで体が動いてしまったりとか、声が出てしまったりするんです。それに伴って、うつ病やADHDなどが合併症として付いてくる病気ですね。

――チック症とは違う。

へち チック症は、運動か音声かどちらかが症状として出る。で、運動チックと音声チックの両方が1年以上続いた場合、トゥレット症候群という診断になって。トゥレット症候群になると、いま言ったような合併症の発症が多くなるんです。

――症状は、運動と音声のどちらかに偏って生じるのでしょうか?

へち 幼少期とかに首を振るクセがあるとか、多めに鼻をすするクセがあるといった程度のチック症状の人もいますし。どちらが多いとは言えないんですけど、運動か音声のいずれかが症状として出て、一定期間で消える人が多いと思います。

――トゥレット症候群は合併症も生じるとのことですが、へちさんはどんな合併症が。

へち 強迫性障害です。私はチック症状も出るけど、昔から合併症の強迫性障害に悩まされてきていまして。それが一番大変ですね。

――強迫性障害。

へち たとえば、「この道をどうしても右に行かねばならない」とか、「右に行かなければ、なにかすごい悪いことが起こるんじゃないか」みたいな。まったく行く必要がないのに「行かねば!」となっちゃう。ほかには、手を洗わなくてもいいのに「洗わねば!」みたいな。そういうのが強迫性障害です。

 いつから強迫性障害が始まったかは自覚してないんですけど、小学生の頃にはもうありました。チック症は、両親が5歳の頃の私を見て「アレ?」となったそうです。

「この子はチック症かもしれない」両親が気づいたきっかけ

――わかるものなのですね。

へち 両親は、医療系の仕事に就いているのでピンときたんです。両足でピョンピョン跳ぶ動作をずっと繰り返してたらしくて。「もしかしたら、この子はチック症かもしれないね」と言ってたのが、だんだんと確信になっていって。

――両足でピョンピョンは、5歳ならありがちな動作っぽいですが。

へち やっぱり、違和感を抱くほど繰り返してたんだと思います。ただ、可能性が高いとなっても、さっきも話しましたけど、一時的に出て治まることはよくあることなので。

――それは運動チックだったわけですね。音声チックは、いくつぐらいから?

へち 音声チックは、幼稚園の年長さんあたりで。ブタがブヒブヒするみたいな感じで、鼻をガーガー鳴らすのをやめられなくて。止めたくても止められないというのがチック症なので。親に「やめられないの」と訴えてたそうで。私もさすがに記憶が曖昧なんですけど、同じクラスの男の子から「ブタじゃん」って言われましたね。やっぱり、言われてイヤだったのは覚えてます。

――そうしたとき、両親はどんな言葉を。

へち 当時は特になにか言われた記憶もなく、見守っててくれたというか、そんな感じだと思うんですけれども。いずれ治まるかもしれないというのもあったでしょうね。

「ものすごいボリュームで、教室で叫び出し…」小学生時代の症状

――幼稚園や小学校で、自分以外にチック症の子はいましたか。

へち 小学生のとき、弟の友達でチックしてる子がひとりいて。「あの子チックしてるなあ」と思って、親に「チックしてたよね」って聞いたら「ああ、そうなのよ」って。

――小学校とか、普通にいましたよね。目をパチパチやっている子とか。

へち そうです、そうです。ほんと、ちっちゃい子はけっこういるんですよ。

――小学生になると、現れる症状も変化していったのですか。

へち 小学校は重症だった時期があって、叫び声が止められなくなったんです。ものすごいボリュームで、教室で叫び出すと、その階すべてに響き渡るくらいで。もちろん、学校の先生がクラスメートたちに私のことをちゃんと説明してくれて。おかげで、ある程度は理解してくれるようになりましたね。

 叫ぶ症状のピークは小2からで、小1の頃は運動チックだけでした。いまもあるんですけど、首振りがやめられなかった。あまりに振りすぎて頭が揺れるから、頭痛がするほどで(笑)。

ゲーム中は症状がひどくなる

――先生は、どのようにクラスメートに説明を。

へち まず、チックは病気なんだと話して。で、鼻クソほじってる男の子に「おう、それチックだぞ」とか言って、みんなを笑わせて、空気がなごむようにしてくれたんです。それでグッとみんなも理解してくれて。

――学校に行くのがストレスになって、チック症状が出てしまうところも?

へち 小学校は楽しかったので、ストレスで出たわけじゃなかったと思います。シチュエーションとか関係なしに出ちゃうんで。首を振るのはやめられなかったけど、授業中になにかできなくて困ったことってあんまりなくて。

 4歳からクラシックバレエやってるんですけど、踊ってるときもあんまり出なかったです。

――好きなこと、楽しいことをしているときは出ない。

へち そうなんですけど、ゲームだけは例外で。これはチック症の人のほとんどが、症状がひどくなるって言いますね。やっぱり脳の病気なんで、おそらくゲームをやるときに使う部分が作用するんじゃないですかね。

 でも、ちっちゃい頃はゲームする時間が制限されていて。1日15分とかで、そっちのほうがつらかったんですけど(笑)。

小学生時代にうつ病を発症した理由

――林間学校なども楽しく過ごせましたか。

へち ちょうど林間学校がある学年の頃は、あんまり症状が出てなくって。困ったことはなかったですけれども、中学、高校でバレエの海外短期留学するときは、誰かと同室になるのが不安で「1人部屋にしてください」ってお願いしてましたね。症状が出て、驚かれるとアレなので。

 困ったのが叫び声ぐらいで、小学生の頃は生活面では落ち着いてました。

――「生活面では」というと、他の面では落ち着かないことがあった?

へち 合併でうつが出てたんですよ。それで、飲むと元気の出る薬を飲んでたんですけど、たまに薬が効きすぎちゃって。テンションが上がりに上がって、学校ではっちゃけまくってたら「大丈夫?」って友だちに心配されちゃったりしてましたね。

 あと、こたつに潜り込んで「地球は滅びる」とか言ってたらしいです。

中学時代は症状を真似されたり、無視されたりした

――中学は、辛い環境にあったそうですが。

へち 思春期というか、そういう年頃なのもあって、キツかったですね。排他的な考えの人が多くて、チック症だって言うのが怖くて言えなかったんですよね。隠そうとしてたけど、どうしても症状は隠せないので、それでいじめみたいになったりして。

 チック症だとバレてはいなかったみたいなんですけど、症状を真似されたり、無視されたり。

――中学は荒れていた感じですか。

へち 全然荒れてなかったんですよ。優等生ばかりで、ヤンキーは1人もいないみたいな感じだったんですけど。

――意地の悪い優等生もいたと。

へち 学校にいるときは、なるべくチックを抑えようとしてたので、ちいさく「ハッ」みたいな、しゃっくりみたいなのが多かったんですけど。授業中に出ると、まわりの席の男子が真似してたりとか。やってくるのは男子ばかりで、女子はみんな「この子は、なにかあるんだろうな」と思ってたみたいです。

保健室に行くと「サボり癖がついてる」と言われ…

――学校に相談は。

へち やっぱり、授業に出られなくなったんですよ。で、親が「ほかの部屋で授業を受けさせてもらえませんか?」って学校に聞いてくれたんですけど、いまみたいにリモートが整ってるわけでもないし、10年以上も前だと教育の現場も頭がすこし固くて、「そんなのできません」みたいな。

 結局、症状が出てつらくなったら保健室に行ってということに。

――意地悪な同級生は、保健室に行ったりすると「あいつ、なんだよ」みたいなことを言いませんでしたか。

へち 「サボり癖がついてる」とか。

 中2のとき、一番仲の良かった子にだけ打ち明けたんです。でも、いきなりチック症のことを説明してもわからないだろうなと思って、まずは癖が悪化しちゃう病気って言ったんですよ。そこから段々と詳しく伝えようかなと。そうしたら、中学の頃って自分が一番つらいって考えてしまう時期だから、「え、そんなことで保健室に行ってるの?!」って返されてしまって、心が折れました。

――学校側は、雑な対応をしていたとはいえ、チック症がどんなものか理解はしていたのですか。

へち してなかったんじゃないかと。両親は分厚い手紙を何通も学校に出して理解を求めたけど、配慮してくれたとは感じられなかったです。

 保健室の件も、症状が多く出たら保健室に行ってもいいよってだけで。授業してくれるわけじゃなかったので。

高校時代にマウスピースの治療を受けた

――高校はどうでした。

へち 高校に進んで、症状が少しマシになって。それに加えて、学校がクラス制じゃなくて、単位制だったんですよ。そういう学校だったからか、個人主義というか、あんまり他人のことにとらわれない人が多くて。

 どれだけ休もうが、どれだけ保健室にいようが、単位さえ足りてればOKみたいな感じで、みんなもそれなりに単位を数えてサボったりしてたので。全日制だと授業に出られなくなったりすると、サボりみたいに見られちゃいますけど、単位制だと単位が取れてればいいってのが前提にあるので、生活しやすかったですね。

――「高校に進んで、症状が少しマシに」なったのは、なにか治療的なことをしたから?

へち 高2からマウスピースの治療をアメリカで受けて。それが私には劇的に効いて。マウスピースを着けてる間は、症状がまったく出ないんですよ。だから、授業中だけパクッと咥えて、授業が終わる頃にこっそり外して、とかやって。

――マウスピースで止まった。

へち アメリカで治療をやってくれた先生というのが、歯科治療でトゥレットの治療をしている方で。私が着けていたマウスピースは、チックを抑えるために作られたものなんです。

 チックの発症原因はいろんな説があるんですけど、その先生が言うには、脳の炎症が原因だと。顎関節が狭いと脳に炎症が起きて、それがチックを引き起こしているそうなんですね。だから、マウスピースを入れると狭かった顎関節が広くなって、脳の炎症が緩和されて、チックの症状が出なくなるという理論で。

「チック症の美少女」と拡散されてしまったワケ

――実際、止まったわけですよね。

へち 私には効きました。これも先生いわくなんですけど、チック症の人は普通の人より酸素を吸える量が少なくなっているそうで。で、マウスピースを入れたら、すっごく呼吸がしやすくて「呼吸って、こういう感じだったの?!」って。ほんと、そのマウスピースをつけてる間は呼吸が楽だし、体力もすごく長持ちするようになって「みんな、こんな楽に生きてるんだ!」って、すごいビックリした記憶がありました。

――呼吸は顎関節と関係が。

へち それも先生いわくですけど、顎関節が狭くなっちゃって、呼吸の通り道が少なくなって、息がしづらいと。実際、マウスピースの治療をして、息がしやすくなったというチック症の方は多いです。

――アメリカで受けた治療の効果は、あまりに劇的だったと。

へち でも、後に思わぬことも起きちゃって。私がマウスピースを試しているところを撮った動画が「チック症の美少女」「謎のチック症少女」みたいなロリっぽい扱いで、どんどん拡散されてしまったんですよ。

撮影=三宅史郎/文藝春秋

〈 「ネットで『チック症の美少女』と言われ…」「私の動画が“ロリ扱い”で拡散した」トゥレット症の20代女性が明かす、病気に対する周囲の意外な反応 〉へ続く

(平田 裕介)

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