「ふたりで話しているんですけれど、民生さんからもし…」達成したらPUFFYが解散するかもしれない“最終目標”
文春オンライン / 2024年10月9日 8時0分
©三浦憲治
〈 「これはシングルじゃないな(笑)」「でも陽水さんの歌詞が届いてびっくり」大ヒット曲「アジアの純真」が生まれた瞬間 〉から続く
2年後に30周年を迎えるPUFFYには“最終目標”があるという。「達成したら解散しよう」とふたりで話し合っていることとは…。(全2回の後編/ 前編を読む )。
◆◆◆
なにがなにやらわからないままデビュー
――これは大変なことだという自覚が芽生えたのは、「アジアの純真」でデビューしたあとですか?
大貫亜美 いや、どうだろう?
吉村由美 自覚はまったくなかったんですよね。デビューして、「サインしてください」と言われても、「え、まだ決めてないんだけど」みたいな。サインなんて大人が決めてくれるものだと思っていたくらいで、衣装に関しても、楽屋にTシャツが置いてあるからそれを着るのかって。民生さんには、音楽以外のことはなにも言われませんでしたけど、他の人も教えてくれないから、なにがなにやらわからないままデビューしたという感じです。
亜美 民生さんが「俺は鵜飼いであいつらは鵜だ」と言って、「う」と書いてあるジャンパーをくれたんですよね。それがデビュー後の目に見える成果というか。そのときに、私たちは鵜として立派にやっていけてるのかもと思いました(笑)。本心ではどう思ってたんだろう?
由美 どんなことを思ってたか知りたいね。なんで聞かなかったんだろう。
民生さんは「いまは親戚のおじさんみたいな感覚」
――民生さんは本心の読めない人なんですか?
亜美 謎ですね。ひとりでいるのが好きだけど、必ずまわりに誰かがいて、その人たちのためにいろいろやって。でもなにを考えてるかというと、決してわかりやすいタイプの人ではない。ただ、そこで気持ちをくみ取る必要もないというか。
由美 「黙ってるから不機嫌なのかな?」と思うのは、とうの昔にやめたよね? いろいろ考えてると思うんですけど、他人が考えるよりフラットなんだろうなという印象です。だから民生さんと一緒にいても、無言で1時間過ごせるなって。お互いにしゃべらなくてもなんとも思わないですし、気にならないようにいつの間にかなってました。
――一緒にいて居心地がいい、というのとはまた違いますか?
由美 会話が弾んで話が止まらないということはないけど、しゃべるときはしゃべるし、あえて話す必要もないし。最初の関係とは違ってきて、いまは親戚のおじさんみたいな感覚です。民生さんしかり、私たちに携わってくれた先輩ミュージシャンの方々はみんなそうですね。会うと、「お前らがんばってるか?」って言われるみたいな。
亜美 久しぶりに実家に帰ったら親戚のおじさんがいて、「もう帰る」と言うと「駅まで乗せてってやるよ」って、おじさんとふたりでトラックに乗ってるみたいな空気? こっちはずっと携帯いじってて、「じゃあ元気でなー」「また来るよー」って。伝わるかな?(笑)
めちゃめちゃ難しい民生さんの曲
――想像できます、その空気は(笑)。民生さんが作る曲の魅力はどこにあると思いますか?
由美 民生さんの曲はめちゃめちゃ難しいんですよ。たぶんPUFFYの曲の中で、いちばん難しい曲を書くのが民生さんかな、っていうくらい。そういう曲をサササと作ってのけるところがカッコいいし、一生追いかけたい背中だなと思うところです。自分も何年もやってきて、成長するところは成長したんですけど、それでも民生さんから曲が来ると「ゲッ、難しい!」って。
亜美 自分たちの曲なので、私たちの歌い方が正解だと言われればそうなんですけど、私たちは民生さんのデモを聴いて育ってきたので。どうやってもああはなれないです。
由美 最初のデモテープは「ラララ」でもらうんですけど、あまりにも忙しい時期はレコーディング当日に歌詞ができあがってきたりして、すると民生さんが「一回歌うわ」って歌ってくれるんですよね。それを一生懸命聴いて、お手本にして歌うんですけど。
――難しいと感じながら、いい曲だと思って聴くんですよね?
亜美 そうです。聴きながら、これをそのままリリースすればいいのにって(笑)。めっちゃいいじゃん、この曲っていつも思います。
由美 ほんとそう。最近、PUFFYの曲をよくカバーしていて、あれはやめてほしい(笑)。私だって、そっちを聴きたいよって思うから。本物は出てこないでもらいたいです。
亜美 セルフカバー禁止にしよう。
由美 民生さんだけじゃなくて、全員禁止にしたい(笑)。
亜美 あはは!
武者修行に出て、成長したなと思われたかった
――2000年のアルバム『SPIKE』を境に、民生さんとの関わりが減っていきましたよね。どうしてだったんですか?
由美 大人にならなきゃと思ったんです。毎回ずっと民生さんとやっていけるなら、もちろんそれに越したことはないんですけど、それじゃあいけないのかなって。武者修行に出て、次に民生さんとやるときには成長したなと思われたい、そういう時期でもありましたね。
それまではステージに立つことが怖くて、やっと楽しさがわかってきた時期だったし、じゃあいろんなことに挑戦してみようって。アメリカに行ったのもそのころです。行ってみたら、デビュー当時の自分たちがどれだけ恵まれていたかがわかって、もっと成長しなきゃ、もっと勉強しなきゃって。それが何年か続きました。がんばったよね?
亜美 うん、がんばった。それでアメリカから帰ってきたあとかな、民生さんのおうちに遊びに行って、曲を書いてくださいってあらためてお願いして。
由美 私たちはやっぱり民生ファミリーなので……ないんですけど、そんなの。
亜美 いや、ある(笑)。
由美 なにかあるごとに一緒にやりたいのはいまだに民生さんですし、「解散する?」ってなったときは絶対に民生さんとやれるようにがんばっておこうと思ってるんですね。「お前らとはやりたくないよ」って言われないようにがんばろうって。
「民生さんに◯◯られたら解散しよう」って
亜美 絶対に褒めてくれないので、民生さんに褒められたら解散しようってふたりで話してるんです。だから褒められることが私たちの最終目標なんですけど、一度ものすごく軽く褒められたことがあって。
由美 フェス後のバックステージだったよね。「どうでした?」って聞いたら、すごく軽いタッチで「あー、よかったよー」って。
亜美 しかもマッサージを受けてる状態(笑)。なによ、その不真面目な褒め方はって。だからあれはノーカウントです。
――民生さんとのこれまでを振りかえって、面白かった出来事というとどんなことですか?
亜美 レコーディング合宿で「ボンバーマン」をやったことかな。気がついたら、みんなすごく強くなってた。しょうもな(笑)。
由美 親戚のおじさんだから許すけど、おなかの肉をつまんできたことがあったでしょう? 力を抜いてたら、「おーい」って。そんなところをつまむんじゃないわよ(笑)。レコーディングのとき、パンストをかぶりながら歌ったこともあったよね。
――リップノイズをカットする機材にストッキングの生地が使われていて、だったらかぶっても一緒じゃんって考えたんですっけ?
由美 最後は歌わないスタッフさんまで、なぜかかぶってましたから。
亜美 男性のエンジニアさんは足がきれいだという理由でパンストを穿いて、「本当だ、すごいきれい!」ってみんなが言う、そういうレコーディングをしました(笑)。
――民生さんとの仕事で最新のものは、2023年の『劇場版 シルバニアファミリー フレアからのおくりもの』の主題歌「SweetSweet」ですよね?
亜美 あのときはまず私たちに主題歌のお話が来て、それなら民生さんとやりたいなと思って相談したんだよね。
由美 聞いたら、ユニコーンのレコーディング中でめちゃめちゃ忙しい時期だったんですけど、シルバニアの人形をそばに置きながら必死で生み出してくれたみたいです。
――アルバム『SPIKE』に収録された「スイスイ」「スーイスーイ」に連なる曲だと思って、グッと来るものがありましたけど。
亜美 私もチラッと思いました。
由美 でも民生さんは絶対忘れてると思うよ。
亜美 覚えてないかー。そうだよね。いまわかりました、偶然だったみたいです(笑)。
PUFFYの30周年も間近に
――民生さんがソロ活動30周年を迎えたということは、PUFFYの30周年も間近に迫ってきているはずです。これまでを振りかえって、どんなことを思いますか?
亜美 私たちはこの30年近く、立派な鵜として先生に貢献することができたのか、それがいちばん気になるところです。そうなれていたらいいんですけど。
由美 30周年までまだ時間がありますからね。鵜らしさを発揮しましょうよ。
亜美 「あいつら最近、獲ってくる魚が少ねーな」って(笑)。
由美 なので、いっぱい仕事して、いろんな曲を聴いてもらってさ。私たちがずっと自由でいられるのも民生さんのおかげだし、私たちは民生さんと一緒にやれてよかったとずっと思っているので。
亜美 そうだね。
由美 でも鵜飼いに「いい鵜だ」と思ってもらえなかったら困るから、もうちょっと働こう。
亜美 うん、働きましょう。
撮影 三浦憲治
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(門間 雄介)
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