同級生から「お前の髪の毛には汚れがたまってる」「ばい菌だ」と攻撃され…自殺を考えた副島淳(40)が明かす、壮絶なイジメと母親の意外な反応
文春オンライン / 2024年10月20日 11時10分
副島淳さん(40)
NHK『あさイチ』などで活躍するタレントの副島淳さんが、唯一無二のキャラクターを活かした活動ができるようになるまでの道のりは、平坦ではなかった。「見た目」の違いから小学生の時にはいじめに遭い、自殺を考えるほど追い詰められた。
芸能活動を始めた後も、ステレオタイプな役を求められ、葛藤があったという。そんな副島さんは、「“逃げ”が今につながった」と話す。その真意を聞いた。(全2回の1回目/ 続きを読む )
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英語はまったく喋れない、下町育ち
――副島さんは下町育ちだそうですね。
副島淳さん(以降、副島) 大田区蒲田で生まれ、その後、葛飾で過ごしました。日本からずっと出たことがなくて、海外に初めて行ったのは32歳。英語もまったく喋れないです。
――生まれ育ったご家庭はどんな感じでしたか?
副島 お母さんが日本人で、お父さんはアメリカ人なんですけど、母は未婚のまま僕を生んで、父もすぐ蒸発してしまったので、顔も知らなかったです。
小さい時は母と母方の祖母とワンルームに3人暮らしで、貧乏でしたけど、おばあちゃんがずっと世話してくれてたし、たぶん満たされていたんでしょうね。お父さんのいない環境を特殊とか変とかって思うこともなかったです。
――小さい時にミックスルーツであることを意識することは?
副島 まったくなかったです。ずっと日本語しか使ってなかったし、見た目の違いを感じるようなこともなく。
ただ、小学校3年生の時に浦安に引っ越してからいじめに遭うようになって、それまではたまたま幸運だっただけと思い知ったというか。
複雑な事情で、礼儀作法に厳しいおばあちゃんの元へ
――引っ越しの理由は?
副島 5、6歳の時に母がそれまで付き合っていた方と結婚したんですけど、その後離婚することになって。これもちょっと複雑なんですけど、離婚相手のおばあちゃんが住んでいた浦安に、僕たちが一緒に暮らすことになったんです。気前がいいというか、懐の深いおばあちゃんで、「これから母子でどうしよう」という時に声をかけてくれて助かったと思います。
おばあちゃんは三味線の先生だったこともあって、礼儀作法にめちゃくちゃ厳しくて。箸の使い方から正しい正座の姿勢まで、いろいろと教えてもらいました。
――子どもとしては大変でもありそうな。
副島 まあ、当時はめんどくせーって感じしかなかったですよね(笑)。関西の人だったから味付けも出汁がベースで、子ども的には「味薄っ」って(笑)。
――礼儀正しいお子さんということかと思うんですが、いじめが始まったきっかけは。
「お前の肌の色は黒いから汚いんだ」「ばい菌だ」と攻撃されて
副島 はじめは理由がわからなかったんですよ。それまでお調子者で誰とでもすぐ仲良くできてたから、転校先の浦安の学校でも同じ調子でガンガン皆に話しかけて仲良くしようとしたら、全部シカトされて。
――なにかきっかけがあったわけじゃなく。
副島 だから、正直それが一番つらくって。相手を怒らせるようなことをしたなら謝ったり改善のしようもあると思うんですけど、のっけから無視だったんで。
それで、もう原因がわからないから一人でいようと思った矢先に、「お前の肌の色は黒いから汚いんだ」「ばい菌だ」とかって攻撃が始まって。僕の髪は天然パーマなんですけど、「お前のその髪の毛のクルクルには汚れがたまってる」とかって言われたり。
そうして見た目に対して言われたことではじめて、「あ、それがハブられた原因だったんだ」と気付いたんです。
――「見た目の違う転校生」という目立つ存在であったことがいじめの原因だったと。
自分の殻に閉じこもり逃げ回っていた
副島 引っ越した地域は新興住宅街で、同級生たちは同じ地区で育ち、保育園からずっと一緒に過ごしてきた仲間なんですよね。で、そういう子どもたちで構成された30人未満のクラスが2クラスしかなかった。僕は見た目も育ちも違うから、少ない生徒数の中で余計に目立ってたと思います。
その中にいじめてくるグループがあったんですけど、それ以外の子たちも自分が標的になるのは嫌でしょうから、巻き込まれないために静観していた、という感じで。そのうち、サッカーゴールの前に立たされてボールの的にされたり、教科書や靴を隠されたりしていじめがエスカレートしていって。
――いじめに対してなにか行動をされたのでしょうか。
副島 何もできなかったですね。僕と同じ肌の色を持つ父親のことも知らなかったし、ずっと日本で育って日本語しか喋れない自分がまさか周りと違うなんて思ってもなかったので、いじめっ子の言葉をそのまま受け止めてしまって。
「この肌は汚い色なんだ」とか、髪の毛をずっと引っ張って「ストレートになれ」ってやったりして、自分で自分を追い詰めてしまった。だから、相手に対しては、防御も攻撃も、何も対処できなかったんです。それに、泣いたり抵抗したりすると余計面白がっていじめがエスカレートすることもわかったので、ひたすら身を隠して目立たないように、自分の殻に閉じこもって逃げ回っていました。
いじめを笑い飛ばし「何もせず目立つのはすごいこと」と言った母
――ご家族に相談したことは?
副島 「なんで勝手に俺のこと産んだんだよ」とか、「本当のお父さんはどこにいるんだよ」とかって、母親にめちゃくちゃ当たったこともあります。いじめているやつらと肌の色が一緒の母親のことを、当時は敵として捉えてしまってました。
かなり母に暴力的な言葉をぶつけて、学校で起きていることも全部話して、これでさすがに学校は休めるだろうと思ったけど、「それ、めっちゃ目立ってるってことじゃん」と笑い飛ばされたんですね。
――お母さんの反応は意外なものだったんですね。
副島 「みんな頑張って目立とうとして勉強したりスポーツしたりして頑張るのに、何もしてないのに目立つのはすごいことだよ」みたいなことを言われて。「みんなお前のことをほっとけないってことだから、お前ってスペシャルなんだよ」と。で、「今は自分のことを大嫌いかもしれないけど、いつか絶対、この姿かたちで産まれてよかったと思える時が来るから、学校へは絶対行け」と、引きこもらせてもらえなかったんです。
――副島さんは納得できた?
副島 正直、当時は「こいつ何言ってんだ」「話通じねえ」と思いましたよ。ある意味、荒療治というか。
その後、いじめっ子が家のアパートにまで来てエアガンを撃ちこんできたんです。それで、自分が安心できる居場所はもうどこにもないから自殺するしかないと、マンションの最上階まで登りました。でも、下を覗き込んだら怖くなって、逃げ帰りました。
僕の性格を一番わかっていた母
――今、当時のお母さんの言葉をどう受け止めている?
副島 親子の関係性はそれぞれあると思うので一概には言えないですけど、母の当時の接し方が正解だとは思わない……というか、なんなら限りなく不正解に近いとすら思ってて。
ただ、その一方で、僕の性格を一番わかっている母親だからああいう風に言ったとも思うんです。自分はもともとおちょけ、お調子者なんですけど、たまたま引っ越し先で歯車が狂っていじめに遭ってしまった。だから、何かちょっとしたことでも一個カチッとハマれば、本来の明るさを取り戻せることをわかってたんじゃないかなと。案の定、その後にバスケットと出会ったことで、自分はどんどん元気になっていったので。
――バスケットをはじめてから、いじめてきた相手との関係性にも変化があった?
副島 「エッ、そんなことある?」ってよく言われるんですけど、今は普通に飲み友だちなんですよ。
バスケを始めたら「頑張ってるじゃん」みたいな反応に変わった
――相手から謝罪などがあった?
副島 ないですね。当人たちは覚えてないんですよ。僕が昔の体験を語っているのをメディアで見て、「これ、誰のこと言ってるの?」みたいな。「いや、お前だよ」みたいな。
――末代まで呪うみたいな気持ちになりそうですけど、そういう気持ちはなかった?
副島 中学生になってバスケを始めたら、いじめてたやつらも「副島、頑張ってるじゃん」みたいな反応に変わっていって。小学校からメンツもほとんど変わってないんですけど、どんどん交流できるようになって。
その時、きれいごとに聞こえるかもですけど、「やっと仲良くなれた」っていう気持ちが一番だったんですよね。スタートはその子たちと仲良くなりたかったので。でも、一方で、死んでそいつらを傷つけてやりたいって気持ちもすごく分かるんですよ。
――実際、自殺を考えたこともあったわけですよね。
いじめに関する啓蒙活動も
副島 自殺はよくないことだし、死ぬことだけはしないでくれ、というのは講演とかでもずっと言ってるんですけど、自分が死ぬことで少しでもそいつらの記憶に刻みたい、という気持ちも本当によくわかるんです。
ただ、結局自殺しても、そいつらは忘れると思うんです。いじめた方は自分の人生の中の1分1秒でしかないけど、いじめに遭った方は一生忘れない。そのギャップが、いじめに対する意識の差に現れている気がしています。
――副島さんは、いじめに関する啓蒙活動も精力的にされています。
副島 当時の自分が講演会に来ていたら正直、反感しかないと思うんですよ。「お前なんか、たまたまテレビに出て活躍してるからそういうこと言えるんだ」って絶対思うだろうなって。
でも、全然自分の話ってサクセスストーリーだとは思ってなくて。毅然と相手に立ち向かう勇気もなく、ただただ怖くて逃げ回ってただけだし。
バスケを始めたのだって、「恵まれた身体能力があって始めたんですよね」と言われることもあるんですけど、サッカー部はいじめっ子がいたし、野球部は先輩がヤンキーで。そんな中で、バスケ部だけは他の小学校からの部員が多かったし、先輩も優しかったから、「これはいい抜け道だ」ってだけで入部して。
で、その逃げた先のバスケが、芸能界の道にもつながっていたんです。
写真= 杉山秀樹/文藝春秋
〈 小学2年で外国人に誘拐、手足を縛られ…“身長2m”の副島淳(40)が語る、今も消えない幼少期のトラウマ「夜中の公園で声をかけられて…」 〉へ続く
(小泉 なつみ)
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