「AirPods Proの10分の1価格」で買える物も…アクティブノイズキャンセリングを搭載したワイヤレスイヤホンの最適コスパは?
文春オンライン / 2024年10月12日 17時0分
今回は実売5000円以下で入手できるアクティブノイズキャンセリング(ANC)機能搭載の完全ワイヤレスイヤホン3製品を比較します。左から、シャオミ「Redmi buds 6 Lite」、Donner「Dobuds ONE」、グリーンハウス「GH-TWSW」
周囲の雑音と逆位相の音を発生させることで、耳障りな雑音を打ち消してくれるアクティブノイズキャンセリング(ANC)機能を持ったイヤホンやヘッドホンは、近年は対応製品も数多く発売され、注目度の高い存在です。
有名どころとして挙げられるのは、Appleの「AirPods Pro」やソニーの「WF-1000XM」シリーズで、実売価格は3万円前後とかなりのお値段ですが、最近では1万円以下の価格帯でも、ANCの搭載をアピールする製品が増えてきました。
今回はそのさらに下、実売価格が「5000円以下」という条件で3つの製品をピックアップし、ANC機能を中心とした性能および使い勝手を、Appleの「AirPods Pro(第2世代)」と比較しつつ紹介します。
2480円という衝撃価格で40dBまで対応のシャオミ
まずはざっと、3つの製品の特徴を紹介しましょう。
最初に紹介するXiaomi(シャオミ)の「 Redmi buds 6 Lite 」は、最大40dBのアクティブノイズキャンセリング機能を搭載しながら、実売価格2480円という衝撃的なプライスで、今夏に大いに話題になった逸品です。
価格ばかりが目立つ本製品ですが、基本性能も充実しています。連続再生は7時間、ケース併用で最大38時間の再生に対応するほか、10分の充電で約2時間の再生が可能なので、電池切れの場合も少し待つだけで使えるようになります。ただし後述する2製品と異なり、防水仕様でない点は要注意です。
イヤーピースは3サイズが付属。価格を優先したためか、後述する2製品と異なり、充電ケーブルが付属しないのはマイナスです。さらにケース・本体ともに光沢感が強く、取り出す時に指先を滑らせて落としやすいのも、実際に使っていると多少気になるところです。
4000円台で手に入りオプションも豊富なDonner
続いては30dBのアクティブノイズキャンセリングに対応したDonnerの「 Dobuds ONE 」。実売価格5999円の品ですが、セールや割引クーポン配布は定期的に行われており、実質4000円台での入手も比較的容易です。筆者は今回、Amazonでクーポンを利用し4299円で購入しました。
IPX4の防水規格にも対応したこの製品、大きな利点として挙げられるのは、イヤホン側面のボタンのタッチ面が大きいことから、操作ミスが少なく確実にコントロールできることです。またケースからの取り出しおよび収納も開口部が広いため扱いやすく、指を滑らせてうっかり落としてしまうミスも、前述のシャオミ製品と比べると起こりにくいのは利点です。
連続再生は8時間、ケース併用で最大32時間の再生に対応するほか、シャオミ製品と同様、10分の充電で約2時間の再生が可能なので、電池切れの場合も少し待つだけで使えるようになります。充電ケーブルも添付されるほか、イヤーピースは5サイズが付属するなどオプションも充実しています。
2000円台と格安だが性能が不明なグリーンハウス
最後に紹介するのはグリーンハウスの「 GH-TWSW 」。実売価格2556円と、シャオミ製品に匹敵するリーズナブルさが特徴です。アクティブノイズキャンセリングに対応しますが、ほかの2製品のように何dbかが仕様に明記されていないのが少々気になります。
IPX5の防水規格に対応しており、マルチペアリングにも対応するなど、機能も充実しています。また外観上の大きな特徴は、バッテリーの残量がケース正面にパーセンテージで表示されることです。大雑把にLEDの残り個数でしかバッテリー残量を把握できない他社製品と比べた時に、このわかりやすさはひとつの強みです。
イヤーピースは3サイズが付属するほか、充電ケーブルも添付。連続再生は約6時間、ケース併用で最大18時間の再生に対応と、他の2製品に比べるとやや長時間利用は苦手です。またカラーバリエーションが2色のみと、色の選択肢は比較的少なめです。
AirPods Proと比べて3製品のANC性能は…
ではあらためて、各製品のアクティブノイズキャンセリング(ANC)機能について見ていきましょう。以下、各製品はメーカー名の「シャオミ製品」「Donner製品」「グリーンハウス製品」と表記します。また検証はiPhoneと組み合わせて行っています。
今回の3製品はいずれも、ANC機能のオン・オフに加えて、外の音をそのまま通過させる外音取り込みモードを搭載しており、耳に装着したまま一時的に外の音を聞くことも可能です。つまりどの製品も、ANCオン→ANCオフ→外音取り込みという3つのモードを切り替えて利用するという点で共通しています。
操作方法は、シャオミ製品は左右どちらかの側面を長押し、Donner製品は右側面を3回タップ、グリーンハウス製品は左側面を3回タップと、それぞれ異なりますが、本体だけで簡単に切り替えられます。シャオミ製品とDonner製品は専用のスマホアプリも用意されていますが、なくてもANC機能は利用できます。
さて肝心のANCの性能ですが、製品ごとにかなりの差があります。結論から言ってしまうと、AirPods ProのANC機能を「10」とした場合、今回の3製品のANCの効果は、シャオミ製品とDonner製品は「8」、グリーンハウス製品は「6」といったところです。
例えばAirPods Proの場合、家庭内のテレビの音や換気扇のファン音、スリッパと床が擦れる音、さらには新幹線車内の走行音など、身の回りの音の大部分が消えてしまいますが、シャオミ製品とDonner製品はある程度の音が残ってしまいます。
傾向としては、シャオミ製品はスリッパと床が擦れる音は消えやすかったり、Donner製品は新幹線の走行音に比較的強いといった具合に、得意・不得意な帯域がありますが、平均的に見るとこの両者のANC性能はよく似ています。総じて、ANCの効果は確かにあるものの、AirPods Proほどオールラウンドで強力な効果が得られるわけではなく、AirPods Proを「10」とした場合は「8」程度、というのが実際に使った上での結論です。
一方のグリーンハウス製品は、ANC非搭載の製品とはさすがに明確な差はありますが、平均的にANCの効果は弱く、実際に使っていてANCがオンなのかオフなのかわかりづらく感じることもしばしばだったりと、他の2製品とはかなりの差があります。スペックに具体的なdb数が書かれていないのは、こうした事情によるものかもしれません。性能的には前述の2製品をさらに下回り、「6」か、あるいはもう少し下という印象です。
物理的な耳栓を上回る効果は期待できる
ところでこうしたANC対応のイヤホンは、作業時の耳栓として使われることもよくあります。音楽などを流すのではなく、勉強や作業に集中するために、ANC機能を利用して静寂な空間を作り出すというわけです。
こうした用途にこれら3製品が使えるかと問われれば、シャオミ製品とDonner製品については、AirPods Proには及ばないものの、物理的な耳栓を上回る効果は期待できます。あとはイヤーピースをどれだけフィットさせられるかでしょう。グリーンハウス製品については、耳栓としての用途は厳しい印象です。
外音取り込みモードはどうでしょうか。AirPods Proの場合、補聴器のように外から入ってきた音を増幅するため、未装着時よりも外部の音が聞こえやすくなり、離れた距離のヒソヒソ声まで聞こえてしまうこともありますが、今回の3製品はそのような効果はなく、モードを切り替えてもあまり違いを感じないこともしばしばです。
ただその一方で、AirPods Proの外音取り込みモードは、不自然に増幅されることで長時間聞いていると耳が疲れやすいという欠点があるのに対して、今回の3製品はそのようなことはありません。補聴器のような用途こそ期待できないものの、電車の中でアナウンスを聞くといった一般的な用途ならば、どれも問題なく利用できます。
AirPods Proとは差があっても、コスパは抜群
以上のように、AirPods Proなど上位の製品とはさすがに差があるものの、シャオミ製品とDonner製品は、実用レベルの性能は備えています。敢えて区別するならば、防水非対応でオプションも少ないぶん安価なシャオミ製品と、防水対応でオプションも豊富なDonner製品といったところでしょうか。唯一グリーンハウス製品だけは、価格こそ健闘しているものの、ANC搭載イヤホンとしては分が悪い印象です。
もっとも一般的なワイヤレスイヤホンとして見た場合は、3製品ともにかなりの高水準です。先日この連載で紹介した 実売2000円以下の格安ワイヤレスイヤホン は、音がこもっていたり、耳障りな高音がシャカシャカ鳴るなど、基本性能の部分で何らかの問題を抱えていたり、サイズ違いのイヤーピースが付属しないなど露骨なコストダウンの跡も見られましたが、今回の3製品はそうした問題はありません。
また格安ワイヤレスイヤホンでは、リモコンに音量調整機能がないなど、一部の機能はスマホ本体から操作しなくてはいけない場合もありますが、今回の3製品はそうした機能の漏れも見られません。さらに格安ワイヤレスイヤホンにありがちな、混信によって通信がブチブチと切れる現象も、今回テストした限りでは発生しませんでした。
もともとノイズキャンセリングは、3万円クラスのハイエンドモデルでもあらゆる音を完全にシャットアウトできるわけではありません。多少の音は許容しつつも、価格と性能のバランスで選ぶならば、今回紹介した3製品は、いずれも有力な候補に入ってくる存在と言えそうです。
(山口 真弘)
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