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「1年で10キロ減。最大血圧も下がった」高血圧対策の新エクササイズ“ゆるジャンプ”とは?《考案の医師が直接指導》

文春オンライン / 2024年10月10日 17時0分

「1年で10キロ減。最大血圧も下がった」高血圧対策の新エクササイズ“ゆるジャンプ”とは?《考案の医師が直接指導》

伊賀瀬道也氏 Ⓒ文藝春秋

愛媛大学抗加齢医学講座教授で循環器内科医の伊賀瀬道也氏が、「血管力向上に理想的な運動」として提唱するのがウォーキングと「ゆるジャンプ」だ。伊賀瀬医師自身も最大血圧を減らしたという、その独特な運動を紹介する。

◆◆◆

ウォーキングの長所・短所

 ウォーキングというと、かつては「1日1万歩」が推奨されていました。歩く速度によるものの、中高年であれば1時間半ほどかかるため、現役世代だと毎日続けるのは難しいでしょう。高齢者なら初日でヘトヘトに疲れ果て、習慣化できなかったという声を数多く聞いています。

 私自身は週3回、車通勤をあえて徒歩に切り替えて、往復1時間弱は歩くようにしています。職場である病院内での歩数を合わせると、その日は1万歩近くになります。しかし週平均では5000歩前後です。自分ができないことを患者さんには勧められないので、「最低限の目標を4000〜5000歩にして、あとはできる範囲で厚労省の目標値の6000歩に近づけるように頑張りましょう」とお伝えしています。

 なお、私たちの抗加齢ドックのデータによると、6000歩歩くのに男性では約60分、女性では約78分かかっています。

 最低限の目標を4000〜5000歩としているのは、他にも理由があります。

 日本人の1日あたりの歩数にかんする大規模研究としては、東京都健康長寿医療センター研究所の青栁幸利先生による、群馬県中之条町の65歳以上の住民5000人を対象に20年間行った縦断研究がよく知られています。

 この研究をもとに、いくつかの病気について予防(改善)できる可能性のある歩数をまとめたのが、下の表です。

 ウォーキングは1日1回30分以上で、まずは週3回以上を目指してみましょう。

 歩幅はなるべく広くとることをおすすめしますが、背筋を伸ばして胸を張った姿勢が崩れてしまうのは良くありません。大まかな目安としては、「身長マイナス100センチ」の歩幅がちょうどいい。

 息は弾むけれど会話はできる程度のペースで歩けば、心拍数や血圧が危険なほどには上昇せず、疲労の原因となる乳酸もほとんど蓄積せずに済みます。

 ウォーキングは、習慣化したのをやめるとすぐに健康効果が消失してしまうというデータもあります。一方、歩きすぎは逆効果にもなりうるという研究もあります。一度に無理せず、「継続は力なり」の精神で続けていきましょう。

 ところで、上の表で「動脈硬化や高血圧、糖尿病は、厚労省の6000歩という目標値を達成しても予防・改善できないのか」と思った方もいるかもしれません。

 たしかにウォーキングだけでは筋力を鍛える面では十分とはいえない部分があります。そこで、ウォーキングにプラスアルファで行っていただくために私が提唱しているトレーニングがあります。その名も「ゆるジャンプ」です。

8秒×5セット「ゆるジャンプ」が血管力をきたえる

「ゆるジャンプ」のやり方は次のとおりです。

 (1)両手足の力を抜き、背筋をまっすぐに伸ばして立つ。両足は肩幅程度に開き、膝は少し緩めるイメージ

 (2)目線はまっすぐ前を向く

 (3)足が床から少し離れる程度に跳ぶ。呼吸は自然に行い、止めないようにする。着地する時は、膝を軽く曲げる

 最初は1秒間に2回を目安に8秒間跳んでみましょう。慣れてきたらこれを5セット行います。

 可能な人は、おおむね1分間で100回跳ぶようにします。

 私はこの「ゆるジャンプ」を2018年に考案し、自分でも日課にしました。最初は10回でも息が上がっていましたが、しばらく続けていると、ヴァン・ヘイレンの『Jump』という曲をBGMにして、リズミカルに100回跳べるようになりました。これを出勤前の自宅や職場で、1日数回行います。

 すると、2カ月後には体重が2キロ減り、ウエストが引き締まって、周囲から「痩せたね」と声をかけられることが増えたのです。

 ちなみにバラエティ番組で、落語家の林家たい平さんに1日3回実践していただいた際も、1週間で腹囲が5センチ減っていました。跳ぶ時には腹筋にも力が入るためです。

 私は「痩せたね」と言われることでモチベーションが上がり、食事にもそれまで以上に気をつけるようになりました。その結果、1年後には体重が10キロ減っていたのです。さらに、平常時の最大血圧も、105程度から130程度まで下がりました。

 実は「ゆるジャンプ」は、血管力向上に効果的な要素がいくつも含まれているトレーニングです。

 ジャンプを繰り返すと、筋肉の収縮とともに動脈に刺激が伝わり、一酸化窒素(NO)が産生されます。NOは大動脈のくだりでお話ししたように血管拡張物質で、血流をよくします。毛細血管にも酸素や栄養が運ばれるようになりますし、高血圧の場合は血圧を下げてくれるのです。

 ウォーキングのような有酸素運動にも同様の効果がありますが、「ゆるジャンプ」はとりわけ“第二の心臓”とも呼ばれるふくらはぎの筋肉を強く収縮させるという点でも効果的です。ふくらはぎの筋肉が収縮すると、中を通っている血管が圧迫されて、心臓へと戻る静脈血がまるで牛の乳搾りのように押し上げられます。そのことでも全身の血液循環がよくなり、血圧が安定します。

 さらに、「ゆるジャンプ」は有酸素運動でありながら、下半身の筋肉に負荷をかける筋トレとしての要素があります。

 ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス・アンド・ポリティカル・サイエンスの研究によると、有酸素運動と筋力運動のどちらかを単独で行うより、両方のタイプを組み合わせて行うほうが、最大血圧の降圧効果が大きくなるといいます。ゆるジャンプはまさに両者を組み合わせた運動なのです。

 以上の理由から私は「ゆるジャンプ」を血管力向上に理想的な運動として提唱したのですが、昨年、さらにその有効性を裏付けるような論文が発表されました。

 国立障害者リハビリテーションセンターや国立循環器病研究センター、東京大学などの研究グループが、「頭の上下動による脳への物理的刺激」が高血圧改善をもたらすことを世界で初めて明らかにしたのです。

 この研究では、軽いジョギングや速歩きをすると足の着地時に頭部へ約1Gの衝撃が上下方向に加わることから、同じ衝撃が加わるように上下動する椅子を高血圧の成人に用いて検証しています。その結果、1秒間に2回程度の頭の上下動により血圧低下が確認されたのですが、「ゆるジャンプ」も頭に上下方向の衝撃が加わる運動ですから、やはり降圧効果が期待できると言えるでしょう。

(構成・秋山千佳)

本記事の全文は、「文藝春秋」2024年11月号と「文藝春秋 電子版」に掲載されています(伊賀瀬道也「 高血圧、糖尿病、認知症、腎臓病、心臓病を防ごう 血管のアンチエイジング 」)。この記事で触れている主な内容は次のとおりです。

 

▶血管を柔らかく若返らせる食材リスト

▶「ゴースト血管」かんたんチェック法

▶男性は筋肉量急減「80歳の壁」

▶私もやせた「ゆるジャンプ」の降圧効果

(伊賀瀬 道也/文藝春秋 2024年11月号)

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