スポーツ紙の「コタツ記事」は「盗用」あるいは「剽窃」だ! 今後は私のような手法の原稿を「コタツ記事」と呼ぼうよ
文春オンライン / 2024年11月6日 6時0分
能町みね子さんの新刊『正直申し上げて』(カバーイラストレーション:冬野梅子)
〈 短い一文の中に「正直」を3回も! 歴史に残したいと願うほどひどかった萩生田光一の苦しい言い訳「正直申し上げて」 〉から続く
能町みね子さんがネットを巡回して拾い上げた言葉に独自の論考をねっとり加えた「週刊文春」の人気コラム「言葉尻とらえ隊」。この連載の約2年半分をまとめた文庫オリジナルの新刊『 正直申し上げて 』から一部を抜粋し、紹介する。(全3回の2回目)
ネットメディア「弁護士ドットコムニュース」は、ジャーナリストの江川紹子がX(旧ツイッター)で「スポーツ紙のコタツ記事は、なんとかならないか」と書いたことについて言及し、「ジャーナリストの江川紹子さんが、いわゆる『コタツ記事』を量産するスポーツ紙に痛烈な皮肉をぶつけた」というコタツ記事を発表した。
――これは、コタツ記事批判を元にして、スポーツ紙への皮肉として書かれたコタツ記事をさらにコタツ記事にしたものである。ああ、非常に読みづらい。
おふざけは置いといて、改めて「コタツ記事」を説明すると、取材を一切せず、コタツに入ったまま書けるような記事を揶揄する言葉です。特に、ネットニュースで、有名人の発言やSNSの文を勝手に抜き出して構成し、分析も批判も一切加えず「〇〇さんがこう言ってました」というだけの内容のものを呼ぶことが多いと思われます。
ちなみに江川紹子が例として上げたウェブ版中日スポーツの「江川紹子さん、羽生結弦さん離婚発表の『モヤモヤ3つ』を考察『苦しめているのは、誰のどういう行為なのか』」という記事を調べてみると、本文691文字中、江川氏のブログからの転載部分が488字。実に約70%が丸写しで、中日スポーツ独自の見解は皆無。これで原稿料も払われず、時には勝手に刺激的なタイトルをつけられ、批判だけは書いた人にいくのだ。不条理だ。
中日スポーツは、「〇〇さんが△日に自身のX(旧ツイッター)を更新」という定型文でコタツ記事を量産しています。私はこのフレーズで試しに今年(2023年)9月以降の記事を検索し、「最近、中スポにコタツ記事を作られている人ベスト5」を調べてみました。
①ひろゆき(25回)②紀藤正樹弁護士(16回)③伊織もえ(12回)④泉房穂・前明石市長(11回)⑤江川紹子(7回)
江川さん、見事ランクイン。
明らかに毛色の違う「伊織もえ」はコスプレイヤー。コスプレ写真などを本人が出すのに応じて記事が作られている。これもPV稼ぎに役立つんだろうなあ。でも、職業柄、広めてもらえた方がうれしいって面もあるのかな。
え、もしかして、スポーツ紙側は、親切心で意見を広めてやってるつもり?
このコタツ記事の手口はずいぶん前から批判されてるけど、スポーツ紙が金も手間もかけず楽にページビューを稼げて責任も不要だからやめられないんだと思ってました。でも、1位のひろゆきなんて炎上してナンボの人だし、ほかの3人も確かに意見が賛否両論呼びそうな人たち。新聞側はもしかして、「炎上させてでも意見を広めたいだろ? 協力してやるよ」とでも思っているのか。ゾッとする。
以前から私は冗談で、私自身のこの連載について「最高のコタツ記事を目指す」と言っていました。実際、私はネットを掘り起こして論考を加える手法なので、コタツから出ずにコラムを作れる。今後、私みたいな手法のものをコタツ記事と呼ぼうよ。
じゃあスポーツ紙のあれは何かというと、やはり「盗用」あるいは「剽窃」でしょう。犯罪っぽい名前にしないと止まらないよこれは。
(「週刊文春」2023年12月7日号を加筆・修正)
〈 名前もダサいし、イーロン・マスクが「バズれば勝ち」主義を導入したことで悪意が浄化されずにデマだらけ。ああ……これがXだ 〉へ続く
(能町 みね子/ライフスタイル出版)
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