年間700冊を読破する読書のプロが教える“シンプル過ぎる読書法”とは「スマホをいじりそうになったら…」
文春オンライン / 2024年10月17日 6時10分
『現代人のための 読書入門 本を読むとはどういうことか』©光文社
「忙しくて本が読めない」と感じる人が増えているのか、関連する新書が近年ベストセラーになることは珍しくない。その中で、年間700冊以上を読破する作家・書評家の印南淳史氏による 『現代人のための 読書入門 本を読むとはどういうことか』 (光文社新書)が10月17日発売された。
ついついスマホを見たくなってしまうあなたを、読書家へと導く“究極の読書法”とは。その一部を同書から抜粋して紹介する。(全2回の1回目/ 続きを読む )
「ついついスマホを見てしまう自分」から「読書する自分」に変える方法
デジタルデトックスを勧める記事などにはほぼ例外なく、「スマホを手の届かない場所に置こう」というようなメッセージが登場します。スマホはいろいろな意味で誘惑に満ちたツールなのですから、そこから距離を置くべきだという考え方はとても理にかなっていると思います。
デジタルデトックスしようという場合に限らず、集中したい場合などにも、スマホを1メートル離れた場所に置くというような姿勢はとても大切です。そしてもちろん、同じことは読書をする際の心がまえにもあてはまります。いうまでもなく、スマホは読書の大敵だから。
たとえば電車に乗っていて手持ち無沙汰になったとき、多くの人は無意識のうちにスマホを手に取ってしまうはずです。周囲の人たちがみなそうしていることからもわかるように、スマホは暇を潰すのに最適なツールです。
家で過ごしているときにしても同じで、テレビを観る代わりにスマホを眺めるとか、ひどいときには(いや、よくある話かもしれませんが)テレビを観ながらスマホをいじっているというようなケースもあるのではないでしょうか。私自身も似たようなことをしていることがあるので、充分に納得できる話です。
そのため、人ごとのように偉そうなことをいう資格はないのですけれど、少なくとも読書習慣をつけたいというのであれば、スマホの誘惑はできる限り断ち切ったほうがいいと思います。もちろん、非常に難しいことなんですけどね。
そこで試してみていただきたいのは、自分の内部に定着している「当たり前」を排除してみることです。
電車でスマホをいじりそうになったら
たとえば電車でいつものようにスマホをいじりそうになったら、「きょうは本を読んでみよう」と気持ちを無理にでも切り替え、バッグから本を取り出すのです。
そして、(なかなか気が乗らないとしても)ページをめくって読んでみる。すると、単に「本が読める」だけではなく、「自分はスマホではなく、本を選んでいる」という事実を通じて自主性を意識できるようになります。
当たり前すぎるとはいえ、それはとても大切なことでもあります。「自分の意思でそうしている」のだという思いは、よい意味で自尊心を刺激してくれ、しかもそれを積み重ねていけば自信にもつながっていくからです。
いいかえれば、「周囲がなにをしていようと、自分はあえて本を開く」という判断、そこに大きな意味があるということです。しかも人間は環境に慣れやすくもあるので、最初は気乗りしなかったとしても、何度か繰り返していくうちに、その行為はすぐに無理のない行動になっていきます。そこまでたどりつければ、読書はさらに身近なものになることでしょう。
もちろん、家でくつろいでいるときでも同じです。外であろうが家であろうが、スマホに誘惑されそうになったら、あえて本を手に取る習慣をつけるのです。些細なことではありますが、読書習慣を定着させたいのなら、そういったことを意識し、実践してみる価値はあると思います。
就寝前、スマホをベッドに持ち込んでしまう方も多いのではないでしょうか。いやいや、これまた人ごとではなく、私もついやってしまいます。「眠くなるまで」などと思いながら、たいして意味のないネットニュースなどを眺めているだけというケースも少なくありません。
でも、「眠くなるまで」ということであるなら、いっそスマホを脇に置いて本を読んでみてはどうでしょう。これは、私自身が「スマホを見ていたら逆に眼が冴えてしまい、結局は時間を浪費してしまった」という失敗を経てたどりついた結論でしかないのですが……。
ついスマホを見てしまいそうなときこそ気持ちを切り替え、本を開いてみるのです。寝っ転がって本を読むのはなかなか快適なので、何度か繰り返してみれば意外と簡単に、習慣をスマホから本へとシフトさせられると思います。
寝る前の読書で“補欠要員”を用意すべき理由
それに短時間でも本の世界に入り込んでしまえれば、そろそろ眠ろうかというときにもスマホに手を伸ばそうとは思わないはずです。
なお、私はベッドに本を持ち込む際、意識していることがあります。まず、1冊ではなく2冊か3冊を用意すること。
読みかけの本であれば話は別ですが、これから読もうという本がイマイチだった場合、読み進めようという気持ちにならないことがあります。
そんなときのために、補欠要員を用意しておくのです。そうすれば、「読もうと思ってたのに読む気になれなくて、結局は眠れなくなってしまった」ということにならずにすみます。
あ、それからベッドで読む本としては文庫本か新書をおすすめします。重たい本だと、うっかり手を滑らせてしまう危険性があるからです。これは冗談でもなんでもなく、とても重要なポイントです。私にも経験がありますが、顔に落下してきた本のおかげで痛い思いをしたら、熟睡どころではなくなってしまうのですから。
〈 「10分だけでいい」読書のプロが解説するスマホばかり見てしまう人におすすめの“寸止め読書” 〉へ続く
(印南 敦史/Webオリジナル(外部転載))
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