「10分だけでいい」読書のプロが解説するスマホばかり見てしまう人におすすめの“寸止め読書”
文春オンライン / 2024年10月17日 6時10分
『現代人のための 読書入門 本を読むとはどういうことか』©光文社
〈 年間700冊を読破する読書のプロが教える“シンプル過ぎる読書法”とは「スマホをいじりそうになったら…」 〉から続く
「忙しくて本が読めない」と感じる人が増えているのか、関連する新書が近年ベストセラーになることは珍しくない。その中で、年間700冊以上を読破する作家・書評家の印南淳史氏による 『 現代人のための 読書入門 本を読むとはどういうことか 』 (光文社新書)が10月17日発売された。
ついついスマホを見たくなってしまうあなたを、読書家へと導く“究極の読書法”とは。その一部を同書から抜粋して紹介する。(全2回の2回目/ 最初から読む )
目覚めた直後に“布団で10分読書”の効果
本を読めない、読む時間がないというようなご相談を受けるたび、私はしばしば「起床直後読書」をおすすめしています。文字にするとなんだか大げさですし、そもそもネーミングがイケてませんが、要するに、起きた直後に本を読みましょうというシンプルなご提案。
といっても起き上がってからではなく、起きる前、すなわち布団のなかでの、5分か10分程度の読書です。読書とはいえないくらい短時間ではあるのですが、これがなかなか快適で、読書習慣をつけるためにも効果的なのです。
メリットとしてまず特筆すべきは、純粋に頭がシャキッとする点。「覚醒直後は頭が冴えているから、集中しなければならない仕事は午前中に取り組むべき」というようなトピックをよく見かけますが、たしかに起きた直後に本を読むと不思議な心地よさがあります。
もちろん私は医者ではありませんから、これはあくまで感覚的な問題ですが、本の内容がすっと頭に入ってくるような感じ。
しかも、前の晩に寝る直前まで読んでいた本の続きだったとしたら、なおさらその世界に入り込みやすいような気がします。最適な読書時間に関しては人それぞれ異なると思いますが、ほんの10分程度目を通しただけで、意外なくらいの覚醒効果があるように感じるのです。
なおポイントは、たとえば最初に10分と決めておいたなら、そのリミットをきっちり守ることです。10分経ったときにちょうど本がクライマックスに差しかかっていて、「もっと読み続けたい」と感じたとしても、そこできっぱりやめてみましょう。理由は簡単で、そうすれば必然的に「早く続きを読みたい」という思いが強まるからです。
すると、そんな気持ちが次の読書へとつながっていき、出勤途中の電車内とか、昼食後のお昼休みなどの時間を利用して読もうという気になれます。いや、「読みたい」と気になってしまうのです。そこでその感情を、読書の習慣化に向けて利用するわけです。
その際にも「電車が駅に着くまで」とか「始業時刻まで」など、読書を終えるタイミングを設定しておけば、それがまた次の読書時間へと引き継がれていくことになります。「次は帰りの電車で」「その次は夕食後」「一日の終わりにはベッドで」「翌朝はまた起床直後読書」という具合に。
そうすれば無理なく、しかも読みかけの本に対する期待感を維持したまま、読書欲を継続していけるはず。また、読み終えたら、その思いは「今度はどんな本を読もうかな」と、次の本への好奇心につながっていくことでしょう。
そうやってサイクルをつくっていけば、無理なく、そしてプロセスを楽しみながら読書習慣を身につけることができるということです。
読書を習慣化させる“寸止め読書”とは
「時間がきたらきっぱりやめる」という方法について、もう少しだけ補足しておきましょう。
便宜的に「寸止め読書」と呼んでおきますが(これもまたセンスのないネーミングですね)、これは読書を習慣化するにあたって重要なポイントになります。
それは、あらかじめ決めておいた時間で一度きっぱりとやめることによって、盛り上がりつつあった読書熱を意図的に冷ますということ。
冷めてしまっては意味がないと思われそうですが、熱中して読んでいたのであればなおさら、それは理不尽な終わり方だということになります。読み続けたいのだったら読めばいいのですから、当然の話ですよね。
もちろん読み続けるのもひとつの方法ではありますが、いまここでお伝えしようとしているのは、読書を習慣化することです。日常の、たとえば一年のうち一日だけの読書ではなく、毎日続ける行為。すなわち読書を“点”ではなく“線”として捉えるようになることを目的としているわけです。だから、もっと読み続けたいという思いをあえて抑え、それを次につなげるのです。
また寸止め読書は、「読めない」というモヤモヤを解消してもくれます。日常生活の隙間を利用することによって5分でも10分でも読むことができれば、それは「読める」ということになるのですから。読書時間の長短の問題ではなく、もっと大切な「読んだ」という事実が少しずつ、けれども確実に積み上がっていくのです。それはとても大切なことで、気がつけば読書は日常生活を形成するエレメントのひとつとして確実に定着するはずです。
(印南 敦史/Webオリジナル(外部転載))
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