「どうして砂浜に2mの巨大うんこが…」海水浴客を20年間驚かせつづける“職人”のナゾの向上心と“意外すぎる本業”とは
文春オンライン / 2024年10月20日 6時0分
砂浜に突如現れた美しすぎる『うんこ』。海とのコントラストもまた美しい(あわわ氏提供)
毎年8月、海水浴場の砂浜に『うんこ』を作る人物がいる。ただの『うんこ』ではなく、漫画のように美しくツイストしたもの、丸みを帯びたもの......SNS上にアップされた数々の「作品」には数万いいねがつくことも多い。
20年以上、砂浜で『うんこ』を作り続けている あわわ氏 (仮名)に、なぜ『うんこ』を作り続けるのか話を聞いた。
──まず、なぜ砂浜に『うんこ』を作ろうと思ったのか教えてください。
あわわ 小学生のときから、夏の家族旅行で愛知県・篠島の海に行くことが恒例になっていました。でも中学生の頃って親と一緒に海なんか行きたくないじゃないですか。それでも無理やり連れて行かれたので、腹いせで海に入らずにいました。代わりに砂浜に居座ってボーッとしていたんですが、暇で暇で。暇つぶしで砂遊びをする中でうんこを作り始めたのがきっかけです。
家族への嫌がらせのつもりが、むしろ喜ばれた
──なぜ砂遊びの中で『うんこ』を作ろうと思ったのですか?
あわわ 家族に嫌がらせがしたかったんだと思います。そのときはまだ芸術性を考えていなかったので、鏡餅のように巻かずに3段載せただけの『うんこ』でした。
──無理やり海に連れていかれた腹いせに作った『うんこ』ですが、家族からの反応は。
あわわ せっせと『うんこ』を作っていたのが面白かったのか、なぜかみんな喜んでくれて。それがちょっと楽しくもありました。翌年からは海に行くたびに家族から「今年は作らんのか?」と煽られるようになったので、「作ったらぁ!」と。「今度は巻かんのか?」と言われて、「巻いたらぁ!」と。
──それから毎年作るようになった?
あわわ ほぼ毎年作っています。中学生のときからなので、もう20年近くになりますね。最初の頃は今のようにクオリティが高かったわけではないんですが、毎年作っているとコツを徐々に掴んできて。「今年はよりデカくしてみよう」と『うんこ』がどんどん肥大化していった時期もありました。ただ、大きすぎると腰を悪くするなと思ったので、「今度は大きくするより、もっと巻いてみよう」など、よりテクニカルな作り方をするようになりました。
──今年の作品について、こだわったポイントを教えてください。
あわわ 以前は4段、5段と段の多い『うんこ』を作っていましたが、今年は段を減らして丸みを帯びたフォルムにこだわりました。これは直径200cmくらいです。写真に写っているスコップももう15年の付き合いです。本当はパラソルを差すための穴を掘る用で購入したはずなんですが、だんだん用途が違うほうに......。
──作品を作る上での苦労はありますか?
あわわ 水気を含んでいる重い砂を使うので、とにかく腰が痛いです。以前より小ぶりにしているとはいえ、インパクトを与えるためにそれなりの大きさではあるので、『うんこ』のクオリティと腰をいたわること、両方に気を配る必要があります。また、巻けば巻くほど崩れやすくなるので、巻くときは長年培った腕の見せ所ですね。いままでで最大6周も巻いたことがあります。
通りがかりの人が「インスタにあげてもいいですか」
──作る時間はどれぐらいかかるのですか。
あわわ 今年だったらだいたい1時間ぐらいで作れました。潮の満ち引きもあるので、あまり時間的余裕はありません。潮が満ちてきて、『うんこ』が水洗便所のように流れていってしまったこともありました。
──作る際に、ほかの海水浴客からの反応などはありますか?
あわわ 小学生が作品を見て、「うわー! でっかいうんこ!」と言って砂浜を走り抜けていったりとか、お兄さん、おじさんが「うわっ、うんこだ」と言って歩いて行きますね。通りがかりの女性が「インスタにあげてもいいですか」と声をかけてくれることもあります。
『うんこ』を作るのがやめられない
──あわわさんは、X上で毎年作品をアップし続けていますが、反応はありますか。
あわわ 毎年、フォロワーの方々から「待ってました」「今年も夏だね」と声をかけてもらえるので嬉しいですね。一方で、家族からは毎年「今年は作らんのか」と煽られるし、X上でもみんな「そろそろかな」と待ってくれているので、作るのをやめられなくて......。
──『うんこ』を作るのがやめられない。
あわわ やめられない。やめさせてもらえないです。でも、『うんこ』を通じてSNS上の知り合いから久しぶりに連絡をいただいたり、再会するきっかけにもなっているので、作っていてよかったなと思います。
──お仕事はなにをされているのですか?
あわわ 言いづらいのですが実は、お菓子を作る機械の設計をしていて、CADやBlenderといった3Dモデルの設計ツールも使っています。『うんこ』も設計も、自分の手を動かして作ったものが現実になるという点では変わりませんし、楽しさもやりがいも同じですね。
──以前から設計の仕事をされていたのですか。
あわわ 元々はフリーターでした。3Dモデルや設計に興味を持ったのは、マストドンというSNSが7年前に流行った時に、そこで知り合った方から、無料で使える3Dモデルのツールを教えていただいて。それから職業訓練学校に行き、CADを学んで、求人で見つけた今の会社に入りました。最近はケーキの形をした小物入れを設計してコンペに応募したところ、賞をいただきました。趣味だった『ものづくり』がいまはライフワークになっています。
──来年も『うんこ』を作る予定は?
あわわ 「これがないと夏が来ない」という声もX上でいただくので、楽しんでくれるのであればこれからも作り続けていきたいと思っています。
(「文春オンライン」編集部)
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