タイで身体にタトゥーを彫られ、体内に「3本の針」を入れられて…「めちゃくちゃ痛かった」呪物コレクターが明かす、“呪術大国”でのヤバすぎる体験
文春オンライン / 2024年11月3日 11時0分
呪物コレクターの田中俊行さん ©山元茂樹/文藝春秋
〈 殺人現場にあった血まみれのベッド、亡くなった子どものミイラ、人間の皮膚が入った呪いの箱…「呪物コレクター」が所有する“いわくつき物体”の実態 〉から続く
超自然的な力によって人間に禍福(かふく)をもたらすと信じられ、神聖視されている物体「呪物」。その呪物を蒐集し、自宅に「呪物部屋」を設けて一緒に生活している珍しい人がいる。怪談師で呪物コレクターの田中俊行さんだ。
田中さんは全国各地、時には海外まで足を運んで呪物を集めている。今年8月には呪物蒐集の日々を描いたコミックエッセイ『 ぼくと呪物の奇妙な生活 最恐呪物蒐集編 』(竹書房)を刊行。呪物コレクターとして注目度が高まる田中さんに、“呪術大国”といわれるタイの実態や、呪物と暮らす彼がどんな生活を送っているのか、話を聞いた。(全2回の2回目/ 1回目から続く )
◆◆◆
タイでは呪物を作るときに“人体”を使用していた
――今回刊行された『ぼくと呪物の奇妙な生活 最恐呪物蒐集編』では、“呪術大国”タイ発祥の呪物がいくつも登場しています。
田中 「ナムマンプラーイ」や「呪物針」、「ルクテープ人形」はタイの呪物ですね。ナムマンプラーイは遺体から採取した油をハーブと混ぜて、呪術師が念を込めたもの。呪物針は“勘”を良くするために体内に入れる、念のこもった針。ルクテープ人形は呪術師が精霊の魂を宿らせた人形で、妊婦とそのお腹にいた赤ちゃんの遺骨と油の入った容器が、人形の腹部に縫い付けられています。
――人体に関連するものが多いのですね。
田中 そうなんです。タイでは、呪物を作るときにに“人体”を使用することが多いんですよ。ご遺体から油をとったり、足をまるまる一本煮込んだり、骨や皮をそのまま使ったり。呪物に使うのはどんなご遺体でもいいわけではなくて、「未練を残して亡くなった方のご遺体ほど、強い力を宿す」と言われているそうです。
ただ、最近のタイではご遺体を使って呪物をつくることは違法になってきていて。今出回っているのは、ご遺体は使わずに念を込めただけの呪物がほとんど。
昔作られた呪物の中には実際にご遺体が使われているものも一部ありますが、かなり貴重で高価ですね。とあるお坊さんのご遺体から抽出した油を使ったナムマンプラーイは、小指くらいの小瓶で数万円もするそうです。
体内に「呪物針」を3本入れてもらったら…
――コミックエッセイの中では、田中さん自身が身体に「呪物針」を入れる描写がありました。
田中 僕は、胸に2本、左肘に1本入っています。タイの呪術師に入れてもらったのですが、不思議と痛くなかったんですよね。ただ、「入れる瞬間を絶対に見てはいけない」と念押しされました。少しでも見てしまうと、針が目を突き刺してしまうそうです。
僕は勘が鈍いからか、3本しか入らなかったんだけど、徳の高いお坊さんだと、300本以上の針を体内に入れている人もいるんですよ。皮膚を見るとボコボコしている箇所がいくつもあって、見た目でも「たくさん針はいってるんやな」って分かるくらいでした。
――その後、針の効果は感じていますか?
田中 分かりやすく何かがあったわけではないんですけど、「人に恵まれているな」って感じることは最近多いですね。「ちょっとな……」と思う人とは距離を取れるようになったというか。単に僕が成長しただけかもしれないけど(笑)。針の効果で“人を見る勘”が働くようになったのかな、と思っています。
実は最近、針以外に刺青も入れたんですよ。かつてタイには、ホン先生というめちゃくちゃ有名な呪術師がいて。1年に一度、ホン先生の弟子たちが開催する呪術のセレモニーがタイで行われるんです。それに参加させてもらったときに、雰囲気的に入れざるを得なくなってしまって……。
自分の顎を剣で貫いて…呪術セレモニーで行われる儀式
――呪術のセレモニーでは、どんなことを行うのですか?
田中 ホン先生は、自分の顎を剣で貫いて、そこから溢れ出る血を使って呪物を作っていたんです。その手法は、先生の弟子にも伝わっていて。セレモニーでは、何人もの弟子たちが一斉に上顎に念を込めた刀を突き刺して、床に並べた道具に血を吹きかけて呪具を作る、という儀式を行うんです。
――すごい光景ですね……。
田中 日本人の感覚からしたら信じられないですよね(笑)。弟子の中には僕の知り合いもいて、「田中も一緒に挑戦しないか?」って誘われたんですよ。絶対痛いし、僕の血で呪物が作れるわけないじゃないですか。だからその場はなんとかしのいだんですけど、今度は弟子たちがこぞって「刺青入れに行くか!」って言いはじめて。
「手に彫るから大丈夫だよ!」と言われ、断りきれず…
――どんな効果がある刺青なのでしょうか。
田中 「サックヤン」っていう刺青らしいんですけど、入れるとホン先生のご利益があるそうです。
――顎に刀を刺す儀式を断った手前、サックヤンは断りづらかった、ということでしょうか。
田中 刺青も、一度は断ったんですよ。でも、「手に彫るから大丈夫だよ!」って言われて。結局断りきれなくて入れちゃいましたね。手だから彫っているときの感覚がすごくて、めちゃくちゃ痛かったです。
――サックヤンは誰が彫るのでしょうか?
田中 基本的にはお坊さんですね。儀式をするところと同じ場所に、サックヤンを彫れる場所があるんですよ。
200体の呪物をどうやって供養しているのか
――田中さんの知り合いには、タイの呪術師やお坊さんなど呪術に詳しい方も多いですよね。そういった専門家から、呪物収集に関して何か言われたことはありますか?
田中 「節操ない」とはよく言われます。呪物って、悪いものじゃないんですよ。きちんと祀れば、福をもたらしてくれるんです。ただ裏を返すと、手を抜いた瞬間、不幸が訪れる可能性もあります。そんなリスクのあるものを何百と集めて、きちんと供養ができるのかって心配されることはありますね。
――実際に、どうやって200もの呪物を供養されているのでしょうか?
田中 オシラサマなど、明確な決まりがあるものはそれを守るようにしています。ただ、すべての呪物の決まりを守っていると、供養だけで1日が終わってしまうので、呪術師やお坊さんと相談して「ショートバージョンの供養」をしています。それでも、毎日1、2時間はかかっちゃうんですけどね。
あとは、(前編に出てきた)手作りのコトリバコや呪いのアンティークドールのように、自然発生的に呪物になったものは明確な決まりがないんですよ。そういったものは、特別な供養はしていないけど、丁重に扱うようにはしていますね。
似たような背景を持っているから呪物同士で気が合うのでは?
――呪物を同じ場所に集めて、“喧嘩”になることはないのでしょうか。
田中 日本では、「神様と仏様を近くで祀ってはいけない」と言われていますもんね。僕は勘が鋭くないから実際のところは分からないけど、今のところはみんな仲良くしているように思います。
――前編では、夢の中で呪いのアンティークドールとルクテープ人形が仲良くしていた、という話がありましたね。
田中 そうそう。あくまで僕の考えですけど、呪物ってみんな似たような背景を持っていると思うんですよね。人の恨みや嫉妬を込められて、「怖い怖い」って避けられて。だからこそ、呪物同士で気が合うんちゃうかなって。恨みや嫉妬を咎める呪物はいないだろうし。
「仲良くなりたいし、嫌われるのも怖い」呪物を集め続けるワケ
――では、仲間を増やしてあげたいから、呪物を集めているのでしょうか?
田中 うーん、その理由も少しはあるけど、純粋に呪物が好きだからですね。気になる呪物を見つけたら、この目で見てみたいし、手に取ってみたい。ただ、「有名な呪物を手に入れたい」というよりも、「その呪物が呪物になった背景を知りたい。そして僕と気が合いそうだったら、家に迎え入れたい」って気持ちが強いかもしれません。
――呪物を「生き物」として見ているんですね。
田中 そうかも。だから、自分と気が合いそうだと思ったら仲良くなりたいし、嫌われるのも怖いんですよ。
メディアに出る機会が増えた今、感じていること
――田中さんは「呪物コレクター」として、ここ1年ほどさらにメディア出演が増えましたよね。もともとは趣味だった呪物収集が、どんどん公の場に出ていくことで感じている変化はありますか?
田中 人知れず趣味でやっていた頃はあまり意識していなかったのですが、表に出れば出るほど、言葉の使い方ひとつで誰かを傷つける可能性もあるな、と痛感していて。
僕自身、かなりセンシティブなことをやっている自覚はあるんですよ。「できるだけ誰も傷つけないように発信しよう」とは思っていますが、人の死や不幸と密接に関わっている呪物を扱っている以上、誰かを傷つけてしまう可能性は拭えません。メディアに出る機会が増えたからこそ、そういった観点は忘れてはいけないな、と思っています。
あともう1つ感じている変化があって。最近特にいろんなメディアに出させていただいているからか、「呪いたい人がいるから、呪物を貸してほしい」っていうDMが頻繁に来るんです。
――田中さんは、なんと返信しているのでしょうか……?
田中 「僕は呪術師じゃないから何かあっても責任が取れないので」と断っています。ただ、すごい数の相談が来るから、悩んでいる人がたくさんいるんだろうなって。
誰かを呪い殺したいくらい悩んでいたら、ひとまず僕にDMをくれて大丈夫です。呪物は貸せないけど、それ以外で楽になれる方法を一緒に考えましょう。
撮影=山元茂樹/文藝春秋
〈 「四足歩行の動物を食べてはいけない」「もし破ったら、祟りで顔が歪む…」“東北地方の守り神”の恐ろしすぎる言い伝え 〉へ続く
(仲 奈々)
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