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【独占】セブン&アイ・井阪隆一社長が語った“7兆円買収提案”と新経営戦略の狙い「流通業はそれぞれの国でそれぞれの価値をつくっている」〈イトーヨーカ堂分離についても〉

文春オンライン / 2024年10月16日 16時0分

【独占】セブン&アイ・井阪隆一社長が語った“7兆円買収提案”と新経営戦略の狙い「流通業はそれぞれの国でそれぞれの価値をつくっている」〈イトーヨーカ堂分離についても〉

セブン&アイHDの井阪社長 ©時事通信社

 カナダ企業からの買収提案に揺れるセブン&アイ・ホールディングス(東京都千代田区)の井阪隆一社長(67)が「 週刊文春 」の直撃取材に応じ、巨額の買収提案の受け止め方や新たな経営戦略の狙いなどについて語った。

来年2月期の連結純利益は前期比27%減

 セブン&アイHDは今年8月、カナダのコンビニ大手「アリマンタシォン・クシュタール」からの買収提案を受けたことを公表した。ただ、買収価格は1株あたり14.86ドルだったため、「(企業価値を)著しく過小評価している」などと反発。すると、クシュタールは9月中旬、1株あたり18.19ドルで買い取る新たな提案を行った。買収総額は約6兆円から7兆円規模に膨らんだことになり、株主の利益を踏まえると、クシュタールからの買収提案に反対することが難しくなりかねない。

 これに対し、セブン&アイHDの井阪社長は10月10日、決算説明会で新たな経営方針を表明した。経営資源を主力のコンビニ事業に集中させる一方、イトーヨーカ堂などのスーパー事業を中間持株会社「ヨーク・ホールディングス」に集約させ、社名も来年5月に「セブン-イレブン・コーポレーション」に変更する旨を発表した。

「セブン&アイHDとしては、自力で株価を引き上げることで、株主の理解を得たい考えと見られます。ただ、10日に発表した来年2月期の連結純利益は、前期比27%減の1630億円になる見通し。経営資源を集中させるとしているコンビニ事業も業績は芳しくはなく、クシュタールによる買収提案も予断を許しません」(経済部記者)

「地産地消とか色んなことをやってきましたから」

 果たして、セブン&アイHDの井阪社長は自社を取り巻く厳しい経営環境をどう受け止めているのか。10月13日、本人に話を聞いた。

――クシュタールの買収提案の件について。企業方針の違いなどはどのように受け止めている?

「流通業ってそれぞれの国と地域でそれぞれの価値をつくっていますので、本当にクシュタールさんがテイクオーバー(買収)した後に、そういうことの優先順位を考えてもらえるかということもすごく重要な要素だと思うんですね。地産地消とか色んなことをやってきましたから。そういったことまで本当にお考え頂けるかということが、一つ懸念にはありますよね。将来打ち合わせていかないといけないんだろうとは思っていますけどね」

――提示されている7兆円という額ですが。

「その額は僕たちが発表したというよりはメディアの方が出した額なので。先方の具体的な数字とか、交渉の中身についてはこちらからお話しはしない方がいいかなと思っています」

「セブン-イレブンとスーパーストア事業は明らかに違う」

――先日、グループの再編を施策として打ち出したが、防衛策としては十分?

「それはクシュタール云々ではなくて、自分たちが本当にこれからどうやって成長していくかということをベースに考えたプラン。その魅力によって2005年にホールディングスができた時と比べ、日本でも倍くらいの店舗数になっていますし、アメリカでも同じように倍くらい成長しています。成長のスピードは国内の(イトーヨーカ堂などの)スーパーストア事業とは明らかに違うんですよね。同じ傘の下にいてやっていくよりは、むしろ分けて、セブン-イレブンブランドはグローバル、国内両方ともすごいスピードで成長しないといけない。スーパーストア事業はもう少し地域密着型でやっている。生い立ちも成長シナリオも違うので、それぞれ分けようと昔から言っていて。それと、今回の買収防衛策といいますか、クシュタールさんに対して打ち返す手というのとは全く違う次元のお話になります」

――買収防衛策としてまた別の手を考えているということ?

「いやいや、そうではなくて買収防衛ということは今考えていません」

「以前から何年もかけて進めてきたものです」

――“物言う株主”であるバリューアクト・キャピタルからも、スーパーストア事業の切り離しは指摘されていたと思うが、それを受けての施策?

「そういうことではなく、本当に自分たちがこの一番適切な成長ストーリーをちゃんと実現していくために、働いている社員も加盟店さんも、一番いいスピードで成長していくためにどうしたらいいんだということで出したのが、今回のグループの構想だったんです。それはクシュタールとの件があったから出したわけではありません」

――タイミングとしてはどうしても防衛策として見られているが。

「いやいや、そんな簡単にできないんですよ、この議論は。社内でも相当やってますね。ですから、クシュタールから出して頂いた提案に対してこれが答えだということではなくて、それ以前から何年もかけて進めてきたものです」

「成長戦略を更に加速させる為に決定されたもの」

 セブン&アイHDは書面での質問に以下のように回答した。

――コンビニ事業に注力し、イトーヨーカ堂を切り離すなどの新たな経営方針は、クシュタールへの買収防衛策なのか?

「今回発表した施策は買収提案を受けて策定したものではなく、ご指摘の内容は事実ではありません。当社はコンビニエンスストア(CVS) 事業・SST(註・スーパーストア) 事業(ヨークHD)・金融事業、それぞれの事業が一定の財務・意思決定体制の独立性をもって事業運営を遂行し、異なる成長ストーリーを追求していくことをすでに2024年4月10日公表のアクションプランにてお示ししております。このアクションプランに基づき、当社の長期的成長と企業価値を高めるグループ構造への移行について、昨年設立された独立社外取締役のみで構成される戦略委員会における討議、及び、戦略委員会からの提言を受けて取締役会にて検討を重ねてきた結果であります。従ってACT社(註・クシュタール)からの提案とは関係ありません。SST事業における抜本的改革が着実に進捗する中で、ヨークHDの設立および戦略的パートナーの招聘を通じた持分法適用会社化は、係る戦略的方針及び成長戦略を更に加速させる為に決定されたものであります」

 10月16日(水)12時配信の「 週刊文春 電子版 」および10月17日(木)発売の「週刊文春」では、セブン&アイHDの井阪社長が直撃の最後に思わず漏らした本音のほか、セブン-イレブン・ジャパンの永松文彦社長との一問一答、クシュタールのブシャール会長の人物像、買収交渉のカギを握る取締役会議長の存在などについても取り上げている。

 さらに、「週刊文春 電子版」ではオリジナル記事として、 セブン&アイHDが祖業でもあるイトーヨーカ堂の切り離しを決断するまでの経緯を詳報 するとともに、 イトーヨーカ堂社長がいわゆるリストラに言及した店長会議の音声 も公開している。


※註は編集部による

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2024年10月24日号)

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