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無表情で胸をもみしだかれる絡みに、日本語で絶唱…「野心なんてありません」というペ・ドゥナ(45)が世界中で愛され続けるシンプルな理由

文春オンライン / 2024年11月2日 11時0分

無表情で胸をもみしだかれる絡みに、日本語で絶唱…「野心なんてありません」というペ・ドゥナ(45)が世界中で愛され続けるシンプルな理由

ぺ・ドゥナ ©︎時事通信社

 10月1日にパリで開催されたルイ・ヴィトン「2025春夏ウィメンズ・コレクション」ファッションショーに韓国人女優のぺ・ドゥナ(45)が全身黒のミニスカート姿で登場し、木村拓也・工藤静香の次女Koki,や元サッカー日本代表の中田英寿らと最前列で並んだことが話題になった。

 ペ・ドゥナは1979年10月11日生まれ、ソウル出身。演劇俳優の母キム・ファヨンの影響で小さい頃から演技の道を志していた。実兄のペ・ドゥハンもCM監督で、生まれながらの芸能家族である。

「市民の憩いの場である漢江で声を荒げたり走ったりしていたので…」

 19歳で衣料カタログでモデルデビューし、ファッション雑誌からCMにも進出。テレビタレントとしてもめきめきと頭角をあらわしていく。日本でその名前が知られるようになったのは、20歳で演じたホラー映画『リング・ウィルス』の貞子役だった。

 翌年、21歳でポン・ジュノ監督の『ほえる犬は噛まない』の主役に大抜擢。『猫をお願い』では百想芸術大賞最優秀女優賞など同年の韓国映画賞を総なめにして大ブレイクを果たした。

 本人はチャウ・シンチーの熱烈なファンだが、女優としてはソン・ガンホとの共演が多く、『復讐者に憐れみを』(02年)や『グエムル -漢江(ハンガン)の怪物-』(06年)、さらに邦画『ベイビー・ブローカー』(22年)でも共演して抜群のコンビネーションを見せている。

『グエムル』は本格怪獣・SF映画ながら『ほえる犬~』のポン・ジュノ監督のメッセージ性・社会(批判)性の強い作品。

 ペ・ドゥナは「Cinema Cafe.net」のインタビューで、

〈「グエムルの演技は監督の頭の中に完璧に作られていました。『今はこういう動きだよ』と、丁寧な状況説明があったので、見えない相手に向かって演じることはそれほど難しくはなかったです。ただ、市民の憩いの場である漢江で声を荒げたり走ったりしていたので、周囲の人から『一体何をしているんだろう?』と不信に見られていました(苦笑)。それは恥ずかしかったですね(笑)」〉

 とフランクに答え、作品のはなつ独特の重苦しい雰囲気を払拭していた。

 日本との縁も深く、25歳のときに『ほえる犬~』を観た山下敦弘監督からラブコールを受け、『リンダ リンダ リンダ』(05年)に出演。

 7歳年下の香椎由宇らとともに韓国人留学生役でセーラー服姿を披露するが、まるで違和感がなく日本語での歌唱シーンも話題になった。ここから彼女のわらしべ長者映画人生がスタートする。

全身を惜しげもなくさらけ出し、全身をもみしだかれる

 29歳で是枝裕和監督からのオファーを受け、『空気人形』(09年)に主演。ペ・ドゥナの役はタイトル通りの空気人形、つまりダッチワイフだ。板尾創路演じる中年男の所有物で、オールヌードと濡れ場がこれでもかと登場するが、彼女は見事に“心を持った人形”を演じきった。

 その空気人形がいつしか人の心を持ち、自分で行動できるようになり、ひとりの男性に恋をして……というストーリー。人気絶頂のさなかによくもまぁこの役を引き受けたものだと思うが、これも是枝監督の力量と情熱を理解してのことだろう。

 普段はメイド服などキッチュな服を着ているが、プロポーションに美肌もあいまって等身大のフィギュアにしか見えない。

 いざ行為となれば、なんのためらいもなく着衣を脱ぎ捨て、ベッドに横たわる。形のいいバストから腰、背中からヒップまで全身を惜しげもなくさらけ出し、全身をもみしだかれる。

 途中でへそのあたりにある空気穴にポンプを差し込んで自分で空気を入れるシーンがあり、やや笑いを誘うが、足を不自然に曲げつつ全裸で座り、ポンプを差し込む様はエロティックを通り越してアートですらある。

 30歳手前とは思えぬあどけなさで男に思うままに抱かれるその姿は“天使人形”そのもので、是枝監督が「この役を演じられるのはペ・ドゥナしかいない」と彼女を指名した真意がわかる見事なラブシーンだ。

 完成披露記者会見ではこの過激な濡れ場について、

「韓国では女優のヌードシーンがあれば監督など数人しか立ち会いませんが、日本は違いました。周りには多くのスタッフがいてしばらく戸惑いました」

 とあっけらかんと語り、会場の笑いを誘った。

 セリフは少ないが、ペ・ドゥナは過去に“セリフではない形で感情を伝える”重要さについて話したことがある。

〈「演技をする時、特に国境を越えて何かを伝えようとする場合に大事なのは、すべての人間が持っている“心”というものが通じ合えるかどうかだと思います。もちろん、言語も大事ですが、心を伝えられるキャラクターかどうかを第一に考えます。日本の監督と組んだ『空気人形』や『リンダ リンダ リンダ』のときもそうでしたけれど、日本語があまりうまくなかったとしても、なんとか自分の気持ちを日本の観客に伝えようとしました」(「Cinema Cafe.net」のインタビュー)〉

 ペ・ドゥナにとって韓国以外での映画出演は日本が初めて。「言葉に頼らない演技での世界進出」のきっかけを作ったことになる。

「フィギュア集めには強い野心があります。“『鬼滅の刃』、どうしても欲しい”とか(笑)」

 シンデレラストーリーは続き、『空気人形』を観たハリウッドからもオファーが届く。ウォシャウスキー姉妹の『クラウド アトラス』でトム・ハンクス、ハル・ベリーらとともにメインキャストを務め、32歳でついにハリウッド・デビュー。

『スター・ウォーズ』ばりのSF大作映画『ジュピター』では特撮ヒロインを演じるなど出演作品の幅も広い。『グエムル』は怪獣映画、『空気人形』では人造人間に扮し、『ジュピター』ではバトルヒロインとSF界隈でも世界的なマドンナとなった。

 そして43歳では再び是枝監督の『ベイビー・ブローカー』に出演している。

 順調に世界的なキャリアを築くペ・ドゥナだが、“世界戦略”について問われるとおどけた様子でこう答えた。

〈「野心なんてありません(笑)。私は是枝監督だけでなく、いろいろな監督と親しくしています。ですから野心とか関係なく、俳優としてラッキーな人生を歩んでいるだけです。是枝監督から『ベイビー・ブローカー』の話があった時は、『じゃあやりますか、はい』みたいな自然な流れで受けている感じ。どちらかといえば、フィギュア集めには強い野心があります。“『鬼滅の刃』、どうしても欲しい”とか(笑)。

 

 そもそも俳優の野心って何でしょう。演技で賞をもらうこと? 演技にランクをつけることなんてできません。ひとつだけ言えるのは、自分が演じる役を現実に存在させるため、そこに最善を尽くし、集中すること。そこには私も野心を持っていると思います」(「Safari Online」のインタビュー)〉

 インタビューなどへの対応も常に気さくで、画面の中と印象が全く変わらないのもペ・ドゥナの魅力の1つだ。

 言語の壁を演技で軽々と超えていく異色の国際派女優にますます期待が高まる。

(岩佐 陽一)

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