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“小さくて気持ち悪い”と番組に呼ばれなかったことも…ラブレターズがキングオブコントで優勝して気づいたこと「僕らは体育会系が苦手なので…」

文春オンライン / 2024年10月26日 17時0分

“小さくて気持ち悪い”と番組に呼ばれなかったことも…ラブレターズがキングオブコントで優勝して気づいたこと「僕らは体育会系が苦手なので…」

塚本直毅(左)と、溜口佑太朗。2008年にはじまった「キングオブコント」をきっかけにコンビを組み、翌年正式に「ラブレターズ」を結成。今年、同大会で優勝を果たす ©杉山拓也/文藝春秋

〈 「あの時、どう見ても相手の方がウケていたけど…」KOC王者・ラブレターズが語った「審査員の好み」問題への本音 〉から続く

 東京コントの先駆者、シティボーイズが設立したASH&Dコーポレーションに所属するラブレターズ。「早く売れたい」「でも体育会系は避けたい」2人が選んだ“非吉本”の道の険しさは、そのままキングオブコント優勝にたどりつくまでの年月の長さにもつながる。

 常設小屋のない事務所、「小さくて気持ち悪いから番組に呼びたくない」とまで言われた身長……数々のコンプレックスから彼らを導いた、特別な「靴」とは。苦節16年、ラブレターズがねばってねばって、ねばった先に見えた「残酷ではない未来」を訊いた。(全3回の3回目/ はじめから読む )

出会いは大学、事務所に所属したきっかけは

――ラブレターズさんは養成所を出ていないですよね。吉本でもなく、お育ちがレア。

塚本直毅(以下、塚本) 出身がよく分からない。どこから出てきたんだっていう。

溜口佑太朗(以下、溜口) 日芸(日本大学芸術学部)で出会って、2008年の「キングオブコント」開催をきっかけにコンビを組んだんですけど、芸人をやろうって正式に「ラブレターズ」を結成したのが2009年。23とか24だったので、そもそも遅いんですよ。なので、養成所に行かないと入れない事務所は全部アウトだねって。所属まで1年かかっちゃうから。あと僕らは体育会系が苦手なので、先輩との付き合いがなさそうなところも条件としてあって。

塚本 探したね~。

溜口 で、もともと塚本さんがシティボーイズさんが大好きで尊敬していたので、ASH&Dコーポレーションに。

――そのときの選択は間違っていなかったと思いますか。

溜口 最初は「ヤベえな」と思ったよね(笑)。ASH&Dに行って、早めに「いいね。じゃあ預かりにしよう」みたいになってこれは理想的だと思ったのに、なんと所属まで2年かかってしまった。

塚本 逆に長くなっちゃった(笑)。

シティボーイズからのゴーサインを待っていたが…

溜口 養成所みたいなシステムがASH&Dにはないので、シティボーイズさん、何ならきたろうさんがゴーサインを出さない限りは所属になれないんですよ。

――そうなんですね!

溜口 「入れるからにはうちは家族としてちゃんと迎える」って、人柄も見られます。

塚本 一生一緒に飯食えるかどうかみたいなラインで見てもらえる事務所なので。

溜口 だから人数が少ないんです。

塚本 で、査定期間が2年あって。結局本所属になったのは2011年の頭でした。

――本所属になってすぐキングオブコント決勝。

溜口 2年間頑張ってお笑いライブにも出て、ちゃんと結果を出したから所属を認められたと思ってたんですけど、ちょうど同じタイミングで山田雅人さんがASH&Dに入るから「お前らもちょろちょろしてるなら一緒に入っちゃえ」みたいな感じだったそうです(笑)。

塚本 結果とか人柄とか関係なかった(笑)。

壁ドンのために、2人でレンタカーを借りて運び込んで

――先日こたけ正義感さんのYouTube、賞レースの後にいつもネタのリーガルチェックをされている動画を拝見したのですが。

塚本 (決勝ネタの)ドングリをあんなに持ち帰るのは窃盗罪というやつですね(笑)。

――その中で、吉本の芸人さんとそれ以外の事務所の芸人さんは、ネタの作り方も考え方が違うのではというお話をされていて興味深かったです。つまり常設の小屋がある吉本では、いろいろな小道具が常に劇場にあるからそれ込みでネタを作れるけど、他事務所の芸人さんは移動させづらい大きなセットがモチーフになるようなネタは難しい。

溜口 ああ。「これがないからこのネタできない」っていうのは何回もありますね。

塚本 何なら、去年キングオブコントでやった壁ドンのネタ。単独ライブで壁のセット作ったんですけど、それを賞レース用にするってなった時に「壁どうする?」問題が出てきて。劇場の壁を叩くわけにいかないので、あのネタをやる時は毎回2人でレンタカーを借りて、2人で運び込んで、向こうに着いたら壁を組み立てて。

 吉本さんだったら、各劇場に何かしら使えるものがあって「あれ発注しといて」で終わるだけなのかなぁとちょっと羨ましかった。

溜口 そうね、レンタカーとかもろもろ含めて1ライブで1万5000円ぐらいかかってた(笑)。マジで決勝行けてよかったんですけど。

塚本 本当に。ずっと赤字でね。

吉本と他事務所では場数が全然違う

溜口 他事務所の芸人同士でたまにしゃべったりすると、「俺たちが決勝行くのをもっと褒めてもらいたいよな」って。

塚本 それね(笑)。

溜口 吉本さんには“常設の小屋がある”というアドバンテージがあるってみんな分かっているし、全然正しいんですよ。だから吉本さんが悪いとかではなく。ただ場数が全然違う。

塚本 舞台数がね。

溜口 他事務所だとそもそも出られるライブが少ない芸人もいっぱいいるので。その状態で決勝行けるまで仕上げてるのをもっと褒めてほしい(笑)。

塚本 それ、本当にみんな言ってたよね。

溜口 だって気持ち悪いですよ。渋谷から幕張までコンビで車で壁運んで。なんでこんなおじさん2人でドライブしてんだ。横にディズニーがあって……。

塚本 きれいな夜景の中ね。

溜口 壁積んで(笑)。何が面白くてやってたんだって思いますもん。

塚本 準決勝を配信で見させてもらった時に、みんながいろんな小道具使ってる中、や団さんが学習机1個だけ使って「居酒屋です」って顔して居酒屋のネタやってたのがかっこよかったもん。「いやいや、それは発注できるじゃない」と思いながら。学習机2つ並べて居酒屋だって言い張ってるの、ザ・ソニーだなと思うよね。

――ザ・ソニー(笑)。

塚本 すごいよ。魂感じるよね。

――ジムに行かず家で自重のみで鍛え上げた人みたいだ。

溜口 そうかもしれない。どっちがいいかというのはないけど(笑)。

「小さくて気持ち悪い」と番組に呼ばれず…

――キングオブコント決勝に出られる前「ラブレターズがシークレットシューズの一日店長。イベントに人が来すぎて5分で終了」というニュースを拝見しまして。

溜口 トークライブイベントをやる予定だったんですよ。

――シークレットシューズってシークレットにするからシークレットシューズなのに、めちゃめちゃ表に出しててかっこよかった。

溜口 いやいや、かっこよくない(笑)。

――優勝後に出演したテレビ番組では、「2人とも小さくて気持ち悪い」という理由でネタ番組に呼ばれなかったというエピソードを話していましたよね。

溜口 そうですね、シークレットシューズを履くことに関しては特に大きな意図とかはなかったんですけど。

塚本 それこそノリというかね。背が低いのはさんざん言われてたから。

溜口 でもいじられるまではいかないというか。(ドランクドラゴン)塚地さんに「ラブレターズってコントのイメージが強いけど、平場出た時に何があるの?」って聞かれて「2人とも背が低いです」って答えたんですよ。でも「それは関係性がないといじれないよ」と。たしかに背が低いことでちゃんと笑いを取れているのって、池乃めだかさんとか、(ナイナイ)岡村さんくらいだなって。

 それに、僕らは2人とも背が低いから、比較対象がないのでいじりづらかったみたいなんですよね。で、2人でいろいろ話してて、シークレットシューズを履こうと。それなら脱いだ時に低さが強調できる。

プラス10センチぐらい履いてても気づかれなかった

塚本 気軽に試着しに行ったら、本当に変わったんですよ。視野が変わった。笑っちゃった。

溜口 こんな世界があるんだ、っていう。

塚本 で、脱いだら「この差なに!?」って。

――比較対象を自分たちで作ったんですね。

溜口 「シークレットシューズ履いてる人って意外といなくない?」から始まって。

塚本 それは知らないよな。シークレットにしてるんだから(笑)。

溜口 それが今、ここで話題になるくらい浸透してね。

塚本 こんなに救ってくれるとは。最初はマジで黙ってたんです。プラス10センチぐらい履いてても誰にも気づかれないんですよ。本当に気づかれない! ってちょっと感動しました。

――やっぱりシークレットなんですね!

塚本 BKB(バイク川崎バイク)さんも小っちゃいんですけど、バイクさんのサングラスの上から目が合ってるのにもかかわらず、バイクさん僕らを見上げながら「お前らチビやな」って言ってるんです。意味が分からない(笑)。

溜口 ラブレターズは小さいという先入観がそうさせる(笑)。

――そこからどう一日店長にまでのぼりつめたのでしょうか。

溜口 さらば(青春の光)さんがシークレットシューズのことをいじってくれて広まり、ある日お店から連絡が来たという感じです。

塚本 こどもの日にイベントやって。一日店長やって。

溜口 「励まされました」ってメチャクチャ言われたんですよ。別に努力してるところを見せたっていいじゃん、っていう空気を作ってくれたと。

塚本 店長をやってる時にそういう言葉をたくさんもらって、背筋が伸びました。

「そんな引け目感じなくていいよ。笑い飛ばせばいい」

溜口 「コンプレックスがちょっと楽になりました」って。友達にいじられても別にいいか、みたいな。「深く考えなくなりました」って。

――ああ、努力してるところをいじられたら恥ずかしいみたいな気持ち、ありますもんね。それが「それでも別にいいじゃん」という空気におふたりがしてくれた。

溜口 テッパンでウケるから。「そんな引け目感じなくていいよ。笑い飛ばせばいい」って思えたら強くなります。

――シークレットシューズも優勝前の一つの転機だったのでしょうか。

溜口 ほんとそうですね。みんなから「おめでとう」って言われるような関係性を作れたのもシークレットシューズなので。他事務所の芸人とかと仲良くなれたきっかけになったのもシークレットシューズなので。

塚本 シークレットシューズが距離を縮めてくれたよね。優勝直後のちょっとした隙間時間に、ファイナリストたちが「まず靴脱げよ」って。いやいや、ちょっと待ってよ。お疲れとかなんかあるだろ(笑)。

溜口 「もっとたたえろよ」って(笑)。 

なぜラブレターズはねばれたのか?

――今回の優勝で、やっぱり面白い人はちゃんと評価されるということをまたラブレターズさんが証明されたなぁと。でも一方でそれは、やめ時を模索している芸人さんには残酷なことかもしれない。

塚本 どうなんだろうな。確かにねばり勝ちしちゃったんで、ねばり勝ちの未来があるんだと思う芸人はいるかもしれないですよね。

――なぜラブレターズはねばれたのでしょうか? 

塚本 それこそ本当に周りの環境のおかげですけど。山里さんやオードリーさんが定期的に声をかけてくれたこと。テレ東の、主にシオプロさんが、息継ぎかのようにたまに呼んでくれるとか。

――息継ぎ(笑)。 

溜口 シオプロ制作の番組、『ゴッドタン』とか『チャンスの時間』とか。

塚本 ギリギリ保てる頃にまた呼んでもらって、「まだ呼ばれるんだったらまだいいか」みたいな、それの繰り返し。

溜口 ねばったというよりねばらせてくれたという感じですよね。面白い人たちが「面白いんですよ、この子たち」って言ってくれるんだったら……って、錯覚させてもらってただけかもしれないですけど。でも、ねばれば面白くはなるよね。

塚本 「なにねばってんだよ」から始まるの面白いもんね。

――確かにねばるおじさんは面白いです。

塚本 マジで厄介ですけどね(笑)。

2人が描く、残酷ではない未来

溜口 若い人たちに混じっておじさんがまだ走ってるって面白いですよ。止まったと思ったらシークレットシューズを履いてまた走り出して、「お前、もういい加減にしろよ」だよね。

――すごい。勇気が出てくる。

溜口 だって僕らが死にかけた状態で「西岡中学校」やってたらメチャクチャ面白いじゃないですか(笑)。ベッド横の生命維持装置が「ピコーン、ピコーン」って鳴ってる中で。

塚本 やっぱおもしろいな。ぜんぜん残酷じゃないかもしれない。未来は明るいかもな。

撮影 杉山拓也/文藝春秋

(西澤 千央)

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