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〈「インフレには不動産投資」は本当か?〉橘玲氏が臆病者のために考える「リスクなしで金融資産を保全する方法」

文春オンライン / 2024年11月27日 6時0分

〈「インフレには不動産投資」は本当か?〉橘玲氏が臆病者のために考える「リスクなしで金融資産を保全する方法」

インフレ時代のマイホーム購入で考えるべきことは?(写真はイメージ) ©show999/イメージマート

物価が立て続けに上昇するインフレ時代に、どのように資産を守ることができるか。橘玲氏が解説する。

◆◆◆

インフレには不動産投資?

 インフレ時代に資産を守るとは、100万円の札束を自宅の金庫に入れておくことではない。物価が10%上がれば、これまで100円で買えたものが110円になり、100万円の価値(使い勝手)は実質的には90万円程度に減ってしまうからだ。

 物価が継続的に上昇するインフレでは、現金の価値はどんどん失われてしまう。アルゼンチンのような高インフレの国では、現地通貨で給料を受け取ったとたん、すぐに米ドルに両替しようとみんなが必死になっている。

 年率3%でお金の価値が減価していくと、5年目には100円の実質価値は90円になり、10年で76円、20年で58円に減り、25年で半分以下になってしまう。

 インフレ対策には不動産が有効だとされる。長期的には、不動産価格の上昇率はインフレ率を上回っているからだ。しかし歴史的には、株式市場の上昇率は不動産をさらに上回っている。この理屈では、不動産ではなく株式のインデックスファンドに投資すればいいことになる。

 ウォーレン・バフェットは1958年に、故郷のネブラスカ州オマハに3万1500ドルで自宅を購入した。その家の現在の評価額は140万ドルだが、そのお金を株式市場に投資していたら今日の価値は2300万ドルになっていたはずだ。「史上最高の投資家」はこれを、自虐的なユーモアを込めて「バフェットの過ち」と呼んでいるという。

 マイホームの購入(という不動産投資)と株式投資とのいちばんのちがいは、住宅ローンによってレバレッジをかけていることだ。ほとんど理解されていないが、ファイナンス理論的には、マイホームの購入は株式の信用取引と同じだ。それも、複数の銘柄に分散投資するのではなく、借金してひとつの銘柄にすべての資産を注ぎ込むのだから、はるかに大きなリスクを負っている。都心のマンションが値上がりして、大きな(帳簿上の)利益をあげたひとがよく出てくるが、これは典型的なサバイバル(生存者)バイアスだ。多くの参加者がハイリスク・ハイリターンの投資をすれば、一定数の成功者が出てくるのは当たり前なのだ。

 インフレ時代のマイホーム購入で問題になるのが、金利が上がれば毎月の住宅ローン返済の金額も増えることだ。住宅ローンの変動金利を年0.3%として、3000万円を30年で借りると、毎月の返済金額は約8万7000円だ。金利が1%に上がると約9万6000円、2%なら約11万円になり、5%で約16万円とほぼ倍になる。ちなみに、住宅ローン金利が5%というのは歴史的にはけっして珍しくない(バブル最盛期の1990年代の変動金利は8.5%だった)。

 金利上昇による返済負担を避けるには、いまのうちに固定金利に借り換えればいいと、誰もが考えるだろう。だが10年固定金利はすでに1%台まで上がっていて、変動金利に比べて毎月の負担が10%以上増えてしまう。こうして多くのひとが、大きなリスクを抱える変動金利を選ぶのだろう。

「頭金なしで住宅ローンが組める」と宣伝する不動産業者がいるが、これは無限大のレバレッジをかけて不動産の信用取引をすることなので、金利の上昇や不動産価格の下落に対してきわめて脆弱だ。将来、金利が上がって返済が苦しくなったとき、マイホームを売却しても借入資金を返済できないと、住む家がなくなったのに借金だけが残ることになる。自己破産で借金は清算できるが、クレジットカードがもてなくなるなど、信用が毀損することは避けられない。

リスクなしのインフレ対策とは

 そもそも物価が上がったときに、それを上回って株価や不動産価格が上昇するという保証はない。そればかりか、ファイナンス理論では、他の条件が同じであれば、金利が上がれば株や不動産の価格は下落することになる。金利の上昇で資産の現在価値が減価するからだが、直感的には「家賃が変わらなければ、同じ投資収益を確保するには、不動産価格が安くならなければならない」と考えれば理解できるだろう。

 そこで「臆病者」のために、リスクなしでインフレ時に金融資産を保全することができるかを考えてみよう。

 インフレによる資産の減価に保険をかけるのに使われるのが物価連動国債だ。

 一般的な国債は利子と元本が固定されているが、物価連動国債はコアCPIに連動して元本が変動する。表面利率は固定だが、元本が増減するため、それに応じて受取額は変わる。ただし、10年物価連動国債の現行の表面利率は0.005%ときわめて低いため、利子は無視して、物価が上がれば元本も増える国債だと考えればいいだろう。

本記事の全文は「文藝春秋 電子版」に掲載されています(「 インフレに克つ 臆病者の資産防衛術 」)。 全文 では、物価連動国債の詳細も紹介されています。

 

記事全文 (7,000字)では、さらに下記のテーマについて深堀りしています。

  ・物価上昇で年金が目減り
 ・個人向け国債には「おまけ」が
 ・不確実な未来より「確実な損失」
 ・人生100年時代の基本戦略

 

「文藝春秋 電子版」(初月300円から)では下記の記事が読み放題です。

・「 インフレに克つ 臆病者の資産防衛術 」橘玲
・「 臆病者のための『新NISA活用術』 」橘玲
・「 臆病者のための『資産防衛術』 」橘玲
・「 教育無償化は税金のムダ使いだ 」橘玲
・「 橘玲のイーロン・マスク論 」橘玲

(橘 玲/文藝春秋 2024年11月号)

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