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「悪夢の民主党政権」「そんな人たち」石破茂首相(67)が“なんか安倍氏に似てきた”悲しいブーメランの理由

文春オンライン / 2024年10月29日 6時0分

「悪夢の民主党政権」「そんな人たち」石破茂首相(67)が“なんか安倍氏に似てきた”悲しいブーメランの理由

石破茂氏 ©時事通信社

 衆院選の結果が出た。
『自公大敗 過半数割れ』(産経新聞)
『裏金自民惨敗 与党過半数割れ』(東京新聞)

「裏金自民惨敗」は強烈だ。この結果を見ると選挙を仕掛けた側(与党)は失敗だったとも言える。

そもそもなぜ今、選挙なのか?

 私は公示日から各地の選挙区を見て回ったが、現場に行くほど感じたことがあった。「そもそもなぜ今、選挙なのか?」である。

 石破茂内閣は発足して戦後最速の8日後に解散をした。誰が総理になってもイメージが新鮮なうちに早く選挙をしてしまえという自民党の戦略だったと報じられている。だとすれば完全な自己都合だが、そうしたなか選挙戦が始まると気になることがあった。

 候補者の演説を聞いていると「能登半島で豪雨の被害に遭われた方々にお見舞いを申し上げます」などと言うのだが、すぐに地元の話や利益誘導実績の話になるのだ。能登は単なる枕詞なのか? 被災地では選挙どころではないという報道もあったのに。

 そう思い始めたら裏金候補の選挙を見るのも大事だが、能登へ行って現地の選挙を見なければいけないと思った。何がどう語られているのか。

能登の被災地に岸田元首相が

 私は3年前の衆院選からラッパーのダースレーダーと共に全国の選挙現場を見るようにしている。撮影した映像は2本のドキュメンタリー映画にもなった。今回も見たい選挙区はたくさんあったが急がれた選挙だったので日程のやりくりに苦労した。能登へ行くのは10月23日からの2日間となった。選挙戦もすでに終盤である。

 当日朝に金沢に着き、車で能登に出発。するとある情報に目がとまった。岸田文雄前首相が石川3区の自民党候補の応援演説に来るという。10時30分から能登食祭市場(七尾市)とある。自民党が早い選挙日程を想定して動き出したのは岸田氏の首相在任中だ。では岸田氏は今回の選挙の「意義」を被災地の石川3区の人たちの前でなんと言うのか?

 会場の警備は厳戒態勢。荷物検査と金属探知機での検査を受けて入場した。すでに1階は満員だったので2階へ。1階のステージをのぞき込むのがやっとだったが、演説ははっきりと聞こえてきた。

岸田氏が能登の演説会場で語ったこと

 岸田氏は首相を退任したばかりという悲壮感はなくてむしろ元気そう。耳を傾けていると、演説の後半にその言葉が出た。

「今、選挙がおこなわれている。もちろんですね、この被災地の皆さんにおかれては今まだ自分たちは大変な状況なんだ、苦しんでいるんだ、その最中になんで選挙をやるんだという思いを持っておられる方もおられる。こういったことも十分承知をしています。本当に厳しい状況ですからそう思われる方がおられることも、我々はあのー、十分理解しなければならないと思っています」

 そして今回の選挙の「意義」を次のように説明した。

「ぜひ皆さんに考えていただきたいことがあります。民主主義国家においては、政府や政治家は皆さんの選挙による投票によってエネルギーや活力、元気をいただくことになるわけであります。皆さんが選挙において投票することがその政治家や政府に対して力を与え、より思い切って対策を進める原動力になる。これが民主主義国家における選挙であります」

 驚いた。今回の選挙は政治家に元気を与えるため、というのだ。だから意思表示をしてくれと。被災地で自分たちの都合を堂々と話していることが衝撃だった。「投票によってエネルギーや活力、元気をいただくことになる」と言うが、岸田氏や応援演説をした候補者は与党だ。

裏金問題を早く片付けてしまいたい

 今のままでは何もできないのか? その一方で裏金問題を早く片付けてしまいたいという解散戦略について正直な説明はできないだろうなぁとも感じた。

 裏金と言えば私たちが能登へ行った日、あるスクープが放たれた。自民党が派閥裏金問題で非公認とした候補の政党支部へ活動費2000万円を支給していたことが判明したのだ。共産党の機関紙「しんぶん赤旗」の報道である。裏金報道自体も赤旗が最初だった。

 自民党の森山裕幹事長は支給を認めた上で「党勢拡大のための活動費として(党支部に)支給した。候補者に支給したものではない」とのコメントを出した。この説明で「募っているが募集はしていない」を思い出した。2020年の「桜を見る会」をめぐる国会答弁で安倍首相がした珍答弁だ(詳細は各自確認)。

 そういえば石破首相は安倍政権時代は“党内野党”としての言葉が注目された。

 自民党議員のメディアへの威圧的発言については「なんか自民党、感じが悪いよね」という発言もあった。この言葉はツイッター(現X)で話題になり、#自民感じ悪いよね というハッシュタグにもなったほどだ(2015年)。

街頭演説で石破氏が“豹変”した

 その石破氏が遂に首相となり、何が変わるのかと見ていたら本人が豹変した。今回の赤旗の報道に関しては「このような時期にそのような報道が出ることは、誠にもって憤りを覚える。私どもはそのような報道に負けるわけにいかない。そのような偏った見方に負けるわけにもいかない」と発言(24日、広島市の街頭演説)。

 メディアを威嚇する自党議員の発言について「なんか自民党、感じが悪いよね」と言っていた石破氏が報道に対して強い言葉や口調を用い始めたのだ。

 それだけではない。「何とか民主党、何とかの会。どんな国をつくるのかさっぱり分からない。そんな人たちにこの国を任せては絶対にならない」と発言(21日、大阪府高槻市)。

 さらには「悪夢のような民主党政権」という安倍氏が好んで使用したフレーズも使い出した(22日、愛知県豊田市)。なんか安倍氏に似てきた。自民党の総裁は誰がなっても同じ物言いになるということか。

 しかし今回、与党は過半数割れをした。自民党は惨敗と見るべきなのか、まだこの程度で済んだというべきなのか。いずれにしろ石破首相が以前に言っていた「自民党、感じが悪いよね」のひとつの答えが出たと思える。「石破さん、感じ悪いよね」というブーメランにもなって返ってきた。

 石川県で見た岸田前首相はご機嫌そうだったが果たして「与党に元気やエネルギーを与える選挙」になったのか。党内抗争が元気になるだけだとしたら、被災地はまた置き去りにされないだろうか。

(プチ鹿島)

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