「70歳になっても、俺はキムタクだって言い張る」SMAP公開謝罪→解散後も“キムタクものまね”を続ける“木村拓哉そっくり”芸人の生き様
文春オンライン / 2024年11月17日 11時0分
“木村拓哉そっくり”芸人・元木敦士さん ©佐藤亘/文藝春秋
〈 “キムタクそっくり”芸人が、木村拓哉の前でものまね披露…そのときキムタク本人が見せた“厳しい反応”「受け入れられている雰囲気ではなかった」 〉から続く
ツイッター(現X)のサーバーがダウンするほど多くの人々に衝撃を与えた『SMAP×SMAP』生放送での公開謝罪、そして解散。木村拓哉モノマネ芸人として生きていくことを決めた元木敦士(41)にとってもそれはまた1つの大きな転機となる。パニックに陥ったファンから送られた悲痛なDM、SMAP再結成を望む1人のファンとして元木敦士が夢見る景色。「本当は誰も木村拓哉になんてなれない」と言う彼がそれでも木村拓哉を追い続ける理由を訊く。(全3回の3回目/ 1回目から読む )
◆◆◆
ファンから「どうなってるんですか?」「いつ再結成するんですか?」とDMが…
――SMAPが解散したのが2016年、既に木村さんのモノマネをしていらした元木さんは当時SMAPの解散をどのように受けとめたのでしょうか。
元木敦士さん(以下、元木) ほんとの真相なんかはわからないし、もちろんショックはありましたけども、ご本人同士が話し合ってそう決まったのなら、もうしょうがないなという割り切りはありましたね。僕自身も、何十年も芸歴があるお笑いコンビが解散していくのを見てきましたから。
でも当時ファンの方は本当にどうしたらいいかわからなくなったみたいで、僕にDMで「どうなってるんですか?」「いつ再結成するんですか?」って送ってくるくらい。いや、気持ちはすごくわかるけど……俺、何にも知らんし、すいません、みたいな。
――ものまねSMAPはそれでも活動を続けている。
元木 9月9日がSMAP結成日で、毎年イベントがあって。たまにファンの方の集まりに呼んでいただけたりするんです。やっぱりファンの方は復活を待っている。僕らはその箸休めになれればいいなという感じです。
仕事としてのモノマネをやめても、木村さんの真似をし続ける
――木村さんも世代を超えたスターですし、SMAPも世代を超えたグループでしたもんね。アイドルに興味がない人もSMAPは好きって人たくさんいました。
元木 あの5人が揃うと最強なんです。それぞれ色が違うあの5人が。
――元木さんは木村拓哉さんただ1人をずっとモノマネしていこうと決めていて、それって木村さんと心中じゃないですけど、人生を共にしていくということですよね。
元木 そうですね。
――SMAPの解散も単なる芸能ニュースではなかったのかなと。自分の仕事の方向性がこれから変わっていってしまう怖さはなかったですか。
元木 ああ。でも、お仕事としてやらせてはもらってるんですけど、そのずっと前から木村さんと同じ服を通販で買ったり、髪型を真似したり、立ち振る舞いを研究したりしてたんですよ。僕がもし仕事としてのモノマネをやめても、ドラマの木村さんを見たら真似してると思います。それはもう変わらないのかなと。別に仕事がなくてもやってるとは思いますね。
老いても、禿げても、ソウルが木村拓哉であれば……
――生活というか、人生というか。
元木 勝手に共同体といいますか、勝手に憧れさせてもらってる。僕が70歳ぐらいのおじいちゃんになっても、ロン毛のサーファーカツラみたいなのをかぶって、俺はキムタクだって言い張るくらいになりたい。
――木村さんも、そして真似をする元木さんも歳をとる。避けては通れない、スターの「老い」の問題を元木さんはどう捉えていますか。
元木 僕がもしものすごい禿げてきたとしても、それはそれでおもろいのかなあと。どこがキムタクやねんっていうのがあってもいいのかな。でも、キムタクだって言い張ってる、みたいな。なんかそこはすごくポジティブに考えていますね。
――ソウルが木村拓哉であれば……。
元木 最近ちょっとサボってるんですけど、一応スポーツジムには通ってます。あとはホワイトニングに行ったりとか。もう40超えて、いろいろと大変です(笑)。
「家族に行ったらあかん」と思った理由
――木村さんは工藤静香さんとご結婚され、お子様も生まれ、それこそ人生が動いていますよね。元木さんは木村さんファミリーのモノマネユニット「木村ファミリー」もやられている。
元木 あれは正直、最初渋ったんです。1回断ったんですよ、実は。ちょっと家族に行ったらあかんな、みたいな気持ちもありまして。
――なぜ「家族に行ったらあかん」と思われたのでしょうか。
元木 あのときはまだお嬢さんが成人していなかった。だからちょっと抵抗がありました。ただ、他のモノマネ芸人さんの熱量がすごくて「こんだけネタ考えてきました」と見せられて、了解しました。芸人として心を動かされたというか。今はご家族全員がなんらかの芸能活動をされている芸能一家ですので、モノマネ対象にはなりますよね。
――元木さんの中でそういう基準がある。
元木 まあ、そうですね。どういうこだわりやねんというのがあるんですけど。SNSも木村拓哉さんのはもちろんフォローしてるんですけど、ご家族のフォローは、なぜかできないんですよ。どこに気ぃつかってんねんみたいな。僕なんかが何を気にしてんねんって話なんですけど、おこがましくてちょっとまだお嬢様や奥様のフォローはできません。
「絶対それはしない」モノマネ芸人としての“線引き”
――ああ、なんかわかるようなわからないような(笑)。
元木 僕を発見することはないと思うんですけど、こいつに見られてると思ったらあんまりいい気はしないだろうなと。だから、あくまで木村さんだけを追ってる感じですね。
――他にはそういう「線引き」ってあるんですか。
元木 そうですね。中にはコンサートなどにご本人の格好をしていって、その方のファンにキャーキャー言われたいそっくりさんもいるんですけど、絶対それはしないですね。木村さんの格好をして、写真を撮られにいくみたいなのは絶対にやらない。コンサートは行くんですけど、それはもうただ木村さんのコンサートを楽しみに行っているので。
――自我を出さない。
元木 そういう余計なことはしないです。まあ、自分の中の礼儀みたいなものなんですけど。ずっと(モノマネを)してる方はあんまりそういうことはしないと思いますよ。
モノマネをするにあたり大切にしていること
――お話を伺っていると、木村さんはすごく「余白」を持ったタレントさんなんだなと。実際はわからないけど、木村さんだったらこういうことを言うんじゃないか、やるんじゃないかみたいな、そういう想像の余地がすごくある方なんですね。
元木 いや、そうなんですよ。木村さんはドラマでも、どうしたらかっこよく見えるかをご自身で考えながら、それを見せてくれてる気がします。たとえばこのアイスコーヒーを飲む時、普通の人はただ普通に飲む。だけど拓哉さんは飲んだ後に……苦味があるぜということが伝わるような表情を1個はさんでくれる。我々はそこにツッコミしつつ、やっぱりカッケーなってなる。
――すごいサービス精神ですよね。
元木 そうなんですよ。そんなの見せられた日にはもうやるしかないじゃないですか、僕的には。最近でいうと、あのハンバーガーの持ち方とか。
――ああ! あのツーシーム投げそうな握り(笑)。
元木 そういう発見があるとうれしくなってネタにしたくなります。
――元木さんが木村さんのモノマネをするにあたり、何を大切にされていますか。
元木 かっこつけをやったとしても、最後は笑いで終わりたいですね。かっこつけて指パッチンしようとするのに鳴らない、とか(笑)。
一度インスタで「キムタクメイクからのスッピン」っていうのをやったんですよ。ウケると思って。そうしたら、ものすごい勢いでフォロワーが離れていきまして(笑)。これがほんとの「ちょ待てよ」だなと。
「スッピンはめちゃめちゃ違う」モノマネ芸人の“素顔事情”
――スッピンは違うんだ……。
元木 これは求められてなかったんだなとわかりました。それからスッピンを載せることはほぼほぼなくなって。お客様のニーズに応えたコンテンツを出していこうかなと。まあ、いい失敗でしたよね。少数の方にはウケたんですけど、ちょっと自我が出すぎちゃった(笑)。
――笑いの部分が超えすぎてもいけないんですね。
元木 そうですね。ちょける(ふざける)のはいいけど、素顔はダメ。だってスッピンはめちゃめちゃ違うんですよ。普段はメガネだし、ほんとにね、全然違うんです。
モノマネ界でそっくりさんだけは序列が下がる
――モノマネ界にはいろいろなタイプの芸人さんがいらっしゃいますが、元木さんのように1人の顔や姿を極めるタイプの方は、どういう立ち位置に置かれるのでしょうか。「あいつはキムタクだけだ」みたいなことを言われることもありましたか。
元木 それは全然ありますね。やっぱりいろいろな人のモノマネができる方、歌マネができる方はすごいなと思いますし。顔も歌もそっくりさんという、このタイプも最強ですね。
だからモノマネ界の序列としては、いろんなモノマネをやれる方と、顔も声も歌もできる人、これが二強です。そっくりさんだけになるとちょっと序列が下がるのは事実です。
――なるほど。
元木 ただ、そうした技術のしっかりした方々の中に入ると、僕のような箸休めの笑いも存在できる。そこを仕事としてやっていくしかないんだと思います。歌、努力してもできなかったですからね。なんせボイトレ教室をクビになったので……。
木村拓哉モノマネ芸人はみんな仲がいい
――木村拓哉さんモノマネ芸人の中での力関係というか、序列はあったりするんですか。
元木 力関係で言えば、やっぱりホリさんが長いですし(笑)。あとはとくにそういうものはないのかなあ。みんな仲いいですね。意外にもキャラがかぶってないんで。バチバチのライバル争いもないですし、なんなら衣装を貸したりとかもありますよ。「めちゃくちゃいいっすねえ。めっちゃ拓哉さんに近づきましたよ!」って乗せたりして。
――優しい。
元木 いやいやいや。普通に、僕は「拓哉業界」が良くなればいいなっていう、それだけです。みんなで拓哉を盛り上げようぜみたいな。みんな木村拓哉が好きだから、根本が。
「いつかご本人たちが5人揃うみたいな時が…」今も夢見るSMAPの再結成
――拓哉業界を盛り上げたい。
元木 いつか木村軍団を作りたいですけどね。ホリさんが言ってくれたら一発でできると思うんですけど(笑)。みんなそれぞれ適材適所というか、歌が似てるならこの人とか、しゃべりならこの人とか、素っ頓狂なやつはこいつみたいな。いつかそうしてお仕事でやったことが認められるようになって、またいつかお仕事で共演できたらいいですね、木村さんと。
とにかく木村さんにはあんまり迷惑かけたくないんです。ここまでやっててあれですけど、ここまで荒らしといて、おまえが言うな、なんですけど。ですからいつか、木村さんが「どうだい?」って声をかけてくださったら……本当にありがたいですね。
そしていつか、もしいつかご本人たちが5人揃うみたいな時がいつかあって、もう一度ものまねSMAPが本物のSMAPと共演できたら……それがもう集大成ですね。ものまねSMAPはその日に解散でいいと思います。
「似てない」も「ニセモノ」もツッコミとしては一番欲しい
――今日元木さんがいらした時に思わず「ほ、本物だ!」って口に出してしまったんですけど、マネージャーさんが「いやいや、ニセモノっすから」って笑っていて。ニセモノと言われることの喜びや悲しみはどんなところにあるのでしょうか。
元木 そうですね。モノマネが本業の方にとっては、似てないというのはすごく悲しいことなんですけど、僕の場合、「似てない」も「ニセモノ」もツッコミとしては一番欲しいやつで。
――そうなんですか。
元木 ちょっと特殊なタイプかもしれないですね。やってるのはお笑いなので「似てない」をうれしく感じてしまう。「ジェネリック木村」とか書かれるといいツッコミだなあって思いますもん(笑)。
――ジェネリック木村(笑)。
元木 そもそも木村拓哉さんのモノマネなんて、不可能なんですよ。あんなかっこいい人、あんなスーパースターをね。でも好きだからどうしても木村さんになりたくて、あがいてるやつらがいる。僕もその1人というだけで。
小宮くんのモノマネは「公認」、木村さんは…
――かっこいい……でも元木さん、ここまでずっと声が三四郎の小宮浩信さん。顔は木村さん、声が小宮さん。脳みそが受け入れられないままここまできてしまいました。
元木 “こ、小宮じゃない、そうじゃないって” まさかのこっちはすごい似てるっていう(笑)。小宮くんとは移籍する前の事務所が一緒で、同期なんです。元々、地下ライブもずっと一緒にやっていたのでモノマネしやすかったんですよ。
先月たまたま小宮くんに会ったら「モノマネしてくれてありがとね」って言ってくれたんですよ。なので小宮くんのモノマネは「公認」ということになってます(笑)。
――小宮さんは公認、では木村さんは……?
元木 木村さんは……黙認です(笑)。
撮影=佐藤亘/文藝春秋
(西澤 千央)
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