生後6か月の娘に“先天性の難病”発覚、医者は「2歳まで生きられない」と…星野真里(43)が語る、長女が「先天性ミオパチー」と診断された経緯
文春オンライン / 2024年11月2日 11時0分
女優の星野真里さん ©佐藤亘/文藝春秋
今年9月、9歳になる長女・ふうかさんが難病「先天性ミオパチー」であると公表した、女優の星野真里さん(43)。難病を抱える娘とどのように向き合いながら、子育てをしてきたのだろうか。病気発覚の経緯から現在の生活に至るまで、星野さんに話を聞いた。(全2回の1回目/ 2回目に続く )
◆◆◆
産後しばらくはまったく病気を疑ってなかった
先天性ミオパチーは、筋組織の形態に問題がある疾患で、生まれつき「筋力が著しく弱い」「異常に身体が柔らかい」といった特性を持つ。運動発達の遅れが主な症状となるため、出産前や出産直後は病気に気付かずに、成長過程で発覚することがほとんどだという。
「ふうかを妊娠しているときは、本当に順調そのもので。つわりもなく、妊娠前と変わらない生活を送っていました。出産時も陣痛が来てから7、8時間で生まれてきてくれて、医師からは『安産ですね』と言われました。母乳もしっかり飲んでくれる子だったので、産後しばらくはまったく病気を疑ってなかったですね」(星野真里さん、以下同)
星野さんが違和感を覚え始めたのは、出産から3ヶ月が経った頃だった。生後3ヶ月の乳児と言えば、徐々に筋肉や神経が発達し、一般的に「首がすわる」と言われている時期。同じ時期に生まれた子どもたちが順調に首がすわっていく中、ふうかさんにはその気配すらなかった。
6ヶ月検診で“何らかの病気の疑い”を指摘され…
「『首がすわらない』『身体が柔らかい』と言ったキーワードで、何度もネット検索をしました。でも、ピンとくる回答は見つからない。周りに相談しても『子どもの成長には個人差があるから』と言われることが多かったです。
あの頃は、『そうだよね、成長は人それぞれだもんね』と自分に言い聞かせて、不安な気持ちを押し殺していました」
生後半年を迎えても、ふうかさんの首がすわることはなかった。そして6ヶ月検診で訪れた病院で、医師から“何らかの病気の疑い”を指摘される。
ただ、そのとき疑われたのは、別の先天性疾患だったそうだ。星野さんは声をつまらせながら、当時の状況をこう振り返る。
「小児科の先生から、『ふうかさんは重い病気にかかっている可能性があるから、大きい病院で精密検査を受けてほしい』と言われて。『もしその病気だった場合、外科的処置をしなければ2歳まで生きられない可能性が高い』とも説明され、もう何が何だかわからなかったです」
2歳まで「先天性ミオパチー」と確定できなかったワケ
紹介された大きな病院で改めて検査した結果、「先天性ミオパチーの疑いがある」と診断された。しかし、その場で病名が確定することはなかったという。それはなぜか?
「先天性ミオパチーの確定診断を受けるには、全身麻酔をして筋肉の繊維を取って検査をする必要があります。当時生後半年だったふうかはその検査が受けられず、2歳を迎えるまで『先天性ミオパチーの疑い』のまま日常を過ごしていました」
娘の病名が確定しないまま過ごす日々。きっと、大きな不安を抱えながら育児と向き合っていたのではないか――。そう想像しながら話を聞いていたが、星野さんの口から出てきたのは、予想を裏切るポジティブな言葉だった。
「最初に疑われた病気が命にかかわるものだったから、その病気じゃなくてホッとしました。その後も先天性ミオパチーの疑いは続いたけれど、『この病気なら、娘の命は奪われない。私はこれからもこの子と一緒にいられるんだ。この子の成長を見られるんだ』と、喜びのほうが大きかったですね」
「むしろ楽をさせてもらっているな」と思うことの方が多かった
そんなふうかさんは現在、小学3年生。病気のケアをしながらの子育てには、苦労も多かったのではないか。星野さんにそう尋ねたところ、意外な答えが返ってきた。
「私はふうか以外の子育てを知らないのでなんとも言えませんが、『辛かった』『大変だった』と思う時期が思いつかないんですよね。
彼女は筋肉が弱いので、自分で移動することができないし、声も小さかった。だから、赤ちゃんの育児でよく聞く『動き回って何するか分からないから目が離せなくて大変』『泣き声が大きくてストレスがたまる』といった悩みがまったくなくて。
周りの保護者の話を聞いていたら、『むしろ楽をさせてもらっているな』と思うことの方が多かったかもしれません」
難病を抱えた娘と過ごす中で、「なぜ自分たちだけ」といったネガティブな感情に囚われることもなかったという。
「ふうかは幼稚園の頃、病気や障害のない子どもたちと一緒に生活をしていました。そのときに保護者同士でよく話していましたが、『ほかの子やその親御さんは、病気や障害がないからこそ、周りと比較して悩むことも多いんだな』と感じることがありました。
一方で、ふうかと私の場合は、周りと比べることがそもそもありません。病気を理由に、親子で閉じこもった生活を送っていたら、『なんで私たちだけ』と思っていたかもしれない。でも、幼少期からたくさんの人たちと関わったことで、恵まれている面に気づけたと思っています」
葛藤しながらも病気を公表した理由
とはいえ、初めての子育てや病気のケアで、ときには不安にかられる瞬間もあったはず。手探りの育児生活の中で、星野さんは何を心の支えにしていたのだろうか。
「ふうかと同じ病気のお子さんを育てるご家族のブログです。難病でも家族で支え合い、笑って過ごしている姿には、何度も励まされました。だからこそ、『これまでの恩返しになるなら、私たち家族のことも発信したい』と思うようになったんです」
2024年9月15日、星野さんは自身のInstagramで、ふうかさんの病気を公表した。しかし、公表を決意するまで何度も葛藤したという。
「公表することで、どれくらいの影響があるのか、私には想像がつかなかったんです。家族に何か悪い影響があったらどうしようと思うと怖くて、長い間、躊躇していました」
それでも公表したのは、星野さんやふうかさんが経験してきた「世界」を多くの人に知ってほしい、という願いからだ。
「娘を通じてたくさんの人や制度に助けられて。こんなに温かい世界があるなんて、ふうかが産まれる前までは全く知りませんでした。私が経験した温かい世界をほかの人にも知ってほしいと思い、公表することを決意しました」
ネガティブな反応はほとんどなかった
星野さんの勇気ある公表を、多くのメディアが取り上げた。本人たちのもとには、どんな反響が届いたのか。心配していた“悪影響”はあったのか。
「病気を公表した直後から、温かいコメントがたくさん届いたんです。中には、『私もふうかちゃんと同じ病気です』という方もいて。病気について気軽に話せる人がいないから、公表してくれて嬉しい、という反応もありました。
公表前に不安に思っていたネガティブな反応は、蓋を開けてみるとほとんどありませんでしたね。私が想像していた以上に温かい世界が広がっていて、『公表してよかったな』と思いました」
撮影=佐藤亘/文藝春秋
〈 難病「先天性ミオパチー」の9歳長女に「好奇の目を向けられたことも…」星野真里(43)が明かす、“病気への偏見”に娘が見せた驚きの反応 〉へ続く
(仲 奈々)
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