嫌がる女性をムリヤリ…10人以上を強姦・強盗殺人「日本最悪のシリアルキラー」が残した“最期の言葉”(1915年の事件)
文春オンライン / 2024年11月2日 17時30分
明治、大正の世を驚かせた殺人鬼「殺尼魔」と呼ばれた男の末路とは…。写真はイメージ ©getty
〈 美人と評判の21歳女性をムリヤリ…強姦・強盗した相手は10人以上「日本最悪のシリアルキラー」の正体(1915年の事件) 〉から続く
「面倒臭えから、さっぱりやってもらいやしょうぜ。なあに、早く死刑になったほうが、さっぱりしてようがさあ」
全国の尼僧(出家した女性)を手にかけたことでついたあだ名は「殺尼魔(さつにま)」…。明治、大正にかけて10人以上の女性の命を奪った殺人鬼はどんな最期を迎えたのか? 新刊『 戦前の日本で起きた35の怖い事件 』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/ 最初から読む )
◆◆◆
ついに犯人の身元が特定できた理由
翌1915年(大正4年)1月には鎌倉の感応寺に押し入り、美人尼僧として評判の教道(同21歳)を強姦・殺害し衣類数点を強奪。大米によれば、教道とは以前から情交関係にあったとのことで、後に犯行の模様を次のように語っている。
「(情交の後)お前は男好きの堕落尼僧なのだ、と私が言ってやりますと、教道はひどく腹を立てて生け花用の花バサミを持ってかかって来ましたから、私はハサミを取り返し、教道尼の喉を突いて殺したのであります。このとき、裾が乱れて陰部が見えましたから、意趣を晴らすために陰部も突こうと思ったのですが、これは実行しませんでした」
同年5月、大阪府下の三島郡の慈願寺に押し入り、住職を殺害し金品を奪い、7月初めに再び上京。杉並村阿佐ヶ谷の尼寺、法仙庵で69歳の尼僧を強姦したうえ、現金5円と衣類19点を強奪、逃走した。一命を取り留めた尼僧は犯人の風体をしっかりと憶えており、証言によれば「年齢40歳前後。丈5尺2寸(約157センチ)ぐらいの色白の男で、鼻筋が欠けている」との特徴を持っていた。
ちなみに2ヶ月前の同年5月頃、富山出身の前科三犯の46歳の男性が一連の尼僧殺しについて自供したとの報道がなされたが、これは完全な誤報である。男は警察の拷問による偽の自白を強いられており、大米の被害関係者による面通しでも「こんなに良い男じゃない」と否定されたそうだ。
神奈川の警察と警視庁が競い合うように捜査を進めていくうち、法仙庵で奪われた衣類が芝露月町(現在の東京・麻布)の古着屋で発見される。売主は鼻筋の欠けた男で「松本四郎」と名乗っていた。その他にも被害に遭った全国の寺の住職やその関係者たちの証言から、鼻筋が欠けた男の情報が次々と浮上し、大米が人相写真をつけて全国に指名手配される。
同年8月、パナマ帽を被った松本四郎とみられる男が女と一緒に新橋駅から22時40分発の博多行きの列車に乗ったという情報が同駅員から寄せられ、博多駅に狙いを絞った福岡の捜査員が同駅前で待ち構えた。と、15時過ぎ、荷車に荷物を積んだ松本らしき男と、その連れ合いの女性が駅に姿を現した。
捜査員が「あんた、松本さん?」と声をかける。と、松本は「そうだが…」と答え身構えたところを、2人の捜査員が飛びかかり身柄を取り押さえた。大米龍雲、逮捕。このとき、一緒にいた内縁の妻も逮捕されたが、後の調べで彼女は大米に脅されるまま連れ回されていた被害女性と判明、ほどなく釈放されている。
「最後に何か言うことはないか?」
その後、警視庁に移送された大米は取り調べに対し、法仙庵での窃盗については認めたものの、一連の尼僧殺しは頑なに犯行を否認した。しかし、警察が物的証拠を提示すると居直ったように口を開いた。
「こうなったら仕方ない。悪事は全部白状する。だが、そこらへんの小泥棒とは訳が違う。殺しと強盗だけで200はある。忍び込みと空き巣もそのくらいはあるだろう。俺はそれほどの大泥棒だ。それを白状するのだから警視庁の一番上役を連れてきてくれ」
その後の調べで強盗殺人3件、強盗強姦5件、強盗7件、窃盗9件の裏付けが取れた。が、大米の自供によれば実際に殺めた者は10人以上、強姦した相手にはドイツ人男性の24歳の愛人や神社の巫女(同51歳)も含まれていたという。
1916年(大正5年)5月22日、東京地裁は大米に対し死刑判決を言い渡す。裁判長が「最後に何か言うことはないか?」と問いただすと、大米は息巻いた。
「早く死刑になったほうが、さっぱりしてようがさあ」
「面倒臭えから、さっぱりやってもらいやしょうぜ。なあに、早く死刑になったほうが、さっぱりしてようがさあ」
東京監獄(現在の新宿区富久町に所在)で絞首刑が執行されたのは1ヶ月後の6月26日。当時の看守によれば、処刑寸前も供物の饅頭とお茶を平らげ、さらには要求タバコを美味しそうに吸い「永えこと吸わねえもんだから、畜生ッ、頭がクラクラしやがらア。さあ。やってもらおうか」と終始堂々とした態度だったという。
そして、看守が目隠しをしようとした際には「よせやいッ。クタばっちまえばどうせ何も見えねえんだ」と宣い、絞首台の露と消えていった。享年44だった。
(鉄人ノンフィクション編集部/Webオリジナル(外部転載))
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