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「血圧は『高い』『低い』だけで判断するな!」総合診療医が指摘する3つのポイント〈脈拍、上下の差、変動パターンに注目せよ〉

文春オンライン / 2024年11月6日 17時0分

「血圧は『高い』『低い』だけで判断するな!」総合診療医が指摘する3つのポイント〈脈拍、上下の差、変動パターンに注目せよ〉

総合診療医の伊藤大介医師(右)

健康診断の結果という“数字の羅列”を、身体を読み解くコンパスに変える――。総合診療医・伊藤大介氏が、健康診断における「血圧」の見方について解説します。

◆◆◆

血圧は「高い」「低い」だけで判断しない

 健康診断の中でも多くの人が「血圧」の数値を気にされていると思います。

 高血圧は動脈硬化や心臓疾患、脳卒中、腎臓病など重篤な病気のリスクを高めることが知られています。

 しかし血圧についての見解は、実は医師によってバラバラです。「しっかりコントロールすることが様々な病気の予防につながる」と考える医師もいれば、「上(収縮期)の血圧の数値が『年齢+90以内』に収まっていれば問題ない」と考える医師もいる。一体、何を信じればよいかわからない人も多いのではないでしょうか。

 ちなみに日本高血圧学会が発表している「高血圧治療ガイドライン」では「診察時の血圧が140/90mmHg未満、家庭での血圧は135/85mmHg未満」であれば正常の範囲内であると定めています。

 ここからは私の見解ですが、患者さんを診察するたびに思うのは、そもそも血圧は「高い」「低い」だけで判断すべきではないということです。

 なぜなら、あなたの血圧は、心臓の状態や動脈硬化の進行度、さらには自律神経、ホルモン、体内の水分バランスなど数多くの要素が複雑に絡みあって、現在の数値として表れているからです。一回の測定だけで判断するのは難しいのです。

 そこで、お薦めしたいのは、以下の「3つの視点」を取り入れて、血圧を考えることです。

  1. 「血圧」と「脈拍」を組み合わせる
  2. 「上の血圧」と「下の血圧」の差を見る
  3. 血圧の変動パターンを見る

 それぞれ詳しく説明していきましょう。

【「血圧」と「脈拍」を組み合わせる】

 脈拍とは、心臓が1分間に何回拍動しているかを示す数値です。安静時の脈拍は通常60〜80回/分程度ですが、年齢、体調によって異なりますし、個人差もあります。ただ血圧と脈拍を組み合わせることで、あなたの血液循環の状態をかなり把握することができます

 例えば、「血圧が高く」「脈拍も速い」場合。運動直後であるとか、軽度の脱水症状に陥っている時は当然このような状態になりますが、実は普段から循環器に過度な緊張やストレスなどの負荷がかかっている可能性があります。

 具体的には「仕事や人間関係で強いプレッシャーを感じている」「睡眠不足や過労が続いている」「カフェインを過剰に摂取している」「精神的な不安や緊張状態が続いている」などの状況が考えられます。これらの場合、人は「交感神経」が活性化して、興奮状態になり、血圧が高く、脈拍も速くなるのです。

 私の患者さんの中にも「血圧が高く」「脈拍も速い」ため、降圧薬を服用している方がいました。休日は血圧が安定しているのですが、平日は血圧が高い傾向にあり、脈拍もやや速めで推移していました。色々と話を聞いてみると、その患者さんはどうやら仕事のストレスを多く抱えており、普段から睡眠不足になりがちで、休日に寝だめを繰り返していたのです。その後、転職されたそうですが、仕事が替わった途端、血圧がストンと下がって、降圧薬もほとんど必要ない状態になりました。

 甲状腺ホルモンが過剰に分泌される甲状腺機能亢進症を患っているなど、もちろん病気が原因になっていることもありますが、上記の患者さんのように精神的な理由から血圧が高く、脈拍も速くなっているケースもあるのです。

 次に「血圧が高く」「脈拍が正常」の場合は、動脈硬化が進行しているケースが多い。誤解を恐れず、ごく簡単に説明すると、基本的に血圧は「全身に血液が行き届いているかどうか」で変化し、脈拍は「交感神経が活性化しているかどうか」で変化します。

 動脈硬化になると血管が硬くなり弾力性を失ってしまうので、心臓は全身に血液を送り出すためにより強い力が必要になります。それによって血圧は高くなりますが、血管が硬くなろうとも交感神経は活性化されないので、脈拍は正常のままです。

 また、塩分を摂りすぎた時なども、血中の塩分濃度を下げるために循環する血液量が増え、血圧が高くなります。これも体内の水分量が増えて、全身に血液を届けるのが大変になることが血圧上昇の理由であって、交感神経を活性化することにはなりません。そのため脈拍は正常のままです。

 反対に「血圧が低く」「脈拍が速い」場合は、循環する血液量が低下している可能性があります。例えば、出血をしたり、脱水症状になったりすると、血液量が減るので、血圧は下がります。すると今度は交感神経が活性化されて、一生懸命、血圧を上げようと頑張り出すのです。しかし、交感神経が活性化しても、十分に血圧に作用しない場合、血圧は低いままで、脈拍だけが速くなるというわけです。

 このように、血圧と脈拍をセットにして考えることで、血管や血液の状態をより具体的に把握できます。特に「血圧が低く」「脈拍が速い」場合は、放置すると失神やめまいなどの症状が現れるショック状態になる危険性もあるため、すぐに病院を受診しましょう。

本記事の全文は『 文藝春秋 電子版 』に掲載されています(伊藤大介「 健康診断は宝の地図だ 第4回 」)。

 

全文では、血圧を考える上での「残り2つの重要な視点」の提示に加え、健康診断でわかる動脈硬化・血流障害の「5つのサイン」についても、伊藤医師が解説しています。

 

■ 連載「健康診断は宝の地図だ 」

・ 第1回 健康診断は宝の地図だ  「進行レベル」と「進行速度」を意識せよ

・ 第2回 健診結果の見方は〈年代別〉で全く違う!

・ 第3回 酒好き必読! 肝臓、腎臓のダメージが分かる「検査項目の意外な組み合わせ」  

・ フル動画 総合診療医が実況解説! 健康診断の活用術

・ 第4回 「血圧」と「動脈硬化」のリスクが分かる〈検査数値〉の組み合わせ術

(伊藤 大介/文藝春秋 電子版オリジナル)

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