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「何度も愛し合った24歳女性をバラバラに…」風俗店の客→ストーカー→殺人犯に転落した50歳エリート男性の末路(2016年の事件)

文春オンライン / 2024年11月9日 18時0分

「何度も愛し合った24歳女性をバラバラに…」風俗店の客→ストーカー→殺人犯に転落した50歳エリート男性の末路(2016年の事件)

なぜ24歳女性は残忍な方法で殺されなければいけなかったのか? 写真はイメージ ©getty

〈 24歳の愛人を川に捨てるためバラバラに…「風俗店で働く女性」に恋をした“50歳のエリート会社員”の末路(2016年の事件) 〉から続く

 2016年10月に東京で起きたバラバラ殺人。50歳のエリート男性はなぜかつて愛した女性を恨み、凶行に至ったのか? 店の客からストーカーにまで転落した前編に続いて、後編では犯行当時の様子、その後の男についてお届け。なおプライバシー保護の観点から本稿の登場人物はすべて仮名である。(全2回の2回目/ 最初から読む )

◆◆◆

別れた彼女と会うために「女装」して待ち伏せ

 石井は夏美さんが働いていたデリヘルに偽名で予約を入れ、別の女の子から夏美さんの情報を聞き出そうとしたが、夏美さんはすでに店を退店しており、今はコンサルティング会社でOLをしているということが分かった。

「でも、夏美のことだ。また別の店で働いているかもしれない。それならば自分に返せる金もあるんじゃないか」

 事件前日、石井は何が何でも夏美さんに会って金を返してもらおうと、女装して夏美さんのマンション前で待ち伏せた。何も知らずに夏美さんが帰ってきたので、その後を付いて行ったところ、玄関前で気付かれた。

「ちょっと話があるんだ」
「何で来るのよ」
「終わったらすぐに帰るから」

 夏美さんとしては、廊下で立ち話していると面倒なことになりそうだったので、しぶしぶ中に入れることにした。

 すると、石井は悲惨な現状を話し始めた。

「あの後、会社をクビになってしまって、仕事を探しているんだ。でも、生活費が足りなくて困っている。1年前はオレが夏美を助けてあげたんだから、今度は夏美がオレを助ける番だよね」
「そんなこと言ったって、私も金がない」
「風俗をやってるんだろう」
「もうやってない」
「少しだけでもいい。何とか…」
「ムリ。絶対ムリ!」
「昔は『絶対に返す』『私をOLにしてくれた男の恩は一生忘れない』って言ってたよね。それがまだ1円も返してもらってないじゃん」

 夏美さんは言葉に詰まり、「とりあえず今日は遅いから、また明日話そう」と言って、石井と一緒に横になった。

 翌日未明、先に目が覚めた石井はパソコンの前に置かれていたメモを見つけた。

《月目標50万円。週末1日5万円。10日あれば可能》

 その近くにコンドームも置いてあったので、店から持ち帰ったものだと分かった。

「こいつ…、まだ風俗をやってるんだな。なのに、何で金がないって言うんだ…」

 石井はメラメラと怒りが込み上げ、目を覚ました夏美さんを問い詰めた。

「このメモはどういう意味だ?」
「何勝手に見てんのよ」
「お前、まだ風俗やってんだろ。少しぐらい金返せ!」
「やってないって言ってるでしょ。私のせいでブタ箱に入ったのに、まだ懲りてないの?」
「何ィッ…、謝れ!」
「何で私が謝んなきゃいけないの。私が通報したら、あなた捕まるわよ。謝るのはそっちでしょ」

キッチンにあった果物ナイフで彼女を…

 石井はクラクラするほど頭に血が昇り、キッチンにあった果物ナイフで夏美さんを突き刺した。夏美さんの脇腹から、大量の血が噴き出した。「痛い、痛い…」と言い続ける夏美さんを息絶えるまで放置した。

 こうなったら失踪に見せかけてなかったことにするしかないと考え、近所の量販店に遺体をバラバラにするための道具を買いに行った。そして、丸一日かけて浴室で遺体をバラバラにした。殺害の痕跡を消すための掃除の時間を合わせると、約30時間もかかった。その間、石井は不眠不休だった。

 その後、レンタカーを借りに行き、遺体を詰めるためのスーツケースを購入した。14袋に分けた遺体を詰め込み、携帯電話、財布、バッグ、衣類、パソコンなども持ち去った。

 石井はこのまま川に投げ捨てれば、いつかプカプカ浮いてきてしまうのではないかと考え、袋から遺体を取り出し、2つの川に分けて捨てることにした。

 血を洗い流すためのミネラルウォーターを準備し、歯型から身許を特定されないように歯を引き抜くためのペンチ、逃走用の靴なども買い揃えて完全犯罪を狙った。のちに捜査関係者は「相当頭のいい男だ」と舌を巻いた。

 一方、夏美さんが出勤しないことから、不審に思った上司が自宅を訪ね、警察に通報した。警察は石井と夏美さんのトラブルを知っていたので、すぐに捜査に着手。マンションの防犯カメラの映像から、石井が重要参考人として浮上した。

 事件後、石井は妻と離婚し、友人や親兄弟の家などを転々としていた。1カ月近くも逃げ回り、夏美さんの母親にはこんな手紙を送っていた。

《初めまして。私は石井陽一郎と申します。警察では私の関与を疑っているようですが、私は無関係です。彼女はホスト遊びで作った借金のカタに置屋に売り飛ばされ、客を取らされているようです。でも、ある意味、天職でしょうから、楽しくて逃げ出す気にならないのではないでしょうか。ひと稼ぎしたら、ひょっこり戻ってくるでしょう》

男にくだされた罰は…

 だが、ついに警察に居場所を突き止められ、死体遺棄容疑で逮捕された。

 遺体や凶器は見つからなかったが、夏美さんの部屋や遺体の運搬に使ったとされるレンタカーから夏美さんの血痕が検出された上、石井の供述通り、夏美さんのスマホが川の中から見つかったことなどから、殺人容疑でも再逮捕された。

「私のせいで夏美が亡くなったのは事実です。夏美と付き合ってひどいことをされたけど、私の方がもっとひどいことをしてしまった。申し訳ない。お詫びの言葉も見つかりません。お母さんになぜあんなひどい手紙を送ってしまったのかも分からない」

 裁判所は「女性に対する執着心が満たされず、女性への暴行事件で失職したことの責任を転嫁し、逆恨みの気持ちを募らせた。殺害にとどまらず、遺体を処理して、その痕跡を完全に消し去ることまで目論んだ計画性の高い犯行だ」と断罪し、石井に懲役29年を言い渡した。

(諸岡 宏樹)

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