美空ひばりから突然「あなた、恋人いるの?」と聞かれ…“最後の銀幕スター”小林旭が明かした、国民的歌姫との“知られざる結婚秘話”
文春オンライン / 2024年11月13日 11時0分
小林旭さん ©文藝春秋
〈 “最後の銀幕スター”小林旭が語る、石原裕次郎と過ごした“忘れられない一夜”「もう時効だから言ってしまうけど…」 〉から続く
1956年にデビューを果たし、2026年でデビュー70周年を迎える小林旭。86歳になっても、「歌う大スター」として輝きを放ち続けている。
そんな小林旭が自身の華麗なる俳優人生を明かした自伝『 小林旭回顧録 マイトガイは死なず 』(文藝春秋)を上梓。ここでは同書より一部を抜粋し、美空ひばりとの結婚秘話を紹介する。(全6回の3回目/ 1回目から続く )
◆◆◆
美空ひばりの求婚
1962年11月5日、イギリスでビートルズがデビューし、日本がオリンピック景気に沸いていた年の晩秋、東京・日比谷の日活ホテルで小林と美空ひばりの結婚披露宴が盛大に行われた。
小林は当時24歳。ひとつ年上のひばりは国民的歌手として人気を博し、1960年の年末に「哀愁波止場」で第2回日本レコード大賞歌唱賞を受賞。「歌謡界の女王」の呼び名をほしいままにしていた。
披露宴には片岡千恵蔵や鶴田浩二、中村錦之助ら錚々たる顔ぶれが集まり、戦後最大級の華燭の典と謳われた。
〈我が胸に人の知らざる泉あり つぶてを投げて乱したる君〉
挙式に先立ってひばりが詠んだ短歌には、芸能人ではなくひとりの女性としての率直な思いが込められていた。小林は相聞歌をこう返した。
〈石を持ち投げてみつめん水の面 音高き波立つやたたずや〉
銀幕のトップスターと国民的歌手の結婚に世間は騒然
銀幕のトップスターと国民的歌手の結婚に世間は騒然となり、2人の一挙手一投足にマスコミの目が向けられた。
「何しろあの騒がれ方は尋常じゃなかった。芸能界の結婚で新聞の号外が出たのは初めてのことらしいけど、いまどきのカップルと比べる方が野暮というものだろうね。
最初に報じたのはたしかスポーツニッポンだった。まだ交際が公になっていない頃、ひばりの番記者が撮影所に来て俺に罠をかけたんだよ。
朝早くから待ち伏せしてるから、てっきり『渡り鳥』のネタを取りに来たのかと思ったら、『旭さん、ひばりさんと結婚するんだって?』なんて出し抜けに聞く。ひばりが広島の舞台で『旭と結婚する』と発表したというんだが、そんなバカなことがあるはずもない。俺がうかつにも『そんなの嘘だよ。本人に電話してみるよ』と言ってしまったばかりに、あくる日には結婚報道が出て大騒ぎさ」
小林旭と美空ひばりの“出会い秘話”
2人の出会いは1950年頃に遡る。当時小林は12歳。ひとつ年上のひばりはすでに天才少女歌手として、映画や舞台で活躍する人気者だった。
4歳の頃から児童劇団に所属していた小林が、放送劇に出演するために訪れたNHKで目にしたのは、大勢の大人を引き連れて歩くひばりの姿だった。
「さながら大名行列のようだった。別世界を見せられたような驚きはあったものの、自分との境遇の違いを嘆くでもなく、その光景を冷静に眺めていたことを覚えている。これがスターさんというものかとね」
戦後日本を代表する不世出の歌手・美空ひばりは、昭和12年、日中戦争が始まった年に横浜の下町で生まれた。
次々とヒットを飛ばす美空ひばり
幼い頃から出征兵の壮行会で歌う姿が評判を呼び、9歳の時にNHK「のど自慢素人音楽祭」に出演。情感を込めて歌った「悲しき竹笛」が子供らしくないという理由で落選したが、卓越した才能を周囲が放っておかなかった。
1949年、「河童ブギウギ」で正式に歌手としてデビューして以降、「東京キッド」や「リンゴ追分」などが次々にヒットして人気を不動のものとした。
月刊「明星」の企画で2人が対面したのは、それから10年以上経ってからのことだった。
「互いに人気投票のナンバーワンになったということで対談することになり、何だかよく分からないけど、最後の方でひばりに『ところであなた、恋人いるの?』と聞かれたんだ。あの時『いないよ』と答えたのが身の因果。当時の俺は浅丘ルリ子とどうのこうのと言われていたから、適当に『います』とでも言っておけば、その後の展開は変わっていたかもしれないね」
〈 「大胆な衣装を無理やり引きはがそうとした」小林旭と女優・浅丘ルリ子が男女の関係に…“最後の銀幕スター”が語った恋愛事情 〉へ続く
(小林 旭/ノンフィクション出版)
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