部屋からウジ虫がわき出ただけじゃない…4歳と1歳の男の子を「1ヵ月も育児放棄した」21歳ギャルママに起きた悲劇(2007年の事件)
文春オンライン / 2024年11月18日 17時0分
写真はイメージ ©アフロ
自身の欲望を優先し、2人の子供を1カ月育児放棄、そして…。2007年に起きた痛ましい事件の顛末を、ノンフィクションライターの諸岡宏樹氏の著書『 実録 女の性犯罪事件簿 』(鉄人社)より一部抜粋してお届け。なお本書の登場人物はすべて仮名であり、情報は初出誌掲載当時のものである。(全2回の1回目/ 後編 を読む)
◆◆◆
2人の子供を1カ月「育児放棄」したギャルママ
浜崎真理(21)は家庭的に恵まれなかった。3歳のとき、両親が離婚。父親が家を出て行き、仕事が多忙な母親にはほとんど構われず、施設に預けられたことで母親とも離別。中学に入ると非行に走り、高校にも進学しなかった。
16歳で結婚して長男を出産すると、母性本能に目覚めたのか、熱心に絵本を読み聞かせたりして、育児に励むようになった。
その2年後には次男を授かり、育児日記に〈パパとママの宝物だね〉と綴ったり、成長アルバムを作ったりしていた。
それから1年後、予想だにしない不幸が襲った。次男がうどんを喉に詰まらせて窒息死したのだ。真理は「子供を家で遊ばせていたとき、うたた寝してしまい、目を覚ましたときには次男が死んでいた」と説明した。警察は司法解剖したが、「事件性はない」と判断した。
だが、これをきっかけに夫婦仲は悪くなり、真理は三男を出産したものの、その直後に捨てられるような形で離婚した。
真理は長男と三男を連れて市営住宅に転居し、生活保護を受けることになった。子供たちを市立保育園に預け、飲食店などで働いたこともあったが、子供が熱を出せばいつでも休めるような昼の仕事はあまりなく、結局は長く続かなかった。
その後、真理は仕事が長く見つけられなかったことから、子供2人は退園処分になった。保育園のルールとはいえ、これが真理の肩に重くのしかかった。
真理はそうした不満や不安をSNSに書き込むようになり、そこで知り合った男性と遊びに出かけるようになった。スナックホステスとして夜の仕事を始めると、男性と知り合う機会が増え、いつしか「母」から「女」に変わってしまった。
「この子たちが死ねば、私は自由になって、楽しい生活を送れるんだわ」
昼夜逆転した生活を送るようになると、自分の就寝中に泣き叫ぶ子供たちが煩わしく感じるようになり、食事、入浴、おむつ交換など、最低限のことしかしなくなった。2人の顔さえ見なくなり、子供たちをほったらかしにして、交際相手と遊びに行くようになった。
事件直前、真理は交際相手の男性と別れることになり、そのことでふさぎ込んでいたところ、長男が心配して「ママー、なしたの」とすり寄ってきたり、三男も真似してハイハイしながら足にすがりついて来たりしたため、「もうウザイ! これ以上、子供たちの面倒は見たくない。殺してやりたい」と考えるようになった。
また新たな交際相手ができた真理は、その相手の元に転がり込みたいと考え、子供たちを捨てる決意を固めた。
「この子たちが死ねば、私は自由になって、楽しい生活を送れるんだわ」
真理は最後の晩餐のつもりで、冷蔵庫にあった残り物でチャーハンを作り、子供たちに食べさせた。そして、ボストンバッグに服を詰め、新たな交際相手と同棲するために家を出た。
すべてから解放された真理は、ほとんどの時間を寝て過ごし、〈泣きたいときに泣けと言ってくれる人がいて、とっても幸せ〉などとSNSのブログに綴っていた。周囲には「友人夫婦に部屋を貸し、子供たちを預かってもらっている」とウソをついていた。
一方、母親がいなくなった市営住宅では、地獄絵図が繰り広げられていた。4歳の長男は冷蔵庫内のケチャップやマヨネーズ、生米や生ゴミもあさって生き延びたが、1歳の三男は1週間ほどで餓死した。
真理はその間、食べ物を与えに行くかどうか迷ったこともあったが、粉ミルクを持って自宅まで行ったものの、中の様子を想像してドアを開けられず、その前にミルクの缶を置いて立ち去った。この頃、真理はこんな電話を市役所にかけたこともある。
「夜の仕事なので、子供たちの面倒が見れないんです。子供たちを預かってもらえませんか?」
このときの切迫した事情を市役所の担当者が察知して、家庭訪問でもしていれば、悲惨なネグレクトは食い止められたかもしれない。だが、市役所は杜撰な聞き取り調査しかせず、真理が「彼氏と一緒に暮らしている」と言ったので、「同居している内縁関係の男性がいるならば、児童扶養手当の該当基準から外れる」と説明し、翌月から児童扶養手当を打ち切った。
これで真理は市役所への不信感を募らせ、これ以後、連絡を取ることはなくなった。子供たちだけが残された市営住宅の部屋は荒れ放題で、近所からは悪臭の苦情が市役所に寄せられるようになった。
悪臭の源となっている部屋は、近所の人が何度チャイムを鳴らしても応答がない。ベランダに干されていた布団は雨ざらしになり、隣の部屋にはウジ虫が這ってくるほどの深刻な状態になった。
住民から苦情を受けた市役所の担当者が真理の携帯電話に連絡し、「部屋を使用していないようですが、入居を続ける意思はあるのですか?」と聞くと、真理は「ありません。退去します」と答えた。
部屋に入るとガリガリの長男が…
その期限の日、真理は約1カ月ぶりに自宅に戻った。思い切ってドアを開けたところ、ガリガリにやせ細った長男が飛び付いてきた。
「ママ、遅いよ…」
〈 「何で生きてるの?」長男はガリガリ、次男は腐敗して…育児よりも快楽を優先した「21歳ギャルママの末路」(2007年の事件) 〉へ続く
(諸岡 宏樹/Webオリジナル(外部転載))
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