「幹事長は森山がいい」石破茂に囁いたのは山崎拓元副総裁だった〈永田町の常識に囚われた森山の罪〉
文春オンライン / 2024年11月13日 17時0分
左から、森山裕幹事長、石破茂首相、山崎拓元副総理 ©時事通信社/共同通信社
急いだ解散総選挙、非公認候補への資金、すべてが裏目に……。その陰には、永田町の常識に囚われた森山裕幹事長の存在があった。
森山の陰に山拓あり
組閣や党役員人事もサプライズなし。衆院選対策で進次郎を幹事長に推す声もあったが、石破は「最初から森山さんに決めている」と取り合わず、選対委員長に回した。歴代最長の国対委員長の在任記録を誇り、公明党とのパイプも太い森山の幹事長就任は、石破の足らざる部分を補うには適任の人事ではあった。
その背景に、実は山拓こと山崎拓元副総裁の存在もあった。
今年4月、3つの衆院補欠選挙で自民が全敗し、岸田政権の寿命が短いとみた山崎は5月7日、音頭を取って“石破裏選対”の会合を開いた。10人に声をかけたが、出席者は村上誠一郎や中谷元ら5人。岸田が幹事長就任を打診してきたらどうする、と山崎が問うと、石破の返答は「どうでしょうか」。すかさず山崎は「絶対受けたらダメだ。総裁選に出ろ」と発破をかけた。
その後も小泉政権の同窓会に石破を呼び、純一郎から「総理になるには才能と努力と運が必要だ。才能はあるのだから、義理と人情の人間関係の努力が大事だ」と助言させた。7月には福岡市での自身の「政経フォーラム」に石破を招き、首相にふさわしいと持ち上げた。
総裁選告示前にも、山崎の声かけで石破選対の中心メンバーを集めた。出席した村上、中谷、岩屋毅、赤澤亮正らはいずれも入閣した。山崎は常々、「幹事長は森山がいい」と石破に囁いていた。森山は旧山崎派の出身で、最近まで同派を源流とする森山派を率いていたからだ。
菅の副総裁起用も、総裁選投開票前日の9月26日に事実上決まっていた。決選投票への進出に自信を深めていた石破は衆院議員会館に菅を訪ねた。「もし進次郎君と私のどちらかが決選に進んだら協力をお願いします」と頭を下げた。進次郎を全面支援する菅を慮って「2人が残ればどちらが勝っても恨みっこなしです」との言葉も忘れなかった。
最大の失策は高市を取り込めなかったことだ。石破は「私の政策に真っ向反対と言う。それで閣内不一致や執行部不一致が起こるのはつらい」と警戒し、高市を表舞台に出る要職に置かなかった。
総裁選の翌日、東京・赤坂の衆院議員宿舎で高市と向かい合った石破は総務会長就任を打診した。党四役の総務会長は幹事長に次ぐ要職だが、幹事長のように党運営を仕切るわけでもなく、政調会長のように政策立案に直接関与もしない。周囲から「幹事長以外受けるな」と釘を刺されていた高市は「私は一兵卒としてお支えしますから、私を支援してくれた人を起用してください。城内実さんなんかは経済安保相として適任です」と丁重に断った。石破は会談後、「自分の意見というより、誰かに言わされているような感じだったなぁ」と振り返った。
一時は、高市が希望していた経済産業相と副総理を兼務する案も取り沙汰された。高市は「誰もがやりたがるポジションやね」と満更でもない様子もみせたものの、石破が改めて高市に打診することはなかった。
泡と消えた岩屋官房長官案
官房長官人事でも躓いた。総裁選に勝利したその日に、推薦人代表の岩屋を官房長官、選対で中核を担った橘慶一郎、青木一彦を官房副長官にすることを検討した。副長官2人はすんなり決まったが、岩屋官房長官は一晩で消え去った。森山らが待ったをかけたからだ。
岩屋は防衛相経験者だが、党要職の経験が少なく、政策全般に精通しているわけでもない。さらに問題となったのが、麻生派脱退の過去だ。裏金事件に端を発する派閥存続問題が浮上した際、岩屋は派閥解消を唱えて麻生派を離脱。麻生太郎から勘気をこうむっていた。麻生の最高顧問起用を検討する中、党とのパイプ役でもある官房長官に岩屋を充てれば、鬼門となりかねない。かくして、岩屋は外相に横滑りした。(文中敬称略)
◇
「文藝春秋」の名物政治コラム「 赤坂太郎 」の全文「 永田町の常識に囚われた森山の罪 」は、「 文藝春秋 電子版 」で公開中です。
(赤坂 太郎/文藝春秋 2024年12月号)
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