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車界隈で「情弱」とされる残クレ利用者は本当に“カモ”なのか? ディーラースタッフが明かす…残クレでアルファードを購入する人々の“実情”

文春オンライン / 2024年11月29日 6時0分

車界隈で「情弱」とされる残クレ利用者は本当に“カモ”なのか? ディーラースタッフが明かす…残クレでアルファードを購入する人々の“実情”

写真はイメージ ©️maroke/イメージマート

 このところSNSやネット掲示板を中心に、「残クレアルファード」という言葉を見かけることが増えてきた。

 どうやら「残価設定型クレジット」という方法でアルファードを買うことが、一部の目には「見栄っ張りな行為」として映るらしいのだ。

 一体なぜ、残クレでアルファードを買うと「無理して乗っている」などと言われてしまうのか。残クレの仕組みや購入者の事情についてディーラー関係者に話を聞くと、昨今の「車の買い方」をめぐる意外な実情が見えてきた。

残クレは「返却前提」で安く乗れるシステム

 そもそも残クレとは、あらかじめ「車両の返却」を前提することで、本来の価格から「将来の売値(=残価)」を引いた額を支払うローンのことだ。

 たとえば600万円のアルファードを購入する際、3年後の残価が400万円と設定されていれば、残りの200万円分を3年間で支払っていくことになる。つまり、「この車は本来600万円だけど、3年経っても400万円で売れるから、それまで200万円で乗せてあげますよ」というわけである。

 仕組みとしてはスマホの2年返却プログラムと同様であり、「実際に使用する期間の分だけ対価を支払う」ことを要点とする。

 これにより、従来型ローンの「目先の費用を抑えられる」というメリットはそのままに、「短期間で新車に乗り替えやすくなる」という利点も生じることになる。

 おそらくネット上の「見栄っ張り」といった声の背景には、このように「車両を買い上げることなく安く済ませているのに、いつも新車に乗っている」という残クレユーザーへのモヤモヤ感があるのかもしれない。

「高い車ほど割安」な残クレのカラクリ

 しかしなぜ、アルファード購入者ばかりが残クレであることを揶揄されているのか。筆者が懇意にするディーラーの営業スタッフからは、次のような話があった。

「基本的には、人気のある高額車ほど残クレのメリットが大きくなりやすく、選ばれる割合も高くなる傾向にあるんです。『将来どれくらい価値が残るか(=残価率)』は車種によって設定が異なり、アルファードのように中古車需要も大きな車種では、やはり残価率も高くなります。

 要するに、将来高く売れる車ほど、割安で乗れるシステムなんですよね。残価率の設定によっては、クラスが下の車と支払額がそう変わらなくなるケースもあります。

 これは旧型の頃の話ですが、残クレでノアやヴォクシーを検討されている方に、アルファードの見積もりをお見せすると、『全然変わらないじゃん』とアルファードを選ぶ方もいましたね」(トヨタ系ディーラースタッフ)

 たとえば先代モデルの価格帯をふまえ、「500万円のアルファード」を「3年後残価率67%」の残クレで買ったとすると、ローン返済の対象となるのは約165万円。対して、「350万円のノア」を「同55%」で契約した場合には約157万円になる。

 車両価格には150万円の開きがあるのに、残クレであれば8万円にまで差が縮まる。実際には利息分でもう少し差は広がるものの、「ノアとアルファードの差」を考えれば破格の安さであることに変わりはない。

 このような「高く売れる車ほど割安になる」というカラクリが、どうやら「残クレアルファード」に対するモヤモヤ感の根っこにありそうだ。

「残クレ利用者=情弱」というイメージ

 ここまでの内容からすると、一見「スマートな買い方」にも思える残クレだが、ネックのひとつに金利の高さがある。銀行のカーローンに比べると、利率がかなり高めに設定されているのだ。

「注意する必要があるのは、残クレの金利が『残価分』にもかけられる点です。たとえば600万円の車で残価が400万円に設定されていれば、返済するのは200万円ですが、金利は600万円の方にまるまるかかってきます。なのでほとんどの場合、利息分は銀行ローンよりも高くなりますね」(同前)

 このような点から、残クレ利用者を「目先の安さに釣られて、結局多くの利息を払っている情報弱者」と見なす声はネット上に散見される。いわばクレジットカードの「リボ地獄」と似た構図を、この残クレにも見ているのかもしれない。

「オラオラ顔」だけど取り扱いは丁寧に

 さらに「突っ込みどころ」とされているのが、「自分の車なのに気を遣って乗らなければいけない」という点だ。

「ネックになりやすいのが、走行距離の制限です。大抵、『3年間で3万6000キロ』というように、月あたり1000キロ前後を基準に上限が設定されていて、超過した分に応じて追加の支払いが発生します。

 ただ、たとえば1万キロ程度の超過なら5万円くらいで済みますから、実際にはそこまで気にすることもないんでしょうけどね。それでも、なんとなく気にされる方は多い印象です。

 その他、外装のダメージや、車内の著しい汚れや臭いなども査定ダウンにつながるので、追加の支払いが発生する可能性がありますね」(同前)

 つまり、残クレは「将来の価値」を前借りしているわけなので、その価値を損なうような使い方はできないのだ。

 このように「細かいことを気にしながら乗らなければならない」という点が、公道におけるアルファードの堂々とした存在感とギャップを感じさせている面もあるのだろう。

アルファードオーナー、残クレの利用率は

 ところで実際のところ、アルファード購入者のうち残クレを選んでいる割合はどのくらいなのだろう。

「半分とまではいきませんが、3割~4割くらいの方は残クレを選んでいる印象ですね。通常のローンも同じくらいの割合で、あとは現金一括が2割くらいでしょうか。先代と比べて、現金一括の割合がやや下がっている感じはします。

 アルファードの購入価格帯が先代と比べてかなり上がっているので、一括で支払う方も減っているのだと思われます」(同前)

 また、そもそもアルファードは現在受注もままならない状況にあり、転売防止のためにローンまたは残クレでの購入を必須条件としているディーラーもあるという(*1)。つまり「本当は現金一括で買いたいが、仕方なく残クレに」といったケースも少なからずあるわけだ。

*1 こうした販売方法は、かねてより独占禁止法違反に該当する可能性が指摘されている。11月15日、自動車販売取引の適正化を目的とする「一般社団法人自動車公正取引協議会」は、ディーラー側が「ローンによる購入」など購入条件を指定する販売方法を「不適切な販売方法」と位置づけ、今後の適正化に努めるよう販売事業者に注意喚起を行った

「車を所有してこそ一人前」はもう古い?

 上に挙げたような「アルファードに特有の事情」を抜きにしても、残クレの利用者は増えているようだ。

「車種を問わず、年々残クレを使う人は増えている印象がありますね。とくに20代から30代の方だと、抵抗感なく選ばれているケースが多いように思います。

 スマホの購入でも似た支払い方法が普及していますし、あとはサブスクのサービスに日頃から触れている影響もあるのかもしれません。

 それ以上の年代の方でも、たとえば『投資の資金を手元に残したい』といった理由から、初期費用の少ない残クレを選ばれるケースはよくあります」(同前)

 収入はなかなか増えないのに、年々あらゆるものが値上がりし、おいそれとはモノを所有できなくなっている。そうしたなか、残存価値を見据えつつ、「使う分だけ払う」という残クレの考え方は、時代のニーズを反映したシステムなのだろう。

残クレの普及は「価値観の変化」なのか

 しかし裏を返せば、このような消費形態の変化を、モノが買えない現状に対する「苦肉の策」と見ることもできそうだ。

 総務省の家計調査報告によると、2023年における1世帯あたり(2人以上)の平均貯蓄額は、40歳未満で782万円。一見余裕があるようにも思えるが、同年齢層の平均負債額は1757万円と、差し引き975万円のマイナスが生じている。2人以上の世帯は、平均して1000万円近い借金を負っているのだ。

「住宅ローンを考えれば妥当だろう」と思われるかもしれないが、10年前の2013年における「貯蓄-負債」の額は343万円のマイナス。さらに2003年においては、そもそも貯蓄額が負債額を上回っている。この20年間で、40歳未満の貯蓄に対する負債が年々膨れ上がっているのである。

 こうして見ると、「残クレ購入者の割合が増えている」という事実からは、なにやら不吉な兆候を感じざるをえない。賃金は横ばいのまま、車はどんどん高くなり……同クラスの車に乗り替えようと思えば、そのたび返済額がジワジワと増えていく。

 強度を増していくローン返済のボディブローに、いつかタオルを投げなければならない日が来るのではないか。そう思うと、種々のローンを抱える38歳の筆者としては、とても「残クレアルファード」を揶揄するような気持ちにはなれそうもない。

〈 「自分が少し偉くなったような感覚がありました」「公道でナメられない」…“アルファード”/“ヴェルファイア”を愛好するドライバーに車選びの本音について聞いてみた 〉へ続く

(鹿間 羊市)

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