「自分が少し偉くなったような感覚がありました」「公道でナメられない」…“アルファード”/“ヴェルファイア”を愛好するドライバーに車選びの本音について聞いてみた
文春オンライン / 2024年11月29日 6時0分
写真はイメージ ©️AFLO
〈 車界隈で「情弱」とされる残クレ利用者は本当に“カモ”なのか? ディーラースタッフが明かす…残クレでアルファードを購入する人々の“実情” 〉から続く
どういうわけか、世の中には人々から「やっかみ」を買いやすい車種がある。なかでも公道でギラつく存在感を放つトヨタのアルファード/ヴェルファイアは、その最たる例と言えそうだ。
「オラオラ顔」と呼ばれる威圧的なデザインもあってか、ネット上ではしきりに「アルヴェルオーナーのガラの悪さ」が取り沙汰されている。しかし実際のところ、こうしたイメージはどれほど実情を反映しているのだろう。
現在アルファード/ヴェルファイアを所有する人たちや、ディーラー関係者に話を聞くと、ネット上のイメージとはかけ離れた実相とともに、ステレオタイプと合致しそうな一面も浮かび上がってきた。
「自分が偉くなったように錯覚する」運転席の魔力
おそらくアルヴェルは、「実際に乗ったことがあるかどうか」によって大きく評価が分かれる車なのだろう。傍から見れば「デカくてイカつい車」だが、中に入れば快適きわまる「おもてなし空間」が広がっている。
こうした現実的な利点が、購入を決める最大のポイントになるケースは多いと思われる。以下に紹介する30代会社員の河合さん(仮名)も、こうした例に該当しそうである。
河合さんは製造系の上場企業に勤めており、埼玉県南部で会社員の妻とともに6歳と1歳の子を育てている。アルファードは保育園の送迎用と、休日のお出かけ用として使っているとのことだ。
「買う前はあんまり、大きいミニバンにいいイメージがなかったんですよ。むしろマナーの悪いドライバーが多い印象でした。
ただ子どもができると、やっぱりスライドドアがないと不便に感じることも増えて、上の子が3歳になる頃にミニバンを探して……妻も息子もアルファードの広さに興奮しまくっていたので、まぁもう買うしかないなって。
お金に余裕があるわけじゃないですけど、リセールを考えると他のミニバンとあまり負担は変わらなさそうだし、それならこっちの方がお得じゃん、と思ったのもありますね。
実際に乗っていて、満足度はかなり高いです。内装もいいし目線も高いし、最初はなんだか自分が少し偉くなったような感覚がありました」
高級車に乗ったときの「自分が偉くなった感覚」は、特段アルヴェルに限られたものではないだろう。ただアルヴェルの場合、目線の高さがそれに拍車をかけている面はあるのかもしれない。そうした「VIPの雰囲気」も、アルヴェルの魅力のひとつである。
なお話は逸れるが、目線の高さは気分だけの問題ではなく、現実に「車間距離」にも影響を及ぼす。「視点の高い車は車間距離を長めに認識しやすく、結果として実際の車間距離が短くなりやすい」という傾向は、大型免許の教本にも注意事項として記載されることがある。
意図せず車間が短くなり、前走車に「オラオラ顔」でプレッシャーをかけてしまう……仮に「ごく普通のドライバー」が頻繁にこうした状況に陥っているとしたら、それがアルヴェルの「ガラの悪いイメージ」の遠因となっている可能性もありそうだ。
「公道でナメられない車」という観点
最後に紹介するのは、葬儀関係の会社に勤める50代の江藤さん(仮名)。現在は飲食系で働く妻と2人で埼玉県に暮らしており、3人の子どもはすでに成人しているというが、アルヴェルのサイズ感が好きで今も乗り継いでいると話す。
「初代エスティマからずっとミニバンですね。当時はまだ子どもが小さかったけど、一番下の子が小学校入るあたりで20のアルファードが出て、エスティマも古くなったし買おうかって。それから30前期のヴェル、30後期のアルと、3台乗り継いでいます。
もう子どもは大きくなっていますが、一回こういう広いのに乗っちゃうと、なかなか戻れないですね。普段仕事でハイエースに乗っているのもありますし、やっぱり妻の軽に乗ると、割り込みとか車間距離とか、まわりの車の動きが全然違って怖いですし。公道でナメられないじゃないですか。
デザインはまぁ気に入っていますよ。ただ前はいいけど、後ろはあんまりかな。新しい40は後ろもいいし、買えたら買いたいんですけど。これだけ買っているのにディーラーからは抽選って言われて、なかなか買えないんですよね」
派手なデザインを「公道での存在感」という点から肯定的に評価している点では、ネット上に見られるステレオタイプと重なる部分もあるだろうか。ただ話を聞くなかで、「アルファードで威張りたい」といったニュアンスは感じられなかった。
「アルヴェル購入層=マイルドヤンキー」は本当か
このように、実際のアルヴェルオーナーに話を聞いてみると、「周りに自慢したい」といったステータス面よりは、快適性や利便性などの「現実的なメリット」から購入を決める傾向が読み取れた。
とはいえ以上の内容は、ごく小規模な聞き回りの結果であり、全体的な傾向とは異なる部分も大いにあるだろう。それでは、より多くの購入者に触れているディーラーの営業スタッフはどのように感じているのだろうか。
「個人の購入者層としては、30代から40代のファミリー層が一番多いですね。たとえばノアを選ぶ方に比べると、ゴージャス感や派手さを好む方は多くなるんでしょうけど、そこまで顕著な違いは感じません。
たくさんの方に選ばれている車ですし、とくに決まった傾向はないと思いますよ。会社員のいわゆるパワーカップルもいれば、経営層もいますし、個人事業主の方もいて、ファッションや持ち物も人によりけりです。
なので収入に関しても、『色々』としか言えませんが……ただ、もし購入者の平均をとったとしたら、同年代の給与水準よりはかなり高くなるでしょうね」(トヨタ系ディーラースタッフ)
実際のところ、年間で合計10万台前後にも及ぶアルヴェルの販売台数を考えれば、オーナーたちの間に画一的な傾向を読み取ることなど不可能だろう。
こうした状況をふまえると、「アルファードに乗る人はこんな人」というカテゴライズは、「カローラに乗る人はこんな人」というのと同様に、ほとんど意味がないように思える。
高級車のドライバーは横暴になりやすい?
もちろん、無数にいるアルヴェルオーナーのなかには「イカついデザイン」が気に入り、見栄のため購入したという人もいるにちがいない。
アルヴェルに「ステータスの象徴」としての側面があることは否定できないし、そうした面を重視する人たちに好まれているのも確かだろう。アルヴェルの純正オプションとして設定されるエアロパーツの派手さを見れば、そのような「威圧感」を求める層がひとつの主要ターゲットとされていることも窺える。
また運転マナーについて言えば、そのように「権威性を求めて車を買う人」の運転が横暴になりやすい、という偏見めいたイメージも、まったく根拠がないわけではなさそうである。たとえば2019年に警察庁交通局の矢武陽子氏が発表した「日本におけるあおり運転の事例調査」によれば、調査対象となった加害車両のうち40%が500万円以上の車種だったという。
「ステータス性の高い車に乗っている」という自意識が、「格下の車は道を譲るべき」といった運転の態度につながるのだとしたら、ステータス性を求めてアルヴェルを購入したオーナーの運転が横暴になる、という傾向があったとしても不思議ではなさそうだ。
実際に街中を走っていても、ネット上で言われるような「マナーの悪いアルヴェル乗り」を目にすることがある。筆者もつい先日、愛車のアルトで100円寿司に行った帰り、駐車場で思いきりこちら側にはみ出して止めているヴェルファイアに出くわし、小さなイラ立ちを覚えたばかりだ。
一部のオーナーによって強化される「ガラの悪いイメージ」
しかし冷静に考えれば、「斜めに止まっている車」などさして珍しくはないはずだ。これがたとえばカローラであれば、「駐車が苦手なんだな」と特段印象にも残らなかったかもしれない。
対してアルヴェルの場合には、流通台数が多いことに加え、ボディの大きさやデザインの威圧感もあり、「マナーの悪い1台」がことさら目につきやすい。ステレオタイプに合致するドライバーを見ると、さらにネガティブなイメージも強化されるものである。
実際のところ、そうしたイメージを形成しているのは、無数にいるオーナーのうちのごく一部にすぎないのだろう。そもそも世のアルヴェル乗りがことごとくオラついた運転をしていたら、公道は今ごろデスロードさながらの様相を呈しているはずである。
むしろアルヴェルがこれだけ普及し、快適さや使い勝手、リセールバリューを含めた経済性など「現実的なメリット」が広く知れ渡るようになった現状においては、もはや「生活上の合理的な視点からアルヴェルを選ぶ普通のオーナー」が多数派だと考えるのが自然ではないだろうか。
ただいずれにせよ、街にアルヴェルが増えすぎているきらいはあるのだろう。現状、プレミアム系のミニバン市場は実質的に「アルヴェル二強」となっており、「広くて豪華な車に乗りたい」となれば猫も杓子もアルファード、といったありさまである。
政治家に芸能人にインフルエンサー、職場の上司に地元の同級生、ママ友に親戚、あの日あおってきたドライバー……どこへ行ってもアルヴェルばかりの現状では、「誰かに対する不満やコンプレックス」がアルヴェルに転嫁されてしまうのも、無理からぬことなのかもしれない。
(鹿間 羊市)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
車界隈で「情弱」とされる残クレ利用者は本当に“カモ”なのか? ディーラースタッフが明かす…残クレでアルファードを購入する人々の“実情”
文春オンライン / 2024年11月29日 6時0分
-
トヨタが新型「アルファード/ヴェルファイア」発売!? 4人乗り追加&画期的システム採用!? さらに「安いグレードも」 改良版は12月末登場か
くるまのニュース / 2024年11月28日 12時30分
-
日産「新型エルグランド」いつ登場!? 唯一無二の「ターボエンジン」も搭載か? 王道の「キング・オブ・ミニバン」“全面刷新”に期待高まる!
くるまのニュース / 2024年11月25日 16時10分
-
トヨタの「高級スポーティミニバン」がスゴい! 「走りが楽しい」反響多数!? 王道「アルファード」と異なる「個性」に注目! ヴェルは何が違う?
くるまのニュース / 2024年11月23日 6時10分
-
まさかお前が!? 威圧感スゴすぎる「“覆面”ヴェルファイア」が存在!「気づかない!」と反響も! 正体不明の高級ミニバンの目撃情報アリ!
くるまのニュース / 2024年11月1日 12時10分
ランキング
-
112月から移行される「マイナ保険証」5つのメリットと4つの注意点をFPが解説
MONEYPLUS / 2024年11月29日 7時30分
-
2「一人暮らしの老後」を充実させるコツ3つ
オールアバウト / 2024年11月28日 21時40分
-
3和田秀樹「ウォーキングよりもずっと効果的」…シュッとした中高年は知っている「ヨボヨボ老後」を防ぐ方法
プレジデントオンライン / 2024年11月29日 9時15分
-
4「まさに自業自得」“あおり運転”してきたバイクが“無残な姿”に。加害者に訪れた悲劇
日刊SPA! / 2024年11月29日 8時53分
-
5急な「めまい」発作の"引き金"となる6つの要因 とくに急激な「気圧の変化」には注意が必要
東洋経済オンライン / 2024年11月28日 20時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください